見もの・読みもの日記

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名作揃い踏み/琳派芸術・第1部 煌めく金の世界(出光美術館)

2011-01-12 23:19:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
出光美術館 酒井抱一生誕250年『琳派芸術-光悦・宗達から江戸琳派-』第1部「煌めく金の世界」(2011年1月8日~2月6日)

 正直なところ、琳派には食傷気味なのである。まあでも、ちょっと寄ってみるかな、くらいの気持ちで訪ねたら、細見美術館、京都国立博物館など、他館(特に関西圏)からの出陳が多く、けっこうめずらしい作品を見ることができた。

 冒頭に、光悦・宗達による『蓮下絵百人一首和歌巻断簡』が3点並んでいる。1点目が水に浮かぶ蓮の葉を上から見たところ、2点目は開き始めの蓮の花、3点目ではもう花びらが散り始めている。解説によれば、もとは全長25メートルの一巻仕立てで、蕾→花→散りゆく蓮の盛衰を描いたものだそうだ。ネットで調べると、断簡の所蔵者としては、東博、MIHOミュージアム、昭和美術館などの名前がヒットする。「関東大震災で大半が焼失してしまった作品の焼け残り?だそうです」という記述も見つけた。ええ~本当なら、とても残念。全長の何分の一くらい残っているのだろう。

 展示品は1点目のみ出光美術館所蔵で、あとは「個人蔵」とあった。出光の所蔵品は、2009年の『文字の力・書のチカラ』展などで、私は何度か目にしているはずだが、印象が薄い。やはりこの作品は、葉→蕾→花という変化があってこそ、魅力を放つ。そう思うと、今回、個人蔵2点と組み合わせて見ることができて、本当によかった。なお、書かれていた和歌は、1点目が「浅茅生の(参議等)」「忍ぶれど(兼盛)」「恋すてふ(忠見)」の三首。2点目は二条院讃岐、3点目は家隆だったと思う。光悦は、定番の順序を崩さずに書いているようだ。

 隣りも光悦・宗達で『花卉摺絵古今集和歌巻』。巻初から巻末まで全公開。視点を移動するにつれて、料紙の内側から金砂子が浮き上がってくるように見えた。

 光悦・宗達コンビはさらに続く。反対側の壁面は扇面図づくし。『月梅下絵和歌書扇面』(金銀の片身替わりふうに白梅を配す。金色の月は少し欠けたところだろうか)『萩薄下絵和歌書扇面』(もとは全面が銀? 白い薄、朱色の扇子の骨)は、あまり記憶にないなと思ったら、京都・細見美術館からの出品だった。以下、宗達(工房)作と思われる同形の扇面図が4点続く。さらに、金地に扇面を描いた(貼り付けではない)屏風、振り返ると、金銀泥(銀色が目立つ)の扇面散貼付図屏風。扇面図は宗達工房の「主力商品だった」という解説に納得する。なお、さりげなく周辺に置かれた京焼の茶碗や皿も扇面文を選んだ心遣いがにくい。

 次室は金屏風特集。宗達の『月に秋草図屏風』は、花数が少なく(ほとんど薄と白萩のみ)茫洋と広がる金色の空白が、寂しさと華やかさを同時に感じさせる。京博から出品の『草花図襖』は、数ある同趣の屏風絵・襖絵で、私のいちばん好きな作品。それに次ぐのが根津美術館の、ちょっと小ぶりの『四季草花図屏風』だが、この2点を並べて眺めるのは、初めてじゃないかしら。

 さらに次の部屋に写って、うわ!と歓喜の声をあげそうになったのは、水墨画のコーナーに、出光所蔵の宗達筆『龍虎図』(ドラえもんのように丸顔のトラ)と、京博の光琳筆『竹虎図』が出ていたため。寅年は終わったのに、お前たちに会うことができてうれしいよ~。

 光琳筆『紅白梅図屏風』は、左隻にテーマの紅白梅が描かれているのだが、右隻は、何もない金色の空間を空けて、右隅にちょろりと白梅の枝がのぞいている。左隻だけでも絵になるが、左右が並ぶとまた味わいが異なる。

 光琳は、京博の『太公望図屏風』に加え、個人蔵『白楽天屏風』も、という豪華ラインナップ。よくぞ揃えてくれました。『白楽天屏風』の解説を読んだら、これは謡曲「白楽天」を踏まえ、唐の太子の勅命で、日本人の知力を試しに乗り込んできた白楽天を描いているのだそうだ。なんと、そんな日中対決の緊迫した場面だったのか。土石流のように激しく波立つ茶色い海面は、実は筑紫近海(そんなところまでw)。龍頭の魁偉な舟に威儀を正して座す白楽天に対して、波間にただよう粗末な小舟、つんつるてんの単衣の老漁夫が、実は住吉明神(和歌の神様で、航海の神様)で、問答の末、大詩人・白楽天を唐土へ吹き返してしまう。そう聞いて、この絵を見ると、ずいぶん印象が違うと思った。
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