見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年5月関西旅行:東寺、六孫王神社

2022-05-11 19:48:57 | 行ったもの(美術館・見仏)

 関西旅行3日目。行きたかったところは2日目までに全て行けたのと、期待していた神護寺の宝物虫払いが今年も中止だったので、最終日をどう過ごすか考えた結果、予定より早めに京都を離れることにした。

 あさイチで東寺へ。すでに食堂の納経所に長い列ができていてびっくりした。久しぶりに見る光景だが、案内の方が、手際よく列を捌いていた。ご朱印をいただいたあとは、夜叉神堂にお参りするのが私の定番コース。すると、どちらのお堂も本物の夜叉神立像ではなく、等身大の写真パネルが飾られていた。おや?昨年7月には雄夜叉神だけが「御遷座」だったのに。「雄夜叉神立像は、修理を終えて宝物館に御遷座しています」の貼り紙。そして現在は、雌夜叉神が修理に入っているらしかった。

東寺宝物館 2022年春期特別展『東寺と後七日御修法-江戸時代の再興と二間観音-』(2022年3月20日〜5月25日)

 毎年正月8日から14日までの7日間に行われている後七日御修法(ごしちにちのみしほ)を特集する。弘法大師空海が承和2年(835)に宮中で勤修したのが始まりだが、戦国時代と明治初期に中断している。中断なく受け継がれてきたものも尊いが、このように、中断しては再興されてきた伝統も意義深いものだ。

 当初は空海が唐から持ち帰った法具類を用いていたが、戦国時代の中断を経て、元和9年(1623)の再興に際しては、使用不能になった『健陀穀子袈裟(けんだこくしのけさ)』を模倣した新たな袈裟を、御水尾天皇が寄進している。元禄時代には、両界曼荼羅図や五大尊十二天像も新調された。展覧会では、後世の模本が展示されているとガッカリしていたが、こういう努力がなければ、伝統の再興も継続も果たせなかっただろう。今回、2階の展示ホールに『五大尊十二天像(元禄本)』の一部が出ているのを、あらためて、ありがたく眺めた。

 2階ホールには、巨大な千手観音立像の膝元に、ほんとに雄夜叉神立像がいらっしゃっていた。腐朽菌などによる被害が確認されたため、令和3年度に修理を実施したとの説明あり。やんちゃな雄夜叉神を、隣りの地蔵菩薩立像がしっかり見張っているようにも見えた。

 1階には、江戸時代に御七日御修法の観音供の本尊として用いられた、二間観音立像(聖観音・梵天・帝釈天)が、六角厨子と一緒に展示されていた。おや、これは以前にも見たな、と思ったのは、2020年春の『東寺名宝展-重要文化財 二間観音と密教工芸-』のことだ。私は3月中に参観したのだが、4月に緊急事態宣言が出て展覧会が途中終了してしまったので、要望に応えて、再度公開になったのだという。

 館内には御七日御修法のさまざまな風景の写真パネルが飾られていたが、マスク姿の僧侶が目立っていたので、去年か今年の撮影なのだろう。1月14日の結願の日に雪がちらついたのは、今年だっただろうか。

六孫王神社(京都市南区)

 もう1か所、東寺の北側になる六孫王神社に寄っていく。清和源氏の始祖・源経基を祭神とすることで知られる神社である。前回の参拝は2012年で、大河ドラマ『平清盛』に影響されて、源平ゆかりの史跡を巡っていたときだ。私は元来、平家びいきなのだが、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見ていると、源氏も大変だねえ、という気持ちになっている。

 前回は、社務所に人がいらっしゃらなくて、住所と名前を書いてお金と一緒に置いてきたら、後日、ご朱印を送ってくださった。今回は、その場で書いていただきながら、10年前のお礼を申し上げてきた。

 これで関西旅行は切り上げ。お昼前の「ひかり」自由席で熱海に向かった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年5月関西旅行:細見美術館、龍谷ミュージアムほか

2022-05-11 07:27:10 | 行ったもの(美術館・見仏)

浄土宗総本山 知恩院(京都市東山区)

 「春の京都非公開文化財特別公開」の企画で、通常非公開の大方丈・小方丈が公開されているというので来てみた。狩野尚信、信政らによる襖絵が見どころ。特に大方丈・鶴の間の襖絵は、2005年から建物の修理工事の関係で佛教大学宗教文化ミュージアムに預けられていたが、本年2月に知恩院に戻ってきたもので、16年ぶりの公開となる。金地の背景に、黒と灰色の羽根をまとった鶴たち(マナヅルか?)が力強く描かれていて、華やかというより、厳粛な雰囲気だった。尚信って、江戸狩野の人だと思っていたが、京都や大阪での制作にもかかわっているのだな。

細見美術館 琳派展22『つながる琳派スピリット 神坂雪佳』(2022年4月23日~6月19日)

 近代京都において図案家・画家として活躍した神坂雪佳(1866-1942)の多彩な作品を紹介する。一度見たら忘れない『金魚玉』や、どれも楽しい『十二ヶ月草花図』など。図案集『百々世草』はデジタルで全頁を鑑賞することができる。鷹峯の光悦村を想像して描いた『光悦村図』も面白かった。

 関連する琳派作品では、宗達の『双犬図』(白犬と黒犬がじゃれあう)や中村芳中の『白梅小禽図屏風』(鳥の顔!)など、このへんの琳派はかわいい。

白峯神宮(京都市上京区)

 白峯神宮は「春の京都非公開文化財特別公開」に初参加。しかし、あまり文化財はないのではないか?と半信半疑で行ってみた。特別公開の拝観料を払って上がらせていただいたお部屋には『崇徳上皇像・附(つけたり)随身像』。ただし原本(鎌倉時代)は京博にあり、展示はかなり新しい(たぶん近代の)模写である。ほかに由来のよく分からない楽器、刀剣など。蹴鞠の装束・靴(鴨沓/かもぐつ)・鞠などは、同神宮を拠点に蹴鞠保存会が活動していることもあって、それなりに見る価値はあった。

 これで「文化財特別公開」の名目で1,000円取るのはどうかなあ、と思ったが、やがて話の上手いおばさんが登場して、同神宮の由緒やら蹴鞠の作法やらを熱心に解説してくれたので、まあ文句は言わないことにしておく。

龍谷ミュージアム 春季特別展『ブッダのお弟子さん-教えをつなぐ物語-』(2022年4月23日~ 6月19日)

 釈尊を支えた10人の直弟子(十大弟子)、釈尊の涅槃の時に後を任された16人の高弟(十六羅漢)をはじめ、絵画や彫刻に表わされた仏弟子や在家信者の姿を紹介する。2020年春に中止になった展覧会をあらためて開催するものである(出品作品は一部変更あり)。

 特に興味深かったのは羅漢図で、愛知・妙興寺(中国・元時代)の8幅、三重・津観音大宝院(中国・明時代、刺繍)の4幅、京都・永観堂禅林寺(鎌倉時代)の4幅の計16幅を使って、十六羅漢図の並べ方を再現したコーナーがあった。妙興寺の羅漢は、虎を懐かせたり、獅子に騎乗したり、摩竭魚に乗ったり、やることが派手でアニメっぽくて楽しかった。永観堂禅林寺の第十三尊者・因掲陀(いんかだ)だったと思うのだが、小さな魚か貝(?)の上に立って海を渡りながら、目から光線を発してる羅漢がいた。これは大和文華館で見た眉間寺旧蔵『羅漢図』とそっくり! 変わった図様だと思っていたが、類例があったのか。

 ほかにも大徳寺の五百羅漢図(中国・南宋時代)、清凉寺の十六羅漢図(中国・北宋時代)、東博でよく見る日本最古の十六羅漢図(平安時代)など、羅漢図の代表的な名品が、1~2幅ずつ来ていた。また、焼失した法隆寺金堂壁画には『山中羅漢図』があり、その模本(明治時代)が残っていることを初めて知った。

 十大弟子は、さらに「二大弟子」を取り出すことがあるのだが、東南アジア系統では舎利弗と目連、東アジアでは阿難と迦葉を指すことが多いという。なるほど。見たことのある舎利弗・目連像があると思ったら、神奈川・称名寺の十大弟子立像だった。また、妙にビビッドな彩色の羅漢像坐像は、延暦寺の宝物館で気になったもの(※写真)で懐かしかった。

 以上、市バス1日乗車券を使い倒して予定を終了。最後に「Gallery SUGATA」に寄ったことは別記事とする。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする