〇『清明上河図密碼』全26集(中央電視台、優酷、2024年)
北宋の都・開封の賑わいを描いた画巻『清明上河図』をモチーフにしたミステリー時代劇。画巻の作者として知られる張択端も劇中に登場する。主人公は大理寺の下級官吏の趙不尤。父親の趙離、弟の墨児、妹の弁児、そして妻の温悦と仲良く暮らしていた。趙不尤が温悦と出会ったのは15年前、都に帰還した官吏・李言の船が何者かに襲われ、李言と全ての船員が殺害された事件の晩だった。群衆に押されて河に落ち、着替えを求めて店に立ち寄った趙不尤は、同じく着替えを必要としていた温悦に出会う。温悦は李言の船を襲った水賊のひとりではないかという疑いを、趙不尤は微かに持っていた。
いろいろ新たな事件があって、徐々に温悦の前身が明かされていく。温悦は船大工の娘だったが、幼い頃、両親を殺されて孤児となり、水賊の一味に拾われ、武芸を仕込まれて育った。15年前、何者かの指令を受け、李言の船を襲ったのも彼女たちだった。趙不尤は温悦の正体を知っても、一途に妻を護り続ける。開封府の左軍巡使・顧震は、かつての上官・李言を殺害した犯人を捜し求めて、温悦の関与を知るが、真の元凶はその背後にいると考える。大理寺をクビになった趙不尤は、開封府に転がり込み、顧震の下で15年前から現在に至る事件の解決に尽力する。
さて、趙不尤の弟の墨児と妹の弁児は、本人たちには隠していたが、理由あって若き趙不尤が引き取った貰い子だった。大理寺の先輩だった董謙が何者かに殺害される前に、息子と娘を趙不尤に託したのである。そして、その董謙こそ、温悦の家族を襲った犯人だった。自分の意思とは無関係に張り巡らされた因縁に困惑する温悦、墨児、弁児たち。しかし、結局、今ある家族の姿を大切にしようという決心に至る。そこに現れたのは、死んだと思われていた温悦の弟・蘇錚。彼は、両親の仇を討つため、董謙につながる人々を陥れようとするが、温悦は抵抗する。
そして、最後に宮廷の大官にして貪官・鄒勉こそが全ての事件の黒幕であったことが判明する。鄒勉の娘と娘婿も傍若無人な悪役として登場するが、父親の鄒勉は、それを上回る冷酷・凶悪ぶりを見せる。このラスボスを裁判劇の舞台に連れ出し、悪事を糾弾する趙不尤の弁舌がクライマックス。圧倒的な民衆の賛同を得て、実際に開封府尹の審理に引き渡されることになる。このとき、鄒勉の意を受けた私兵が突撃するのを瓦子(劇場)の前で、体を張って阻むのは顧震と下僚の万福。
善悪どちら側も癖のあるキャラが多くて面白かった。ルックスは全くイケていないけど、なかなかの頭脳派で、妻と家族思いの趙不尤。張頌文さん、いいドラマに当たったと思う。顧震は土いじりが趣味らしく、周一囲さんにしてはじじむさい役柄が大変よかった。その部下、お笑い担当のようで頭児(ボス)への忠誠心は厚い万福(林家川)も好き。墨児と親交を結ぶ学究肌の青年・宋斉愈役は郝富申くん!古装劇は初めて見たけど、どんどん出てほしい。
『清明上河図』の虹橋を再現したセット、さらに画中の人物を全て再現したカットもあって、見応えがあった。ただ『清明上河図』には、女性の姿が非常に少ないと言われているので、画巻の世界をそのまま再現したら、こんなに女性の活躍するドラマにはならないだろう。