見もの・読みもの日記

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残念もあり/アール・デコの貴重書(庭園美術館)

2022-05-22 23:16:30 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京都庭園美術館 建物公開2022『アール・デコの貴重書』(2022年4月23日~6月12日)

 展覧会に惹かれたので、久しぶりに庭園美術館を訪ねた。前回訪問が2011年なので、なんと11年ぶりである。1933年竣工の旧・朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)は、アール・デコ様式の名建築として知られている。そうした背景から、同館ではフランスの装飾美術に関する書籍や雑誌、1925年のアール・デコ博覧会に関連した文献資料等を所蔵しているという。本展では、同館の所蔵品を中心に1920-30年代の貴重書、絵葉書等を展示する。

 展示会場は本館と新館で、本館では、アール・デコ様式の建物の各室をめぐりながら、展示ケースに入った貴重書を眺める。新館(2013年竣工、初めて来た)のギャラリーでは、まとめて多くの資料を見ることができた。

 1920-30年代の図書や雑誌は、おそらく多くの図書館では、まだ「貴重書」に指定されない年代だと思う。しかし文化史・美術史的にはとても貴重だと思うので、ぜひ散逸しないよう気をつけてもらいたい。

 1925年の現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称・アール・デコ博覧会)の総合委員長をつとめたフェルナン・ダヴィッド他著『近代装飾芸術年鑑』(1924年)。

 

 アール・デコ博覧会の『日本館カタログ』(日本出品者のためのための手引き)(1925年)。試しに「Cinii Books」(大学図書館の本を探す)で検索してみたら、持っているのは、芸大図書館と国際交流基金ライブラリーの2館だった。

 絵本や雑誌(ファッション誌、インテリア誌)も多くて楽しかった。写真はアンドレ・エレの絵本。私、子供の頃にこのひとの絵本を読んだように思うのだけど、懐かしい絵柄に騙されているだろうか。

 アール・デコ様式は、一般に「1910年代半ばから1930年代にかけて流行、発展した装飾の一傾向」(Wiki)と定義されているようだが、今回、1920-30年代の図書や雑誌を見ていて、1920年代はともかく、1930年代に入ると、ガラッと流行の様相が一変し、機能性とパワーを求める価値観が前面に出てくるように感じた。車や飛行機が美の表象になるのもその一例である。そうか、これがモダニズムか、と思った。

 なお、アール・デコ博覧会については、ググったら出てきたページ「1925アール・デコ博 パヴィリオン訪問」の解説が充実している。これは庭園美術館の古いサイトのコンテンツだったページのようである。削除せずに残してあるのはありがたいが、現在のホームページからリンクはされていない。どうなっているのだろう?

 本展では、ケースに入った貴重書の展示以外にも、建物を活かした再現展示が行われている。たとえば、書斎の机には、それらしい洋書と封筒・便箋。

 書庫の棚には本が詰まっているように見えるが、ほぼ全てダミー(空箱に背表紙の写真を貼ったもの)。

 このくらいまでは許せるのだが、大食堂の「テーブルデコレーション」に本が使われているのを見たときは、眩暈がした。この無意味なページの折り方! ナイフを載せる?

 

 本好きの人間は、どんな本でも、本が粗末に扱われるのを見ると、自分の体が痛めつけられたように辛いのである。この取り扱いを許容できるということは、本展の企画者は、私の同類の本好きではないなと思って、がっかりした。ちなみに卓上の『Elle et Lui』(彼女と彼)は、ジョルジュ・サンド作の小説である。

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