○神奈川県立金沢文庫 特別展 興正菩薩叡尊鎌倉下向750周年記念I『愛染明王 愛と怒りのほとけ』(2011年10月15日~12月4日)
最後の週末に駆け込みで参観。愛染明王の仏像・仏画の名品を紹介する展覧会。仏画が10幅程度あり、彫像は数体だった。チラシになっている個人蔵・鎌倉時代の愛染明王像が、屈指の優品だと思うのだが、残念ながら、これは前期のみで見ることが叶わず、会場に掲げられたポスターを未練がましく眺めてしまった。背景のチョコレート色と、茶ばんだ赤の調和的な色彩。明王の肉体を飾り、豊かにこぼれおちる宝珠を受けて、大きく花弁を開いた蓮華座。黒釉掻落みたいな精緻な龍文の壺。すごいなあ、これ。パワーと叡知を備えた華麗なヒーローを描きたいと思った絵師の気持ちが、時代を超えて伝わる。
実見できた作品の中では、奈良博の『両頭愛染曼荼羅』(不動明王と愛染明王の一身両頭図)が印象的だった。台座の下にいる、大きな三鈷杵を口いっぱいに咥えた獅子がかわいい。なんだ、これは!的な驚きを感じたのは、『愛染田夫本尊』と題された、江戸時代の2幅の絵画(奈良・西大寺蔵)。どちらも蓮華座の上に吽字形に身体をひねった蛇が描かれている(片方は、さらに曲芸のように三鈷杵の上に乗っている)。あやしすぎる。
小さな『愛染明王懸仏』(鎌倉時代、個人蔵)は、新宮市・熊野速玉大社の摂社、神倉神社で出土したもの。稚拙な表現だが、眉根を寄せ、大きく開いた口は怒りの獅子吼、ビリケンさんみたいな三角頭は怒髪天を衝く表現なのだろう。そのギャップがほのぼのして愛らしい。称名寺伝来の『愛染明王坐像』(鎌倉時代)は30数個のパーツでできているそうで、その工芸的な精巧さに感心する。
金沢文庫の文書資料(称名寺聖教)から、愛染明王に関する修法のあれこれを紹介しているのも面白かった。降伏法では、怨敵が自筆で姓名を書いたものを愛染明王の頭頂の獅子の口に置くのが「下品」の法、本尊の口に置くのが「中品」の法、行者(修法者?)の口に置くのが最上の秘法だとか。覚えておこう…役には立たないだろうけど。
最後の週末に駆け込みで参観。愛染明王の仏像・仏画の名品を紹介する展覧会。仏画が10幅程度あり、彫像は数体だった。チラシになっている個人蔵・鎌倉時代の愛染明王像が、屈指の優品だと思うのだが、残念ながら、これは前期のみで見ることが叶わず、会場に掲げられたポスターを未練がましく眺めてしまった。背景のチョコレート色と、茶ばんだ赤の調和的な色彩。明王の肉体を飾り、豊かにこぼれおちる宝珠を受けて、大きく花弁を開いた蓮華座。黒釉掻落みたいな精緻な龍文の壺。すごいなあ、これ。パワーと叡知を備えた華麗なヒーローを描きたいと思った絵師の気持ちが、時代を超えて伝わる。
実見できた作品の中では、奈良博の『両頭愛染曼荼羅』(不動明王と愛染明王の一身両頭図)が印象的だった。台座の下にいる、大きな三鈷杵を口いっぱいに咥えた獅子がかわいい。なんだ、これは!的な驚きを感じたのは、『愛染田夫本尊』と題された、江戸時代の2幅の絵画(奈良・西大寺蔵)。どちらも蓮華座の上に吽字形に身体をひねった蛇が描かれている(片方は、さらに曲芸のように三鈷杵の上に乗っている)。あやしすぎる。
小さな『愛染明王懸仏』(鎌倉時代、個人蔵)は、新宮市・熊野速玉大社の摂社、神倉神社で出土したもの。稚拙な表現だが、眉根を寄せ、大きく開いた口は怒りの獅子吼、ビリケンさんみたいな三角頭は怒髪天を衝く表現なのだろう。そのギャップがほのぼのして愛らしい。称名寺伝来の『愛染明王坐像』(鎌倉時代)は30数個のパーツでできているそうで、その工芸的な精巧さに感心する。
金沢文庫の文書資料(称名寺聖教)から、愛染明王に関する修法のあれこれを紹介しているのも面白かった。降伏法では、怨敵が自筆で姓名を書いたものを愛染明王の頭頂の獅子の口に置くのが「下品」の法、本尊の口に置くのが「中品」の法、行者(修法者?)の口に置くのが最上の秘法だとか。覚えておこう…役には立たないだろうけど。