見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

東アジアの共有財産/東アジア仏教への扉(金沢文庫)

2020-12-16 21:49:27 | 行ったもの(美術館・見仏)

神奈川県立金沢文庫 開館90周年記念特別展『東アジア仏教への扉』(2020年12月4日~2021年1月31日)

 開館90周年を記念して、同館が調査し公開してきた称名寺の名品の数々をとおして、東アジアで展開した仏教の様子を一望し、金沢文庫の収蔵品が持つ世界に誇れる魅力を紹介する。仏画・仏像・文書の名品が多数揃った展覧会だった。

 仏画では巨大な『仏涅槃図』が目を引いた。358cm×291cmとのこと。展示ケースの中では全体の三分のニ程度しか広げることができず、釈尊の寝台の下に集まった動物は、かろうじてサル?とイヌ?の頭が見えていたくらいだった。『諸尊図像集』は何種類か出ていたが、かつては称名寺本しか知られていなかったのだそうだ。『香象大師像』は、花の舞い散る演出がラブリーで好き。

 仏像は、称名寺光明院所蔵の運慶作・大威徳明王像を忘れてはならないだろう。顔が大きくて押し出しの強い釈迦如来立像と、個性的な十大弟子像も来ていた。特に垂れ目の優波離尊者と釣り目の舎利弗尊者が印象に残るが、どちらも悪相である。尊者らしくない。

 文書(聖経)について、過去の研究・出版を振り返り、「東アジアの共有財産」という意識が十分でなかったと反省している態度が誠実で印象的だった。現在は、さまざまな国際共同研究が積極的に進められているそうだ。上海師範大学敦煌学研究所からは、手書きの経典をAIで活字化するプロジェクトの協力打診が来ているという。そうかー。人手の足りない部分は、AIで効率化されて研究が進むといいな。

 それから、ぼろぼろの『華厳経義鈔』について、2019年に新たに四紙が発見されたという注釈がついていたのにも感心した。地道な調査に携わっている方々の喜びを想像して、そっと拍手を送った。

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