見もの・読みもの日記

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2021年7月@関西:京の国宝(京都国立博物館)

2021-07-29 22:17:26 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 特別展『京(みやこ)の国宝-守り伝える日本のたから-』(2021年7月24日~9月12日)

 連休3日目は「京の国宝」初日からスタート。前日、朝9時の「日時指定鑑賞券」を申し込んでコンビニで発券してもらったが、△(残席わずか)の時間帯がなかったので、あまり人気がないのかな?と余計な心配をした。当日、朝8時半過ぎに行ってみたら、すでに50人くらい並んでおり、9時の開館までにどんどん列が伸びていった。

 検温と手指の消毒の上、入館。数人ずつ区切ってエレベータに案内されるが、3階の最初の展示室は、そこそこ混雑しているだろうと予想された。そこで、ルートを外れて、いきなり1階の彫刻展示室に入ってしまうことにする。広い展示空間は、ほぼ無人(びっくりしたような監視員の方と参観者らしい先客が1名)。入ってすぐ、階段の下には、火炎を背負い、左手に宝塔、右手に宝棒を掲げる多聞天像(浄瑠璃寺・平安時代)。ときどき東博でも拝見した記憶がある。優美な甲冑をまとい、動きは少ないが、堂々とした威厳がある。その斜め向かい、五智如来の右側の壇上には東寺の梵天坐像。四羽のガチョウが支える蓮華座に座る。額が狭く、頬がふっくらして、慈母のような優しいお顔立ち。東寺講堂では諸像に隠れて地味な存在のこの像を、今回、単独で取り上げてくれて嬉しい。

 五智如来の左側の並びには、三十三間堂の二十八部衆から婆藪仙人像と摩睺羅像。なるほど、この2躯を選ぶか!と感心した。特に婆藪仙人像は、華やかさとは無縁の名作。どちらも裸足なのが共通点。これら大きな仏像は、墨を流したような柄の屏風の前に展示されていて、大変趣味がよかった。ライティングにも満足。展示ケースに入っていたのは、醍醐寺の虚空蔵菩薩立像(檀像ふうの小像)と平等院の雲中供養菩薩像から菩薩形2躯と僧形1躯、あわせて復元模造も1躯。

 彫刻に満足し、2階の絵画へ。最初の部屋は、神護寺の『釈迦如来像(赤釈迦)』、東寺の『十二天像』より水天・帝釈天・毘沙門天・地天、清浄華院の『阿弥陀三尊像』(東山御物の南宋絵画)。すごくよい! 次室は平家納経と各種絵巻物で、『病草紙』「風病の男」が印象的だった。風病とは脳卒中(中風)の症状のこと。囲碁を指しているのだが、眼球が左右に振動して固定しない。それを女性たちがくすくす笑っているのが残酷である。隣室では、雪舟の『天橋立図』を久しぶりに見た。

 ここで、そろそろ10時になるので、次のお客の一団が入ってくる前に3階を見ておくことにする。順路に添った最初の展示室では、近代初頭におこなわれた文化財調査や古社寺・文化財保存の法制化の取組みを行政文書などで紹介する。いま京博の1階に来ている安祥寺の五智如来が、明治時代にも修復のため、京博に預けられていたことは初めて知った(ガラス乾板写真あり)。また、戦後初めての指定(昭和26/1951年)で国宝となった仁和寺の『三十帖冊子』、京博の『山水屏風』(東寺伝来)、陽明文庫の『御堂関白記』などが、それぞれの「国宝指定書」とともに展示されていた。

 再び2階に戻って、続きは書跡・典籍・古文書と考古資料・歴史資料である。典籍のところに、京大附属図書館所蔵の『今昔物語集(鈴鹿本)』巻二十九が出ていた。「羅城門登上層見死人盗人語第十八」つまり、芥川の『羅生門』の原話の箇所が開いていたのはサービスだと思うが、あまり気づいている人はいなかった。

 1階も彫刻以外を見残していたので、続きを参観する。工芸品には、厳島神社の『浅黄綾威鎧』や春日大社・熊野大社の古神宝類が出ていた。次に「皇室の至宝」でまとめた部屋があって、『春日権現験記絵(巻二)』(鎌倉時代)『天子摂関御影(摂関巻)』(南北朝時代)『小栗判官絵巻(巻六上)』(江戸時代)などを展示。時代を超越しているところが面白い。

 最後に、調査と研究、防災と防犯、修理と模造というトピックにちなんだ作品を展示する。滋賀・神照寺の『金銀鍍宝相華唐草文透彫華籠』を16面まとめて見たのは初めてだと思う。東寺食堂の四天王立像(昭和5/1930年に焼損)の、焼ける前の写真と、焼損を免れた腕と手首先(多聞天のものだったと思う)2件が展示されていた。以上、単に客寄せを目的に有名作品を集めただけでない、センスのよい展示内容に大満足。

 このあとは奈良に向かうので別稿で。


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