今年の連休は、久しぶりに鎌倉も歩きに行った。残念ながら、流鏑馬など鎌倉まつりの主要行事は再開されなかったが、すっかり人出が戻って、どこも大賑わいだった。
■鎌倉歴史文化交流館 企画展『北条氏展vol.2 鎌倉武士の時代-幕府草創を支えた宿老たち』(2022年4月9日~6月12日)
今年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にちなみ、年間を通じて北条氏に焦点をあてるようだ。第1弾『北条氏展vol.1 伊豆から鎌倉へ-北条氏の軌跡をたどる-』(2022年1月4日~3月26日)は見逃してしまったが、第2弾から見に来ることができた。今季は、鎌倉殿・源頼朝を支えた人々を取り上げ、鎌倉幕府の成立に彼らがいかに寄与したのかを紹介するとともに、武士が持つ和歌や信仰などの「文」の側面にも注目する。
「文」の側面だが、頼朝は勅撰集に10首入集しており、慈円とは77首の贈答をしたことが慈円の捨玉集に収録されているという。知らなかった。展示に詳細情報はなかったが、ネットで検索したら「頼朝と慈円の和歌の贈答について」(安齋貢、2007年) という論文が見つかったので、読んでしまった。ずいぶん恋歌ふうの贈答なのが面白い。『古今著聞集』には、頼朝と北条時政が連歌をする説話もあるそうだ。
展示品は出土品が多く、次いで文書なので、全体的に地味だが、大河ドラマの登場人物と重ねることで、ずいぶんイメージがはっきりする。横須賀・満昌寺の木造三浦義明坐像(大きい!)が来ていた。あと、義経が、実は(軍事天才のみでなく)行政官僚としての能力も高かったと紹介されていたのが興味深く、印象に残っている。
■鎌倉国宝館 特別展『北条氏展 vol.2 鎌倉武士の時代-武士の姿への憧憬-』(2022年年4月9日~6月12日)
鎌倉国宝館と鎌倉歴史文化交流館は、この1年、北条氏に関わる展覧会を同一のテーマで開催することになっている。国宝館の1~2月は『肉筆浮世絵の美』、2~3月は『ひな人形』だと思っていたが、併設で北条氏関連の展示もあったようである。そして4月から、本格的にコラボ展示が始動した。
まず常設展示(仏像)だが、藤沢・養命寺の薬師如来坐像と脇侍の日光・月光菩薩立像(全て鎌倉時代)が珍しかった。薬師如来のお顔は横幅があり、光触寺の阿弥陀如来(頬焼阿弥陀)に似ている気がした。胸は肉厚で、どっしりと重量感がある。12年に一度、寅歳ご開帳の秘仏で、本展の会期中、初めて国宝館で展示されることになったそうだ。なお、もとは大庭薬師堂の本尊で、大庭景兼の守護仏であったと伝えられている。
寿福寺の聖観音菩薩坐像も珍しい気がしたのだが、単に私が忘れていただけかもしれない。高い髷が宋風である。浄智寺の地蔵菩薩坐像は、むかしから私の好きな仏像の一つなのだが、2021年度、美術院で修理を施した結果、正中(頭頂から両目の間・鼻・口を通るライン)の継ぎ目が目立たなくなって、かなり印象が変わった。
特別展エリアには、神奈川県立歴史博物館が所蔵する鎌倉時代の兜、鶴岡八幡宮が所蔵する『源平合戦図屏風』(江戸時代)など、珍しいものが出ていた。『騎馬図巻』(馬の博物館、鎌倉時代)は、6図が開いていたが、馬は後ろ足を跳ね上げたり、前足を上げたり、疾駆したり、どれも躍動的である。そして人に比べて、かなり大きいように感じた。ほかに、鎌倉武士を題材にした江戸の浮世絵(国芳、芳虎など)が多数出ていたが、知らない作品が多くて興味深かった。
■白旗神社(鎌倉市西御門)~頼朝墓所
最後に白旗神社に寄り、石段を上がった高台にある頼朝公の墓所にも参拝してきた。たぶん2013年の初詣以来だと思う。ご無沙汰しておりました。そもそもは頼朝の持仏堂があり、頼朝没後には法華堂と呼ばれて崇敬を集めたという。
墓所の右側の草地に「史跡法華堂跡(源頼朝墓・北条義時墓)」という看板が立っているので、多くの人が、北条義時墓(義時法華堂跡)はここか、と思ってしまうのだが、これはトラップである(私もまごついた)。
白旗神社前の、あまり人通りのない道を東に進むと、すぐに石段があり、上った先は開けた草地になる。ここが義時法華堂跡で、看板のQRコードを読み込み、「AR北条義時法華堂」を起動すると、実際の風景の中にCG法華堂が浮かび上がると聞いていた。
しかし残念ながら、私の機種は対応していなかったので、期待したようには楽しめなかった。三々五々立ち止まってスマホを覗き込む人たちからも「見える?」「見えない」みたいな会話が聞こえていた。まあ、有料アプリではないので、仕方ないですかね。