見もの・読みもの日記

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あれもこれも盛りだくさん/HAPPYな日本美術(山種美術館)

2025-01-30 22:16:59 | 行ったもの(美術館・見仏)

山種美術館 特別展『HAPPYな日本美術-伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ-』(2024年12月14日~2025年2月24日)

 山種美術館の新春企画は、いつもお正月らしい華やかな気分を味わうことができるので、毎年、楽しみにしている。今年は、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた美術に焦点をあて、現代の私たちにとってもラッキーモティーフといえる作品を紹介する。

 冒頭は横山大観の『天長地久』(だったかな)。斜面に点々を連なる松林。大観の松はすぐに分かる。三人の画家が松竹梅を競作したセットが2件出ていたが、どちらも大観は松を描いていた。私は竹内栖鳳の「梅」の春の大地が、茶色から若草色に変わりゆくところが、和菓子の色合いのようで美しかった。干支の巳を描いた小品もいくつかあったが、奥村土牛が描くとヘビもりりしく愛らしくなる。

 続いて、めでたい「生きもの」のセクションには鶴が多数。すらりとした立ち姿は美しく、まるまった姿(古径『鶴』)も可愛い。若冲の墨画『鶏図』(個人蔵)が何食わぬ顔で混じっていたのには笑ってしまった。鳥たちに囲まれて、なぜか『埴輪 猪を抱える猟師』(古墳時代)と、木製の『迦陵頻伽像』(室町時代)が展示されていた。どちらも個人蔵。

 三角帽子をかぶった『猪を抱える猟師』は、右目と左目がアンバランスで、口もひん曲がっており、不思議な表情をしている。しかし鼻筋が通っていて横顔はイケメン。ビートたけしに似ているなあと思いながら、この埴輪は見たことがあると思い出した。記録を調べたら、2019年の『日本の素朴絵』展に出ていたもので、のちに『芸術新潮』上で「古墳時代のビートたけし」と呼ばれている。

 『迦陵頻伽像』は、細見美術館の『末法』展などで見たものだと思う。キャプションに「にこやかでやさしい表情」とあったが、私はこの微笑みが逆に恐ろしいのだが…。覚園寺の日光菩薩の光背に付いていた可能性があるという。覚園寺、そんなに大きな仏像があったんだっけ。久しぶりに行ってみたくなった。

 川端龍子は、象のインディラ来日に触発された『百子図』、わんこにしか見えない獅子と牡丹を描いた『華曲』など大作も展示されていたが、『鯉』2幅が恐ろしくよかった。左に黒い真鯉2匹と緋鯉1匹、右に真鯉2匹がたゆたっている。初めて名前を聞いた新井洞巌(1866-1948)の『蓬莱仙境図』も気に入った。山の緑がきれい。最後の南画家と呼ばれているそうだ。

 富士図は、青を基調とした土牛の『山中湖富士』と小松均の『赤富士図』がきれいだった。司馬江漢の『駒場路上より富嶽を臨む図』(個人蔵)というオマケつき。10人ほどの人々がぎゅうぎゅうに寄り集まって富士を遠望する図。マンガみたいな筆致である。

 下村観山の『寿老』は、雪舟作品を思わせる妖しさ。鹿が頭を撫ぜられてなついている。品のいい大黒天の絵があると思ったら、『オタケ・インパクト』の尾竹竹坡の作品だった。

 第2展示室には、生まれたばかりの仔牛を描いた山口華楊の『生』が出ていたが、これはこういう狭くて薄暗い空間のほうが合っているように思った。若冲の『伏見人形図』には口元がゆるむが、『蛸図』(個人蔵)はぞわぞわして不思議な作品。めずらしい個人蔵作品をたくさん見ることができてお得感もあり、楽しかった。


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