○天津博物館
http://www.tjbwg.com/index.htm
天津は、初め予定に入っていなかったのだが、気がついたら1泊することになっていた。しかし、実質的な滞在時間は半日である。にもかかわらず、行きたいところを、たくさん注文してしまったので、ガイドさんは、時間配分に苦慮していた。
天津博物館は、2004年に竣工した新しい博物館である。その建物を目の前にして、私は「あっ」と思い出した。新建築社の雑誌『JA(ジェイエー)』が「中国に建つ日本人建築家の作品」を特集したとき、この作品を見たことがあると。帰国後、調べてみたら、やはりそうで、川口衛構造設計事務所と高松伸建築設計事務所の仕事である。日本建築家協会の高松伸さんのページでも、彼の代表作に挙げられている。首を水平に伸ばした白鳥の姿をイメージさせる建築で、すばらしく美しい。展示品は20万点に及び、一般的な書画・骨董のほか、近代史をテーマにした展示室「中華百年看天津」もあるという。
この超級博物館の見学に許された時間は30分。とりあえず、私は3階の近代史展示室に入った。長い歴史を誇りたがる中国の博物館にあって、近代に焦点を合わせた展示室というのは、珍しい。天津という都市ならでは、の感がある。どうしたって、共産党の宣伝色は抜け切れないが、しかし、「租界」や「日本軍国主義」の時代に対する見方は、なかなか冷静で中立的である。非常に興味深かった。
続いて2階の「精品庁」に飛び込み、呆然とした。名品が目白押しなのだ。いや、中国の博物館のコレクションは、どこもすごい。しかし、展示施設のほうに問題があって(保存管理、防犯など)、なかなか名品を外に出せない。ところが、この天津博物館は、たとえば、見学者が通ると明るくなる照明などの最新設備が整っている。その結果、中国のほかの博物館では、めったに見ることのできない書画の名品が、目を疑うほど、オモテに出ている。ここは台湾故宮博物院か?と錯覚してしまうほどだ。
駆け足で覗いてまわった展示ケースのひとつに見覚えのある作品があって、思わず、足が止まった。紺地に金泥、彩色を加え、農村を舞台に繰り広げられる祭礼の様子を描いた不思議な図巻である(万笏朝天図巻)。2003年に千葉市美術館で行われた『天津市芸術博物館展』で見た。今もネット上に残っている展覧会のポスターは、この作品をアレンジしたものである。
天津は、戯劇博物館も、やはり駆け足になってしまった。一般の観光客ならあれで十分だろうけど、私は、もっとゆっくり展示を見たかった。加藤徹さんの著書『京劇』や、早大演劇博物館の『京劇資料展』(2005年)で覚えた名優たちの写真もあったのに。
このほか、天津には、義和団紀念館や梁啓超紀念館などの博物館もあるらしい。次回は、もう少しゆっくりと。東アジア近代史に肩入れ気味の私としては、李鴻章や袁世凱ゆかりの地も、往事を偲んでまわってみたいな。
http://www.tjbwg.com/index.htm
天津は、初め予定に入っていなかったのだが、気がついたら1泊することになっていた。しかし、実質的な滞在時間は半日である。にもかかわらず、行きたいところを、たくさん注文してしまったので、ガイドさんは、時間配分に苦慮していた。
天津博物館は、2004年に竣工した新しい博物館である。その建物を目の前にして、私は「あっ」と思い出した。新建築社の雑誌『JA(ジェイエー)』が「中国に建つ日本人建築家の作品」を特集したとき、この作品を見たことがあると。帰国後、調べてみたら、やはりそうで、川口衛構造設計事務所と高松伸建築設計事務所の仕事である。日本建築家協会の高松伸さんのページでも、彼の代表作に挙げられている。首を水平に伸ばした白鳥の姿をイメージさせる建築で、すばらしく美しい。展示品は20万点に及び、一般的な書画・骨董のほか、近代史をテーマにした展示室「中華百年看天津」もあるという。
この超級博物館の見学に許された時間は30分。とりあえず、私は3階の近代史展示室に入った。長い歴史を誇りたがる中国の博物館にあって、近代に焦点を合わせた展示室というのは、珍しい。天津という都市ならでは、の感がある。どうしたって、共産党の宣伝色は抜け切れないが、しかし、「租界」や「日本軍国主義」の時代に対する見方は、なかなか冷静で中立的である。非常に興味深かった。
続いて2階の「精品庁」に飛び込み、呆然とした。名品が目白押しなのだ。いや、中国の博物館のコレクションは、どこもすごい。しかし、展示施設のほうに問題があって(保存管理、防犯など)、なかなか名品を外に出せない。ところが、この天津博物館は、たとえば、見学者が通ると明るくなる照明などの最新設備が整っている。その結果、中国のほかの博物館では、めったに見ることのできない書画の名品が、目を疑うほど、オモテに出ている。ここは台湾故宮博物院か?と錯覚してしまうほどだ。
駆け足で覗いてまわった展示ケースのひとつに見覚えのある作品があって、思わず、足が止まった。紺地に金泥、彩色を加え、農村を舞台に繰り広げられる祭礼の様子を描いた不思議な図巻である(万笏朝天図巻)。2003年に千葉市美術館で行われた『天津市芸術博物館展』で見た。今もネット上に残っている展覧会のポスターは、この作品をアレンジしたものである。
天津は、戯劇博物館も、やはり駆け足になってしまった。一般の観光客ならあれで十分だろうけど、私は、もっとゆっくり展示を見たかった。加藤徹さんの著書『京劇』や、早大演劇博物館の『京劇資料展』(2005年)で覚えた名優たちの写真もあったのに。
このほか、天津には、義和団紀念館や梁啓超紀念館などの博物館もあるらしい。次回は、もう少しゆっくりと。東アジア近代史に肩入れ気味の私としては、李鴻章や袁世凱ゆかりの地も、往事を偲んでまわってみたいな。