見もの・読みもの日記

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2022年5月関西旅行:華風到来(大阪市立美術館)

2022-05-07 11:30:14 | 行ったもの(美術館・見仏)

大阪市立美術館 特別展『華風到来 チャイニーズアートセレクション』(2022年4月16日~6月5日)

 同館は本年秋から約3年間の大規模改修工事に入ることになっている。本展は、長期休館の前に館蔵品によって行う特別展で、中国美術とその影響を受けた「華風=中国風」の日本美術を選りすぐり、中国文化の魅力と広がりを紹介する。はじめに阿部コレクションを中心とする中国明清の書画。堆朱盆や豆彩・青花の磁器など工芸品も取り合わせる。

 明・沈周の『菊花文禽図』(だったかな?)。

 明・呉歴『江南春色図』(だったと思う)。安野光雅さんの『旅の絵本』みたいに、高い視線から眺めた、やわらかい色彩のひろびろとした風景が続く。時折、そこに暮らす人々の姿が小さく見える。とても愛おしく感じた作品。

 次に「古いもの」の括りで、師古斎コレクションの拓本と、青銅器・鏡、加彩俑など。拓本は、褚遂良の『雁塔聖教序』(唐・653年)が最も新しく、あとはずっと古い。『天発神讖碑(てんぱつしんしんひ)』(276年)は、三国時代の末、呉が天下を統一するという予言を聞いた呉の孫晧が建てたもの。書風は極めて特殊で「奇怪の書」「篆書にも非ず、隷書にも非ず」と評されているそうだ。いつも日本民藝館で見ている『開通褒斜道刻石(かいつうほうやどうこくせき)』もあった。

 いま見ている中国ドラマ『風起隴西』が街亭の戦い(228年)から始まっているので、四川省雅安市の『樊敏碑(はんびんひ)』(205年)は、場所も年代もドラマに近いなと思って眺めていたが、あとで調べたら、五斗米道を「米巫」と称している箇所があるそうだ。よく見てくればよかった。

 ドラマの登場人物を思わせる灰陶加彩女子(後漢時代・1~2世紀)。

 続いて日本の絵画・工芸から「憧れの中国」を取り出す。「恋にはいろんな形がある」と名付けて、鎌倉時代の『白衣観音像』から(古墳時代の三角縁四神四獣文鏡から?)大正時代・島成園の『上海娘』まで。

 最後は山口コレクションを中心とする中国の石造彫刻。私が大阪に住んでいたら、毎月でも通って眺めたいくらい素晴らしいコレクションである。仏龕の裏面の浮彫、素朴な線刻画も魅力的。供養人の名前の列を見ているだけでも想像が広がる。

 併設の『大阪市立美術館の歩みとコレクション』では、開館当時の外観写真やポスター等に加え、特別展で紹介できなかった名品の数々を展示していた。特別展に出陳しているコレクションについても、あらためて紹介。もともと同館のホームページには各種コレクションの概説があるのだが、これが「よそいき」の文章であるのに対して、今回の展示パネルは、短い文章の中にコレクターの人となりが浮かんで、印象深いものになっている。

 たとえば師古斎コレクションの岡村蓉二郎氏は、上述の『天発神讖碑』に出会って「しばらく声も出ず」「西宮に持っていた貸家を売り払い、その金を持って走るように店に行き」手に入れたなど。山口コレクションの山口謙四郎氏については、「驚くべきことに、氏はほとんど独学で自らの鑑識眼を頼りにしてコレクションを形成した」「中国の発掘調査事例などが知られない当時にあって、よくぞ集めたという逸品が揃う」など、書き手の心情が滲み出ている。なお、旧蔵者の多くは、大阪ないし関西ゆかりの実業家だが、こういう美術コレクター、今は少なくなっているのだろうなあ。

 併設展で初めて知ったことに、大阪の旧明治天皇記念館の存在がある。この壁面を飾った「御聖徳壁画」が大阪市美に収蔵されており(全部か一部か不明)、今回、洋画4件が展示されていた。私は東京育ちなので「聖徳記念絵画」といえば、神宮外苑を思い出すのだが、大阪にも同様の施設があったことを初めて知ったのである。旧明治天皇記念館(旧桜宮公会堂)は現存しているそうなので、今度、外観だけでも見に行ってみよう(レストランは敷居が高そう)。

 なお、大阪市美、高い天井のシャンデリアに灯が入っていて美しかった。写真だと写らないが、現場では七色に輝いていた。

 今回の展示は、基本的に撮影可で、近代絵画など著作権保護期間内の作品には「配布禁止」の注意書きが付いていた。私はメモ代わりに写真を撮りたいときが多いので、こういう扱いはとてもありがたい。広まってほしいと思う。

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