○札幌コンサートホール(Kitara)主催 『ニューイヤーコンサート 雅楽』(1月12日、14:00~)(出演:伶楽舎)
中島公園にある札幌コンサートホール「Kitara」まで、雪を踏み分けて、雅楽コンサートを聴きに行った。演目は、第1部が管弦「双調音取(そうじょうのねとり)」「入破(じゅは)」「胡飲酒破(こんじゅのは)」、舞楽「五常楽急(ごしょうらくのきゅう)」。第2部が、敦煌琵琶譜による復曲で「琵琶独奏(傾杯楽より)」「急胡相聞(きゅうこそうもん)」「風香調調子(ふうこうちょうちょうし)」「傾杯楽(けいはいらく)」「伊州(いしゅう)」「急曲子(きゅうきょくし)」。
冒頭の管弦は、舞台上に11名の楽人。前列が、右から鞨鼓、太鼓、鉦鼓。中列が、琵琶、筝。後列が、笙、篳篥、龍笛(各2名)の編成だった。私は、舞台の真横にあたる2階席で、打楽器のみなさんの手元を覗き込むような位置だったのが面白かった。特に太鼓は、ふだん正面からだと演奏者の姿がほとんど見えないので、なるほど右手の撥は太鼓の中心を強く打ち、左手の撥は太鼓の端を弱く打つのか、というようなことが初めて分かった。
曲の合間に、鞨鼓の演奏者の宮丸直子さんが、楽器や楽曲について解説をしてくれた。今年の演目の「双調」は、双調(ソ)を主音とする音階で、陰陽五行説では、季節は春、方角は東を表すとのこと。毎年、新春コンサートは「双調」の曲を選ぶのかと思ったら、そういうわけではなく、順繰りに変えるので、今年は非常にいい巡りあわせなのだそうだ。あ、橋本治の『双調平家物語』も「春」の意味を込めていたのだろうか?
舞楽は「五常楽」より序破急の「急」。左方舞で二人の舞人が舞った。品のいい薄紫色の蛮絵装束。両袖、胸、前垂、背中などに向かい獅子が描かれている(位置によって、色が異なる)。冠は巻纓に緌(おいかけ)で、武官らしい雄々しさが際立つ。蛮絵装束というのも、衛府の官人の制服「蛮絵袍」から来ているのだそうだ。ワイルド系の若い男子を愛でるのに格好の舞である。
第2部は、国立劇場が長年にわたって復元した正倉院楽器のための合奏曲として、芝祐靖氏が敦煌琵琶譜から復元した作品を演奏。横笛、 阮咸、磁鼓、方響、排簫、竽(う)、大篳篥など、珍しい楽器がたくさん登場した。平等院鳳凰堂の飛天が演奏していた楽器だなあ、と思い出すものもあり、「正倉院には美しい絵の描かれたものが残っています」(阮咸)とか「バラバラのパーツしか残っていません」(排簫)等の解説も、毎年行っている正倉院展の記憶がよみがえって面白かった。
どの曲も唐代のインターナショナルな賑わいを思わせて楽しかったが、琵琶独奏がいちばん気に入った。「琵琶」という楽器の存在を知った当時は、ギターのように変化に富んだメロディが奏でられるものと思っていたので、初めて演奏を聴いたときは、あまりにぶっきらぼうで、音を叩きつけるだけなので、少しがっかりしてしまった。けれど、聞き馴れるにつれて、だんだん、その孤高の響きに魅せられるようになってきた。とことん歌う楽器もいいけれど、歌いすぎない楽器もいい。やっぱり明石の上ですね。白居易の「琵琶行」の悲哀も、琵琶でなければなりません。
中島公園にある札幌コンサートホール「Kitara」まで、雪を踏み分けて、雅楽コンサートを聴きに行った。演目は、第1部が管弦「双調音取(そうじょうのねとり)」「入破(じゅは)」「胡飲酒破(こんじゅのは)」、舞楽「五常楽急(ごしょうらくのきゅう)」。第2部が、敦煌琵琶譜による復曲で「琵琶独奏(傾杯楽より)」「急胡相聞(きゅうこそうもん)」「風香調調子(ふうこうちょうちょうし)」「傾杯楽(けいはいらく)」「伊州(いしゅう)」「急曲子(きゅうきょくし)」。
冒頭の管弦は、舞台上に11名の楽人。前列が、右から鞨鼓、太鼓、鉦鼓。中列が、琵琶、筝。後列が、笙、篳篥、龍笛(各2名)の編成だった。私は、舞台の真横にあたる2階席で、打楽器のみなさんの手元を覗き込むような位置だったのが面白かった。特に太鼓は、ふだん正面からだと演奏者の姿がほとんど見えないので、なるほど右手の撥は太鼓の中心を強く打ち、左手の撥は太鼓の端を弱く打つのか、というようなことが初めて分かった。
曲の合間に、鞨鼓の演奏者の宮丸直子さんが、楽器や楽曲について解説をしてくれた。今年の演目の「双調」は、双調(ソ)を主音とする音階で、陰陽五行説では、季節は春、方角は東を表すとのこと。毎年、新春コンサートは「双調」の曲を選ぶのかと思ったら、そういうわけではなく、順繰りに変えるので、今年は非常にいい巡りあわせなのだそうだ。あ、橋本治の『双調平家物語』も「春」の意味を込めていたのだろうか?
舞楽は「五常楽」より序破急の「急」。左方舞で二人の舞人が舞った。品のいい薄紫色の蛮絵装束。両袖、胸、前垂、背中などに向かい獅子が描かれている(位置によって、色が異なる)。冠は巻纓に緌(おいかけ)で、武官らしい雄々しさが際立つ。蛮絵装束というのも、衛府の官人の制服「蛮絵袍」から来ているのだそうだ。ワイルド系の若い男子を愛でるのに格好の舞である。
第2部は、国立劇場が長年にわたって復元した正倉院楽器のための合奏曲として、芝祐靖氏が敦煌琵琶譜から復元した作品を演奏。横笛、 阮咸、磁鼓、方響、排簫、竽(う)、大篳篥など、珍しい楽器がたくさん登場した。平等院鳳凰堂の飛天が演奏していた楽器だなあ、と思い出すものもあり、「正倉院には美しい絵の描かれたものが残っています」(阮咸)とか「バラバラのパーツしか残っていません」(排簫)等の解説も、毎年行っている正倉院展の記憶がよみがえって面白かった。
どの曲も唐代のインターナショナルな賑わいを思わせて楽しかったが、琵琶独奏がいちばん気に入った。「琵琶」という楽器の存在を知った当時は、ギターのように変化に富んだメロディが奏でられるものと思っていたので、初めて演奏を聴いたときは、あまりにぶっきらぼうで、音を叩きつけるだけなので、少しがっかりしてしまった。けれど、聞き馴れるにつれて、だんだん、その孤高の響きに魅せられるようになってきた。とことん歌う楽器もいいけれど、歌いすぎない楽器もいい。やっぱり明石の上ですね。白居易の「琵琶行」の悲哀も、琵琶でなければなりません。