見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

随身庭騎絵巻を見に行く/東博・常設展(国宝室)ほか

2015-08-05 23:57:12 | 行ったもの(美術館・見仏)
気がついたら、東京国立博物館にしばらくご無沙汰していた。『鳥獣戯画』は京都で見たのでいいことにして、次の『クレオパトラ』にも関心が湧かない。それで、あぶなく常設展の名品を見逃すところだった。

■本館2室(国宝室) 『随身庭騎絵巻』(2015年7月7日~8月2日)

 大好きな絵巻作品。所蔵している大倉集古館で最後に見たのは2013年である。同館が2019年まで改修工事で休館中のため、東博で展示となったのだろう。ちゃんと全面開いているよな…と祈るような気持ちで近づき、確かに巻頭から巻末まで見ることができて満足した。著名な「随身」を描いたということになっているけど、「馬」の存在感が圧倒的である。

 その他の常設展。本館8室(書画の展開-安土桃山~江戸)には、マンガのような『虫太平記絵巻』。めずらしいな、と思ったら、これも大倉集古館の所蔵品。また『方広寺大仏殿炎上図』は、長澤蘆雪の独創と写生の妙が発揮された大好きな作品で、「個人蔵」ではあるが、大倉集古館で何度か見たことがあるもの。まとめて東博でお預かり中なのかな、と思った。展示機会の少ない、応挙の『朝顔狗子図杉戸』が見られたのも嬉しかった。

 本館3室(禅と水墨画)には、どこか楽しげで親しみの感じられる『山水図屏風』(六曲一双)。雪村かな?と思って近づいたら、「秀峰」印があるだけで、作者不明の作品。でも「雪村の画風に似ている」という解説にうなずく。7室(屏風と襖絵)では、個人蔵の『洛中洛外図屏風』と東博所蔵の『厳島遊楽図屏風』が面白かった(↓写真、初めて見る?)。どちらも江戸時代・17世紀。以上は全て、8月2日までの展示。



■本館15室(歴史史料)『養生と医学』(2015年7月7日~8月30日)

 最近、歴史史料の展示が面白くないなあと思っていたが、今回は力が入っている。内臓の位置を模型で示した銅人形は、幕末のものかと思ったら、寛文2年(1662)作と知って驚いた。意外と古い。「国宝」マークつきの「医心房」が2件出ていて、「平安・12世紀」の古写本は分かるが、「江戸・17世紀」本も国宝なのか。挿絵つきでめずらしい巻だからだろうか? 『解体図』は腑分けの記録で、生首の皮を剥いだ図はかなりグロテスク。これ、科博の『医は仁術』展で見たような気がする。もっと血腥い解剖図もあったはずで、いちおう許容範囲と判断した図を公開したのだろう。館内でもらえるパンフレット(ホームページでDLも可能)の表紙になっている錦絵『飲食養生鑑』も、確か『医は仁術』展に出ていたものである。『巨登富貴草(ことぶきぐさ)』(18世紀、多紀元悳著、粟田口蝶斎筆)は、不老長寿の薬を求める主人公が飛行船に乗って旅をし、巨人の体内に迷い込むという物語。発想は『ミクロの決死圏』を思わせる一方で、色欲・大酒・過食の不節制を避けよ、というあたりは、西欧中世のキリスト教の戒めみたいでもある。





■東洋館8室(中国絵画)『描かれた器物』(2015年6月30日~8月2日)

 絵画に描かれた器物(花瓶、水注、茶器など)に注目し、器物を描く絵画と描かれた器物 (に似たもの)をひとつのケース内に並べて展示する。所蔵品の範囲の広い、東博のような総合博物館でなければできない展示で面白かった。美術作品というよりも、風俗史料としての価値が高いものが展示されており、結果的に、あまり見たことのない作品を見ることができてよかった。なお、ここにも大倉集古館から、明時代の『宮女図巻』と清・光緒帝筆『葡萄図団扇』が出ていた。
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