〇東京国立博物館・本館特別5室 浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念・特別展『京都・南山城の仏像』(2023年9月16日~11月12日)
この夏、奈良博で開催されていた『聖地 南山城』の一部巡回展というところだろうか。奈良博では、仏画や考古資料もあわせて143件が30を超える寺社(たぶん。いま関連MAPで数えた)から集結していたが、東京は11の寺社から18件の出陳のみで、ちょっと寂しい。とはいえ、見逃すのも惜しいと思って出かけた。
会場は、これまでにも聖林寺の十一面観音や櫟野寺の大観音をお迎えした特別5室。会場に入るとすぐ、シャープな造形の小ぶりな観音像が目に入る。海住山寺の十一面観音菩薩立像だ。海住山寺には1、2回しか行ったことがないが、この観音像に記憶があるのは、ふだん奈良博に寄託されているためだと思う。横から見ると、腰を大きく前に突き出し、軽く左にひねって、右膝を浮かせかけている。流れるような動きは、インドの踊り子さんみたいだ。
左側の壁沿いには、それぞれ古風な薬師如来や普賢菩薩が並んでいた。その中に、あまり記憶にない仏様がいらして、近寄ってみたら浄瑠璃寺の、ふだん池の向こうの三重塔に安置されている薬師如来坐像だった。金色の身体に赤い衣をまとい、右手に薬壺を載せている。額には、水晶だろうか、碁石のような白毫が取り付けられていた。
会場奥の中央には阿弥陀如来坐像。向かって左に多聞天立像、右に広目天立像。全て浄瑠璃寺からおいでになっている。阿弥陀如来は、豊頬線のはっきりした肉付きのよいお顔で、板光背には水玉のような円形の模様が配されている。奈良博の画像で見ると「9体のその1」という仏様らしい。多聞天と広目天は、わりとよく東博で見たことがある。鎧の裾にしずくのような小さな鈴が並んでいるのと、三輪並んだひなぎくみたいな飾りを額に装着しているのが愛らしい。
阿弥陀如来と向き合う位置には、見上げるような十一面観音菩薩立像がいらした。禅定寺の十一面観音で、像高は3メートル近い。全体に整った造りだが、お顔は仏像らしくなくて、人間臭さを感じた。
会場の右側の列で気になったのは、牛頭天王坐像(松尾神社)。本人は前後左右四面の顔を持ち、頭には牛の首(?)を被っている。夏に奈良博で見ているはずなのだが、見るものが多すぎて印象に残っていなかった。禅定寺の文殊菩薩騎獅像が来ていたのも嬉しかった。耳がなくて(寝かせているのか?)坊主みたいな獅子なのだ。横から見ると、大きな口を開け、お尻を引いて後ろ脚を突っ張り、興奮したわんこみたいなポーズである。禅定寺、やっぱり一度は現地に行ってみたい。また寿宝寺の千手観音菩薩立像と金剛夜叉明王、降三世明王が来ていたのも嬉しかった。限られたスペースに合わせて、さすが納得できる厳選された出品だと思う。緑と白をベースにした簡素な会場のデザインも好ましかった。