見もの・読みもの日記

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2018年3月@関西:山水(承天閣美術館)+京博

2018-03-12 23:29:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
承天閣美術館 相国寺・金閣・銀閣の名品より『山水-隠谷の声 遊山の詩』(2017年12月16日~2018年3月25日)

 ずっと気になっていた展覧会。終了前に東京から行けてよかった! とても素晴らしかった。相国寺と金閣寺(鹿苑寺)・銀閣寺(慈照寺)が所蔵する名品の中から「山水」をテーマにした絵画、墨蹟、工芸品約80点を展示し、中世から近世にかけての山水観を尋ねる。

 第1室は「隠谷の声」と題し、13~15世紀の日本と中国の絵画が中心。可翁筆の墨画『水月観音寒山拾得図』3幅対はいいなあ。中央の水月観音は膝を抱いてリラックスしたポーズ。中空に韋駄天が浮かび、足もとには龍が顔をのぞかせる。左右の寒山拾得は太い線と細い線が自由に入り混じり、黒々した蓬髪は、若冲の寒山拾得を思い出させる。伝・牧谿筆『豊干寒山拾得図』は寒山が筆で岩壁に小さな文字を書き始めている。寒山詩の一節だそうだ。にこにこ見つめる拾得と豊干。

 「慶元府車橋石版巷陸信忠筆」の落款のある絹本著色『十六羅漢図』は、それぞれ特徴のある4点を展示。第5幅は羅漢たちの衣の縁を飾る黒(濃紺)の曲線が美しい。第12幅は伝統的な山水画を感じさせる樹木の表現。第15幅と第16幅の樹木・岩石は、清の奇想派を思わせる。第16幅の羅漢の衣は、灰色に緑を散らした個性的な文様で、立体感を持たせず、スクリーントーンを貼ったように平面的なのが面白かった。

 夏珪筆『松下眺望山水図』は実に大胆な余白。牧谿筆『江天暮雪図』はふわふわと夢のようなただよう山水。狩野元信筆『商山四皓図』3幅対は、左右が無人の山水で、中央に四人が固まる面白い構図。そして、雪村周継の『山水図屏風』は私の大好きな屏風(相国寺蔵)。大きな山が宙に漂うバルーンのように見える。豆粒のように小さな人物にも、どことなく味わいがある。今回は六曲一双を平らに伸ばして展示されていたが、屏風本来の立て方をしたほうが、視界に変化があって面白いのに、と思った。あと南宋で描かれた白楽天の肖像画(白楽天図)があって、黒い頭巾に杖を携えて立つ。無学祖元の賛に「眉も目も描くがごとくの男前」という意味の語句があるそうで、映画『空海』を早く見たくなった。

 また展示室内の茶室・夕佳亭の復元の中に、砧青磁茶碗『銘・雨龍』が置かれており、鹿苑寺の住職・鳳林承章(1593-1668)が、片桐石州からこの茶碗を贈られた逸話が紹介されていた。実はこの人物こそ、第2室、近世の始まりにおいて、後水尾天皇サロンで重要な役割を果たすのである。

 第2室の前半は「遊山の詩」と題して、16~17世紀の作品を紹介。近世に入ると庶民も「遊山」を楽しむようになる。『金閣寺遊楽図屏風』(鹿苑寺)や『花下遊楽図屏風』(相国寺)など。後半には、等伯、応挙、池大雅、さらに富岡鉄斎などの屏風多数。私は大雅の『白雲紅樹図』が気に入ったけど、紅葉の風景なのか。一面に紅の花が咲いたようで、桃源郷かと思った。

京都国立博物館 特別企画・貝塚廣海家コレクション受贈記念『豪商の蔵-美しい暮らしの遺産-』(2018年2月3日~3月18日)ほか

 1階の5部屋を使って、大阪府貝塚市の旧商家「廣海家」コレクションの受贈を記念する特別企画展が開催されていた。絵画、茶器、狂言面もあれば、大規模で華やかな宴席を彷彿とさせる膳碗や酒器のセット、婚礼衣装や婚礼調度なども。個人的にいちばん感心したのは、大小の竹製遠眼鏡。大きい方は2メートルくらいあった。貝塚生まれで独学で望遠鏡のつくりかたを学んだ岩橋善兵衛(1756-1811)か、その子孫の作だという。

 2階では、中国絵画室で特集展示『雛まつりと人形』(2018年2月20日~3月18日)。うーん、面白かったけど、各分野の常設展示はいつでもやっていてほしい。中世絵画室の『室町幕府の唐物奉行・相阿弥とその周辺』(2018年2月20日~3月18日)はよかった。相阿弥は2点のみだったが、是庵(相国寺の僧)の作品が5点。『瀟湘八景図』2幅は、ふわふわして愛らしくて、巧いのか下手なのかよく分からないけど私の好み。

 なお、この日の京博と奈良博訪問で、私の最後の「東京国立博物館パスポート」は有効期限切れとなった。長い間、お世話になりました。いい制度だったのに、なくなってしまって、ほんと残念。


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