○国立文楽劇場 新春文楽特別公演(2015年1月18日)
今年も大阪の国立文楽劇場まで、新春文楽特別公演を見て来た。第1部は、床の真横のボックス席で、視界はこんな感じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/40/d7c86f5099a97a432369eea7608758a9.jpg)
正面の天井には、吉例「にらみ鯛」と、干支の「羊」字の大凧。揮毫は真言宗智山派総本山智積院の寺田信秀化主である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/36/0164c472361110eda819375dd77ea95f.jpg)
・第1部『花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)・万才/海女/関寺小町/鷺娘』『彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)・杉坂墓所の段/毛谷村の段』『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)・道行初音旅』
四種の景事で構成される『花競四季寿』。全く期待していなかったのに、見惚れ、かつ聞き惚れてしまった。初春らしく、めでたく賑やかな「万才」で幕開け。ピンク色の蛸の出てくる「海女」で笑わせ、秋の枯野を背景とした「関寺小町」でしっとり。一瞬、老残の小町に寄り添う僧侶に見えたのが、文雀さんだった。小町の和歌、『卒塔婆小町』の伝承、謡曲の詞章など、長い文学の伝統が凝縮されている。最後は雪景色に映える「鷺娘」の妖艶な美しさ。床の上には、大夫さん5名、三味線5名という賑々しさ。三味線の鶴澤清治さんの撥さばきに見とれた。
『彦山権現誓助剣』は初見の演目。心優しい剣術の達人・六助のところに、師匠の決めた許婚、その妹の子、母代りの老女が次々に現れる。母を亡くして寂しい独り暮らしだった六助は、にぎやかな家族を手に入れて、めでたしめでたし(違うか)。
『義経千本桜』の「道行初音旅」。これも大勢が床に並ぶ。桜色の小紋を散らした揃いの裃。静御前を遣う勘十郎さんの肩衣も花びらを散らしたようで、華やかだった。勘十郎さん、キツネのほうを遣いたいんじゃないかなあ、と思いながら、楽しんだ。
・第2部『日吉丸稚桜(ひよしまるわかきのさくら)・駒木山城中の段』『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)・淡路町の段/封印切の段/道行相合かご』
『日吉丸稚桜』も初見。いや~まだまだ知らない演目があるなあ。木下藤吉郎ならぬ木下藤吉(このしたとうきち)が主人公らしいが(上演の段ではあまり活躍せず)、あまりにもスッキリした二枚目なのでびっくりした。しかも情理をわきまえ、思慮深いヒーロー。大阪人にとっての豊臣秀吉って、こんなイメージなのかな。
お待ちかね『冥途の飛脚』。やっぱり何度見ても面白い。詞章に無駄がなくて、するする頭に入ってくる。緊張感が途切れない。ああ、そして、忠兵衛のダメっぷり。これだけダメな男を平然と主人公に据えて、観客の同情をもらえると考える脚本家・近松のふてぶてしさ。梅川、被害者だよね、どう考えても。梅川を勘十郎、忠兵衛を玉女。比べるわけではないけれど、どうしても亡き吉田玉男さんの遣った忠兵衛が脳裡によみがえってしまう。玉女さんは玉男師匠に「お前は硬いねん」と言われた、という思い出を本公演のプログラムで語っている。でも玉女さんは、年を取るごとに色気の増すタイプじゃないかしら。ひとつの芸事を長年見続けるって、面白いものだなあ。
第2部は、最前列だったので、久しぶりに人形をガン見。床の様子は見えないんだけど、語りと三味線が、頭上にシャワーのように降り注ぐ席で、気持ちよかった。とりわけ、美声だな~と思ったのは咲甫大夫さん。ちょっと腹の立つくらいの(笑)美声。幕切れでは、紙ふぶきの粉雪が降り注ぐのだが、風に流されて客席に舞い落ちるものもあって、舞台と現実の境界が溶けてゆくような感じを味わった。
今年も大阪の国立文楽劇場まで、新春文楽特別公演を見て来た。第1部は、床の真横のボックス席で、視界はこんな感じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/40/d7c86f5099a97a432369eea7608758a9.jpg)
正面の天井には、吉例「にらみ鯛」と、干支の「羊」字の大凧。揮毫は真言宗智山派総本山智積院の寺田信秀化主である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/36/0164c472361110eda819375dd77ea95f.jpg)
・第1部『花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)・万才/海女/関寺小町/鷺娘』『彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)・杉坂墓所の段/毛谷村の段』『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)・道行初音旅』
四種の景事で構成される『花競四季寿』。全く期待していなかったのに、見惚れ、かつ聞き惚れてしまった。初春らしく、めでたく賑やかな「万才」で幕開け。ピンク色の蛸の出てくる「海女」で笑わせ、秋の枯野を背景とした「関寺小町」でしっとり。一瞬、老残の小町に寄り添う僧侶に見えたのが、文雀さんだった。小町の和歌、『卒塔婆小町』の伝承、謡曲の詞章など、長い文学の伝統が凝縮されている。最後は雪景色に映える「鷺娘」の妖艶な美しさ。床の上には、大夫さん5名、三味線5名という賑々しさ。三味線の鶴澤清治さんの撥さばきに見とれた。
『彦山権現誓助剣』は初見の演目。心優しい剣術の達人・六助のところに、師匠の決めた許婚、その妹の子、母代りの老女が次々に現れる。母を亡くして寂しい独り暮らしだった六助は、にぎやかな家族を手に入れて、めでたしめでたし(違うか)。
『義経千本桜』の「道行初音旅」。これも大勢が床に並ぶ。桜色の小紋を散らした揃いの裃。静御前を遣う勘十郎さんの肩衣も花びらを散らしたようで、華やかだった。勘十郎さん、キツネのほうを遣いたいんじゃないかなあ、と思いながら、楽しんだ。
・第2部『日吉丸稚桜(ひよしまるわかきのさくら)・駒木山城中の段』『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)・淡路町の段/封印切の段/道行相合かご』
『日吉丸稚桜』も初見。いや~まだまだ知らない演目があるなあ。木下藤吉郎ならぬ木下藤吉(このしたとうきち)が主人公らしいが(上演の段ではあまり活躍せず)、あまりにもスッキリした二枚目なのでびっくりした。しかも情理をわきまえ、思慮深いヒーロー。大阪人にとっての豊臣秀吉って、こんなイメージなのかな。
お待ちかね『冥途の飛脚』。やっぱり何度見ても面白い。詞章に無駄がなくて、するする頭に入ってくる。緊張感が途切れない。ああ、そして、忠兵衛のダメっぷり。これだけダメな男を平然と主人公に据えて、観客の同情をもらえると考える脚本家・近松のふてぶてしさ。梅川、被害者だよね、どう考えても。梅川を勘十郎、忠兵衛を玉女。比べるわけではないけれど、どうしても亡き吉田玉男さんの遣った忠兵衛が脳裡によみがえってしまう。玉女さんは玉男師匠に「お前は硬いねん」と言われた、という思い出を本公演のプログラムで語っている。でも玉女さんは、年を取るごとに色気の増すタイプじゃないかしら。ひとつの芸事を長年見続けるって、面白いものだなあ。
第2部は、最前列だったので、久しぶりに人形をガン見。床の様子は見えないんだけど、語りと三味線が、頭上にシャワーのように降り注ぐ席で、気持ちよかった。とりわけ、美声だな~と思ったのは咲甫大夫さん。ちょっと腹の立つくらいの(笑)美声。幕切れでは、紙ふぶきの粉雪が降り注ぐのだが、風に流されて客席に舞い落ちるものもあって、舞台と現実の境界が溶けてゆくような感じを味わった。