見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

建物公開+朝香宮のグランドツアー(東京都庭園美術館)

2011-01-21 23:55:43 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京都庭園美術館 建物公開『朝香宮のグランドツアー』(2010年12月11日~2011年1月16日)

 旧朝香宮邸と呼ばれる東京都庭園美術館に、この前、来たのはいつだっただろう。記憶をたどってみると、もう20年近くも前のことではないかと思う。今回は、この邸宅の主人だった朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)に光をあてる展覧会で、建物公開も同時に行われる。1階の主要部分は写真撮影もOKというのがうれしい。で、最後の週末になってしまったが、行ってきた。

 まず、1階のアール・デコ様式を堪能したあと、展示会場となる2階へ。朝香宮鳩彦王(1887-1981)は、陸軍大学校を卒業後、1922年(大正11年)フランスに留学する。会場には、当時のゴツい革製トランクがいくつも積まれていた(海外ブランド品じゃないのね?)。すでに明治天皇皇女允子(のぶこ)内親王と結婚し、2人の息子、2人の娘のいた鳩彦王は、船旅の途中から、まめに絵葉書(写真やイラスト)を送っている。ただし、裏書は「上海カラ、ゴキゲンヨウ」みたいな1行だけだったりする。

 留学中、義兄の北白川宮成久王の運転する自動車が交通事故を起こし、成久王は死去、同乗していた鳩彦王は重傷を負った。事故車の一部(ラジエーターグリル)が残っていることに驚く(→”当館蔵”だそうだ)。しかし、何が幸いするか分からないもので、鳩彦王の看病のため渡仏した允子妃とともに、夫妻は、1925年のパリ万国博覧会を観覧する機会にめぐまれ、このことが、のちにアール・デコ様式の朝香宮邸を生むきっかけとなったと言われている。

 パリ万博(1925年)の絵葉書もたくさん残っていて面白かった。アール・デコ博の異名もある博覧会だが、実は「古代エジプトなど古典古代の芸術、欧州各国の植民地となったアジア・アフリカ地域の装飾、アステカの芸術、日本の装飾文化など」多様な様式が無秩序(!?)にひしめく博覧会だったことが窺えた。

 帰国後、アール・デコ様式の新宮邸を建設するのに尽力したの允子妃だという。写真の肖像からは、健康的で快活な知性が感じられる。それなのに、竣工のわずか1年後、42歳で急逝というのは若すぎる。一方の鳩彦王は、激動の昭和を生き抜いて、1981年、93歳で死去。この世とあの世に別れ別れの長い晩年のことを知って、二人一緒の写真を見ると、あらためて感慨深い。

 邸内の写真はフォトチャンネルにあげてみました。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする