付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ずっと、そこにいるよ。」 早見裕司

2009-04-21 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 古びた図書館の書庫の一角に、文芸部の部室が設けられている。
 部室を来訪した男は文芸部員たちに1枚の写真を差し出して何が写っているか訊ねるが、それはこの図書館の書庫の写真だった……。

 家族の死をきっかけに、人に見えないものを視たり聞いたりすることができるようになった水淵季里の物語で『夏の鬼・その他の鬼』の続編。高校2年生になった季里が出会った6つの物語。

 『夏の鬼・その他の鬼』がエニックスEXノベルズからソフトカバーで2000年12月に刊行、その続編の『精霊海流』がソノラマ文庫から2004年3月。そして2007年12月の『となりのウチナーンチュ』を挟んで、理論社からハードカバーで2008年6月。原型となったアニメージュ文庫版は1988年だから、実に20年以上判型を変え、出版社を変えて水淵季里シリーズは続いているわけで、作者もエライが追いかけ続ける読者も誉めて欲しい。

 あくまで都市奇譚であり季里の物語なので、背筋も凍る学園ホラーとか、邪霊と戦うバトルアクションを期待すると拍子抜けだし、ラブコメとかスポ根の要素だって微塵もない。かといって、普通の青春小説のつもりで読むと、誰もいないのに足音だけするとか写真に少女が写るとか不思議な現象を誰もが自然に受け止めていて調子が狂うかも知れません。この静かで不思議な空気を味わい、最後に少しホッとするというのがこの作品の楽しみ方ではないでしょうか。
 ただし、これだけ高校生男女がいて色気のある話がこれっぽっちも出ないので、はっきり言って幼なじみにして同居人の相沢恭司は空気みたいなものです。生徒を見守るだけの森本先生も同様で、実は季里以外は、反省することの多いアネゴ肌の美砂と名前を口に出すとどこからともなく現れる理系の陣内の2人がいればレギュラーは事足りるという感じ。
 保健室の宇崎先生がいつの間にか土岐先生になっていたのも気になります。他のメンバーはそのままなだけに、異動はない方が良かったですね。

【ずっと、そこにいるよ。】【早見裕司】【ミルクコーヒー】【傘】【図書館】【水淵季里】【三日月】

コメント (7)    この記事についてブログを書く
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7 コメント

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偉いです (早見慎司)
2020-04-12 20:00:10
いまさら、と言われるでしょうが、発見した作者です。って、どれだけ自分が好きなんだか。
「夏街道」が88年の作品ですから、32年が経っているわけで、我ながらしつこく書いているなあ……と思います。
ご感想、ありがとうございました。恭司の存在が希薄になっている問題は、私自身、解決策が浮かびません。まだ。
「まだ、ってまだ書くのかよ」、と言われそうですが、いまは、このシリーズのような刺激の淡い本は、なかなか出せないのが現状です。そうなると、天邪鬼になって、なんとか続けたい、と思うのです。ごめんなさいね。
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待ってます! (かんりにん)
2020-04-13 21:03:38
関係なさそうな話をふと手にとって、そこで見知ったキャラをみつける嬉しさを味わえる作品が大好きです。
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ありがとうございます (早見慎司)
2020-04-14 09:03:38
分かりました。どこまでご期待に添えるか分かりませんが、今後も、「少女」にこだわって、書いて行きます。というか、それしか書けないんですが。
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完結編 (早見慎司)
2021-05-24 10:55:41
 たびたびすみません。この度、水淵季里最後の事件『神の冬、花の春』を、URLのブログ(公式ブログになります)に連載、開始しました。
 季里の物語は、現状、商業ベースには乗らないので、いろいろ考えた末の決断です。お気が向かれましたら、のぞきに来てやって下さい。
 なお、ブログの仕様上、原稿は、新しい順に表示されてしまいます。つまり、発端がどんどん後ろへ行くシステムです。コピー&ペーストOKなので、メモ帳に貼り付けるなどして、ご対応下さい。
 この作品は、「夏街道」「水路の夢」と続く、3部作の完結編です。今後のことは考えず、とりあえずの最終話を書いておこう、と思いました。
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読ませていただきます! (かんりにん)
2021-05-27 09:31:53
喜んで読ませていただきます。
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カクヨムでも (早見慎司)
2021-06-03 17:57:45
「神の冬、花の春」は、投稿サイト「カクヨム」でも読めるようになりました。こちらの方が、時系列順に並ぶ(はず)ので、読みやすいかも知れません。ご参考まで。
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カクヨム (かんりにん)
2021-06-04 08:59:40
読ませてもらってます!
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