many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

私は貴兄(あなた)のオモチャなの

2011-03-09 21:02:50 | 岡崎京子
岡崎京子 1995年 祥伝社
ヲカザキの短編集です。
コンテンツは、
「Melody でっかい恋のメロディ」
「Over the rainbow 虹の彼方に」
「I wanna be your dog 私は貴兄のオモチャなの」
「Count three 3つ数えろ」
帯の背に「超強力傑作集」ってあるけど、実際なかなか強力な4本です。
体力ないときに読むと、負けるかもって感じです。
(この場合の「負ける」は、ドカっと盛りのある食いもんとかに挑んで、「もうダメ、ゴメンナサイ、残します」とする感じをいいます。)
どれもズッシリとしてて、読んでるとおもわず「痛テテ」と感じるときがあります。
そのときどきによって、胸だったり胃だったり頭だったりですが、鈍痛ですね、スッキリしません。なにか水の中に沈めようとしても浮かんできちゃうボールのように、ひっかかって残るものがあります。
なかでは「虹の彼方に」が好きかな。ぐちゃぐちゃな話なんだけど。
どれくらいぐちゃぐちゃか引用しちゃうと、
>谷くんは由紀ちゃんの元彼氏で 現彼氏でもある
>由紀ちゃんは谷君とつき合ってたけど シュンジ氏にのりかえて
>シュンジ氏はフタマタしつつ 結局ほかの女と結婚して
>また由紀ちゃんは元の谷君のとこにもどったのだ
>私と谷君は由紀ちゃんと谷君がつき合う前から だちで兄妹みたく仲良かった
>谷君を由紀ちゃんが捨てた時 谷君は荒れてついあたしとまでHしちゃったのだ
>谷君がこっそりあたしのこと好きだった時 あたしはマエダ君が実は好きで マエダ君はみかちゃんに夢中
>そして谷君が由紀ちゃんとつき合って みかちゃんはシンちゃんに夢中になって 捨てられたマエダ君とあたしはつき合った
>いりくんでるめんどくさい複雑な でもよくありがちなあたしたちの青春
ということで、主人公のあたしこと花田花ちゃんは、みんなに勝手な話ばっかりされて、自分はツラくても泣き方も忘れちゃった、っていう一番割り食ってるタイプです。
でも、最後に、虹の彼方に向かって走ろー!みたいなシーンがあるんで、わりと救いのある話です。このなかではね。

ちなみに、絵についていうと、このへんから明らかに「ハナの穴」が特徴的になってきてます。
(ひとの顔を描くとき、鼻を「く」の字にしない。ハナの穴を描いて女性を可愛く表現するのとかは、けっこう難しい。その第一人者は、江口寿史。)

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うたかたの日々

2011-02-28 16:39:01 | 岡崎京子
岡崎京子 2003年 宝島社
『CUTiE』1994年8月号~1995年7月号に連載されてたらしいですが、2003年に単行本が出るまで、その存在は知りませんでした。
原作は、ボリス・ヴィアンの小説らしいけど、私は読んだことない。
だいたい私はヴィアンを読んでない。「北京の秋」というのを買ったことがあるが、結局読まないで、どっか押入れに放り込んだままになってるはず。
んで、予備知識なしで、このマンガ読んだときは、アタマんなかクエスチョンマークが浮かび回っちゃいました。
いまだに、そうだって言えば、そうなんだけど。謎めいた話なんで。
22歳の金持ちで何もしていないコランが、美人のクロエと結婚するんだけど、やがてクロエは肺の中に睡蓮が巣食う奇病にかかっちゃう。
コランの友人のシックは、パルトル(これがどんな人物なのかはいまいちわからないが熱狂的なマニアが多い)の著作を集めることに夢中で、すべての金を使ってしまっている。
と、登場人物がみんな不幸になってく話なんだけど、珍しくヲカザキが「あとがき」もなんも書いてないもんだから、いったいどうしてこれをマンガとして描こうと思ったのか謎なんである。

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エンド・オブ・ザ・ワールド

2011-01-23 20:48:38 | 岡崎京子
岡崎京子 1994年 祥伝社
ヲカザキの短編集。このころから、短編も、だんだんと、どんどんと、なかみがヘビーになっていきます。
「エンド・オブ・ザ・ワールド」
45ページ。金持ちの父親の娘であるモリーと、新しい母親のつれてきた息子イースが、ふたりで両親を撃ち殺して逃亡する。家から逃げ出した車を始末して以降、カネもないし、行くあてもなく旅する話。
「VAMPS」
44ページ。会社をやめて小説を書いている立花正平は、祖父の残した屋敷に住んでいるけど、ひとりでは広すぎるので、空室をひとに貸すことにする。そこへやってきた若草一家はトシをとらない母と三姉妹で、正平は三女のさくらと恋におちる話。
「ひまわり」
16ページ。小学6年生の青木ジュンイチくんの夏休みのある日の一こま。同級生と学校のプールに行こうとしたところで、うちで経営するアパートの元住人で19歳のハルミさんに呼びとめられる。そこでショックな話を打ち明けられて、結局プールはさぼることにしちゃうんだけど、ラスト1ページがけっこう好き。短くても完結してる一篇。
「水の中の小さな太陽」
46ページ。
なんで短編のページ数いちいち数え上げてるかっていうと、あとがきでヲカザキが、「エンド・オブ・ザ・ワールド」は読み切り45ページというのが初めてで、テンパって描いてたって語ってて、かたや「水の中の小さな太陽」は、もっと長くなるはずのハナシで、40ページの話を考えてると何故かエピソードがぎゅうぎゅうになって、12ページ分とか20ページ分削って描くことになるんでキツイ、と語ってるから。
物語は、ミーナこと美奈子って高校三年の女の子が主人公で、見た目優等生なんだが、ウラではワルい顔をもってて、学校の先生の弱み握って脅してたりする。ときどき、彼女が子どものころ溺れかけたエピソードが挟まるのがタイトルの意味だけど、それにしても、このころから短編でも、愛だの恋だのの行く末として暴力的な表現になる展開が増えてるよーな気がする。「pink」のころの明るさは、無いなー。ちなみに物語は当然のごとくデッドエンド(?)を迎える。
「乙女ちゃん」
16ページ。タイトルは、市役所を定年退職して、毎日が日曜日になった父親が、スカートをはくようになったのを、近所のひとがそう呼んでいるってとこからきてる。主人公はその娘、28歳のOL。べつに不幸せぢゃないんだけど、家族のこととか気になっちゃって、なかなか結婚する気になれない、って登場人物の心理、ときどきヲカザキ作品に出てきますね。

それにしても、最近マンガばっか読んでんなぁ。たまには活字も読まねば。
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マジック・ポイント

2011-01-11 19:06:55 | 岡崎京子
岡崎京子・大原まり子〈原作〉 1993年 祥伝社
原作者がほかのひとという、わりとめずらしい岡崎京子のマンガ。
タイトルのマジックポイントは、ロールプレイングゲームとかでよくある魔法を使える力、この作品では、魅力指数=モテる力。
主人公のちえみは、25歳のファッション誌編集者で、仕事ではいつも便利屋あつかいされちゃってて、一応彼氏(親と離れて暮らしたことのない男)もいるけど、なんかあんまりモテない。
っていうか、彼女以外の一族が、とにかくモテる。
72歳のおばあちゃんは美人で近所の商店街のご隠居がたのアイドル。
47歳の母は、浮気した夫ととっとと離婚したんだけど、保険外交員として8ケタを稼ぐ女。
19歳の妹が、いちばんマジックポイント高くて、ヴァンプ系の美人でモデル。男友達を妹に会わすと、みんなホレてそっちへなびいてしまう。
前の彼氏であるライター兼カメラマンも妹にとられてしまった。(ヲカザキのマンガにはときどき姉妹でとったとられたが出てくる。)
っつーことで、いろいろあるけど、母親からはハッキリと欠点を指摘され、そこを直せばアンタは魅力的になれると言われる。(1)ものごとを明るく見ること (2)結婚すれば何かが変わるという期待を捨てること って鋭くて正確な意見なんだけど、主人公は「ムリだわ…」って言う。

原作者の大原まり子さんというのは、「SF界の秘宝」(岡崎のあとがきによる表現。帯には「SF界の至宝」ってあるんだけど)ってことらしいんですが、私は読んだことないです。

どーでもいーけど、原作がほかのひとの岡崎京子作品で、どうしてももう一回読みたいんだけど、単行本化されないのがあるんだよね。
狩撫麻礼原作の「ハイリスク」っていうの。影がない男と出会う話。
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リバーズ・エッジ

2011-01-04 20:34:18 | 岡崎京子
岡崎京子 1994年 宝島社
岡崎京子の、私が持ってるのを、なるべく出版順に、これまで並べてきたんだけど。
ここへきて、ちょっと止まってしまった。
なぜなら、いよいよ『リバーズ・エッジ』の番になっちゃったからだ。
これについて語る言葉を、しばらく考えてたんだけど、やっぱ私は持たない。
(いままで他のものもそうなんだけど、意外と「好きな本」だからって、ふつうより雄弁になれるわけでもない。自分が好きなものについて書くのは難しいねえ。)
この作品は、ヲカザキの最高傑作として挙げられることが多いと思う。
それだけぢゃなくて、日本のマンガの行きついた頂点とさえ言われることだってある。
私がそのことに気がついたのは(っていうのは、自分以外の人の評価も高いってことを認識したのは)遅いんだけどね。
たとえば『文藝別冊 総特集 岡崎京子』(2002年河出書房新社)に「岡崎京子作品徹底レヴュー」って章があるんだけど(これは私がヲカザキ作品を年代順に並べるときに役立ってます。)、そこに、こうあります。
コミックのジャンルすら超える正真正銘の名品。少なくともこの一〇年、日本の現代文学にはこの作品を超えるような収穫があったろうか?(略)「こういうのにあげれば芥川賞も落ち目にならないのに」と関川夏央が皮肉れば(略)石原慎太郎東京都知事は「近頃の新人作家なんか目じゃねぇや」と太鼓判(略)
と、そういうことです。私もそう思います。
(いわゆる)文学はマンガよりエライ、マンガはくだらない、と思ってるひとは、読んだらいいと思いますが、まあそもそもそういうひとに理解できるかどうかはわかんないけど。
最初読んだときは、なんか勢いに任せたまんまだったけど、何回も読むと、けっこう深い。

河口にほど近く流れも淀んだ河のちかくの学校に通う高校生たちが主人公。
若草ハルナさんは、同級生の観音崎くんという彼氏がいるんだけど、最近ちょっと冷めてる感じがしてる。
その観音崎くんはけっこうイジメっ子で、山田くんというキレイな顔した男の子をいじめてんだけど、若草ハルナさんは山田くんのことが気になってる。
若草ハルナさんは、いじめられた山田くんを助けてあげたことがあって、そのときの御礼に山田くんから秘密の宝物を見せられる。宝物っていうのは、その河原の草むらんなかにある、誰だかわかんない死体。この死体をみるたび勇気がわくんだっていうのが山田くんの言いぶん。
もうひとり、その死体の存在を知っているのが一学年下の吉川こずえさん。吉川こずえさんも、この死体をみるたびに世のなかに対してザマーミロって思う、すべての虚飾をどけた真実がここにあると思ってるタイプ。
吉川こずえさんはモデルで、小さいときから働いて家族を養ってた。すごい量を食べるだけ食べても、直後にほとんど吐くことで、モデル体型を維持している。彼女は保健室で寝不足を解消することがあるんだけど、そこで知り合った若草ハルナさんに興味を持っている。
山田くんは同性愛者で、でもダミーで田島カンナさんという女の子と付き合ってることにしてる。
田島カンナさんは、かっこいい山田くんを彼氏にしてることがうれしいんだけど、山田くんがホントに自分のこと好きなのか不安に思ってる。そして山田くんに近づいている若草ハルナさんに憎しみをいだく。
ところで、小山ルミさんは、若草ハルナさんの友だちのひとりなんだけど、誰とでもやっちゃうタイプで、観音崎くんともたびたび遊んでる。
っつーことで、狭い高校生同士のなかでの、うまくかみあわない愛憎がからみあって、悲劇が起きるんだけど。
最初読んだときは、ごく普通である主人公の若草ハルナさんが、ちょっとヘンな山田くんや吉川こずえさんに関わったばっかりに、数奇な運命に巻き込まれた展開と思ったんだけど。
読み返したら、どうもそうぢゃない。若草ハルナさんは、ちょっと普通ぢゃない何かを持っている。だから山田くんや吉川こずえさんを惹きつけちゃうし、死体を見ても平気なんである。
そこらへんを、最後のほうで「大丈夫よ あの人は何でも 関係ないんだもん」と吉川こずえさんに喝破されちゃう。
彼女の不思議な資質は何なのか。そんな彼女の感情が揺れ動くポイントがいくつかあるんだけど、それは何なのか。最後に彼女が泣くのはどうしてなのか。読み返すと、そんなことが、すごく気になる。
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