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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

愛の生活

2010-11-18 21:31:42 | 岡崎京子
岡崎京子 1993年 角川書店ヤングロゼコミックスデラックス
きのうオザケンだったので、きょう岡崎京子。
ヲカザキの小沢健二への傾倒ぶりは、なんかの短編で(なんだっけ?)「オザケンのいう“愛し愛されて生きるのさ”って、こういう感じ?っていうの」とか登場人物のセリフで語らせてたりしてるくらい。
んでも、この作品は、重いよ。
ブログ書く為に、基本的には発行順に、岡崎京子をふりかえってんだけど、このあたりから、グッと重くなる。
好きになるって何だ? 家族って何だ? とかは、このちょっと前からジワジワと問題視されてきてんだけど、このマンガは、いっそうディープになってきてます。
「愛の生活」ってタイトルは、なんか一見陳腐ぽくって、B級ドラマみたいな響きしてますが、「あとがき」でヲカザキが自らうまく説明しています。
この作品のタイトルは「愛の生活」とありますが、正確には「愛したいけれど愛せない人達の生活」、あるいは「愛されたいけど愛されない人達の生活」、とするべきだったでしょう。何故ならここには誰一人としてきちんと他人を愛する人間が出てこないのですから。彼ら、彼女らは無い物ねだりばかりしてうろうろ右往左往して途方にくれるばかりです。
登場人物は、いっしょに住んでたOLにある日突然捨てられて夜逃げした、デザイン系学校に通う林屋三太くんが、一応主人公というか語り部。
同じガッコにいて、家にいないこと多いからアタシの部屋に転がり込んできていいよと突如申し出をするのが、桜田(妹)ことじゅんこちゃん、彼女はすぐ暴力ふるう男に飼われてたりする。
同じとこ住んでんだけど、きっちり生活は分けようという桜田(兄)がいて、桜田(妹)は兄のことが好きだったりする。
三太君に岡惚れする女とか、三太君を捨てたOLが結婚を前にして迷ったりとか、桜田(兄)の昔の恋人で今は他のひとと結婚してる女が三太君を車でひいちゃったりとか、いろいろあってグジャグジャ。
愛されたい欲望がうずまいちゃったり、愛したいけどその方法がわからなかったり、単純なタイトルとは裏腹に、全然ハッピーぢゃない物語です。
真っ白だったり真っ黒だったりするコマのなかに、ポツンとシリアスな言葉が浮かびあがるような技法も、急に目立ってきたような気がします。
ちなみに、物語の主題と関係なくて、私が好きなフレーズは、
>思うんだけど 人間て さわってほしくないモノ ふれられたくないコトにふれられると 電気を出すんだ
って、やつ。何気ないつもりで聞いた質問が、相手の痛いとこ・過去を突いちゃったときの、ピリピリって感じを指します。 
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危険な二人

2010-11-04 20:49:12 | 岡崎京子
岡崎京子 1992年 角川書店
ヤングロゼ・コミックスって、「ヤングロゼ」は読んだことないけど。
ルームメイトの“セーコちゃん”と“ヨーコちゃん”二人の物語。
岡崎マンガには、けっこう女友達同士の話ってのはあるんだけど、初期のころの「くちびるから散弾銃」とかの他愛ないおしゃべりってのと違って、このころから、だんだん関係がややこしくて、ディープな感じの展開が目立ってくるような気がします。
舞台は80年代の終わったころかな、例によって、バブルの夢は残ってるかもしれないけど、そろそろヤバイ喪失感に気付き始めちゃってると言っていいころです。
主人公二人の性格は当然違ってて、引用すると
「あたしセイコ 好きな花はピンクのばら
 あこがれはマリー・アントワネット(略)
 「お菓子を食べればいいのに」っていってみたくてたまらない
 ああ でも本当は 小さな家に白いブランコ 午後のティー・タイム
 こいぬのよこにあなたがいてくれたら」
「あたしヨウコ なでしこが一番好き
 ソンケイするのはヤマノウチカズトヨの妻
 早くあなたのぬかみそくさい女房になりたくて(略)
 ああ でもやっぱ あこがれちゃうわ 外資系のバリバリOL」
というように寝言をぬかしてるんだけど、それぞれ理想と現実のギャップを自分なりにかかえてはいる。
ちなみに、物語の冒頭での設定は、二人の年齢は二十歳で、学生ということのようで。
で、二人とも「ステキなダーリンに出逢うこと」という夢があって、日々そういう活動に励んでるんだが。
なんせ、その時代のことなんで、友だちのつてで出たパーティで男を見つけては、「ひさびさの上玉!! カモよ!!カモ!! ケーオー!!医学部!!末っ子!!独り暮らし!!BMW!! 親は年寄りで軽井沢別荘つき!!」とかいうとこにポイントを置いてたりすんだけど。
全然どうでもいいことだけど、ケータイとかメールとかない時代の話はいいね、やっぱそのころのコミュニケーションの展開のほうが、私なんかは読んでてシックリするものがある。
で、まあいろいろあって、見た目派手でボーイフレンドは星の数なんだけど、実は自分だけの「のっぽのサリー」を求めている乙女チックなセーコちゃんが、ついに見つけたと思ったサリーは、ヌカミソかき回すのが日課で、男のひととフツーに話せないんだけど、男好きのする容姿してるせいでいろんな目にあっちゃって、本人の意思とは裏腹に水商売の才能があるヨーコちゃんの、昔の男だったりする。グチャグチャした展開。
でも、「もう死ぬっきゃない」みたいな電話してきたヨーコちゃんのとこへ、セーコちゃんが駆けつけると、部屋にひとりでいるヨーコちゃんが「首つろうとしたら いいハリがなくて ダメね 最近の日本の住宅って」と言ったりする、こーゆーどうでもいいようなとこで、セリフがツボにはまったりするんで、ヘビーな展開でも読まずにはいられません、私。
「I ダーリンを探せ!」「II でっかい恋の物語。セーコちゃん篇」「III ウェディング・ベルは一度だけ?」の3章から成ってますが、後半では、未婚の母になったヨーコちゃんの娘を、セーコちゃんが「別にいいじゃん 別にパパとママじゃなくても ママが二人いてもいいじゃん!!」と言って、二人で育てます。うーん、やっぱ意外とディープだなぁ。

ちなみに、短編集『チワワちゃん』に入ってる『夏の思い出』って短編にも、ヨーコちゃんとセーコちゃんのたくましい冒険話があります。こっちは無条件にア・カルイ展開。
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東京ガールズブラボー

2010-10-20 22:01:58 | 岡崎京子
岡崎京子 1993年 JICC出版局 上・下巻
これは、好きです。岡崎京子の長編。
連載は月刊CUTIE 90年12月号から92年12月号の、全25回なんだけど、舞台は“胸キュンのアーリー80'S”。
ストーリーはあってないようなもんで、北海道から、親の離婚を機に、あこがれの東京に出てきた、主人公の女子高生が、波乱万丈の毎日を繰り広げるんだけど。
当然いきなり舞い上がった勢いで、停学くらったり、無断外泊朝帰りして外出禁止くらったり、突っ走りたい欲望はスパークしてる一方、思うようにならなくてモンモンとしてたりします。

語るの難しいから、帯から引いてみますか、
上巻が、
>YMO、ツバキ・ハウス、ピテカントロプス。ニューウェイブが輝いていた80年代初めのTOKYO。
>北海道からやってきた女子高生・金田サカエが繰りひろげる、ちょっぴりアナーキーで切ないオシャレな青春ストーリー!!
下巻が、
>いよいよ完結編を迎え、80年代初頭のトウキョーを疾走するお調子者高校生・金田サカエの運命や、いかに!?
>やたら明るい90年代の今、自意識過剰のニュー・ウェイブ・エイティーズが、なぜか不思議と新しい。
…なんのこっちゃ、わかりませんが、まあ、そんな感じです。(ちなみに、下巻の「今~が、新しい」は、コピーライターとして、絶対やってはいけないことだと、昔なにかの本で読んだ記憶があります。糸井だったか?)

80年代には、ふつうにガッコ行ってベンキョしてただけの私なんで、いまひとつ分からない時代の空気とか、固有名詞を含む単語がありますが。
とにかくハイテンションで突き抜けるような勢いのあるマンガなんで、私なんかは、体調悪いときはついてけなくて、読むのがしんどかったりします。

長編とはいっても、岡崎京子によくある、短い1話(最初は12ページ、後半は14ページかな)ずつの連なり。
そのチャプターを挙げてってみても、雰囲気わかるかもしれませんが。
1 サカエちゃんがテクノポリスTOKIOにやってきたよ
2 「ビブラストーン」じゃなくて「ビブラトーン」だったあの頃
3 それにしても日曜日の6時半のサザエさんはいつまで続くのだろう?
4 原宿プラザでスシ・イヤリングをした3人の女の子とすれちがった
5 ロンドンナイトに行く時はDEPのスーパーハードジェルで髪の毛を立たせよう
6 ツバキには文化服装学園のコがゴハンを食べにタダで来てたよ
7 「恋の山手線」という曲を歌ったのはだれ?「恋のメキシカン・ロック」を歌ったのは?
8 東京タワーが灯るしゅんかんに願い事をかけるとかなう気がする
9 PARTY
10 サカエちゃん、自己を守るために詭弁を弄する
11 恋のライバル・丸玉さんはパラノイアックでパセティック
12 胸のトキメキはリズム・ボックスのリズム
13 恋はまるで小さな嵐、でも気のせいでした
14 「ヴァルネラビリティ」とは何のこと?
15 夜の学校に行く/そのためにたけしのオールナイトニッポンを聞きのがす
16 でも、一番可愛そうなのは文化屋の赤いくつ下をはいていたのび太くん
17 サカエちゃん、ちょっとだけメディアの女王の夢を見る
18 サカエちゃん、デビューして有名になって「徹子の部屋」に出る(はずが)
19 トレーシー・ソーンのいた「マリン・ガールズ」はチェリー・レッド・レーベルでした。
20 のび太君、とりかえしのつかない事を言う(N.Wの男の子は情ない)
21 池袋の「ビッグ・アップル」でダンス・ダンス・ダンス
22 100万円は一万円が100枚(目ざせ!印税生活!!)
23 ビボーは女の宝、または丸玉さん身体改造する
24 マクドナルドは時給450円ノーパンギャルなら時給2500円
25 終りの始まりの時代の終りまたは、さよなら東京
…やっぱ、よくわからんな。

ちなみに登場人物の「金田サカエ」、「オシャレバカ女」とか自称してますが、岡崎マンガのほかの作品にも出てきます。(友達の「ミヤちゃん」「なっちゃん」も。『くちびるから散弾銃』参照。)
これは、べつに同一人物ぢゃなくて(ないだろうな?)、要は、ビンボーしてもオシャレに散財せずにいられなかったり、自分のことしか考えてなくてワガママ言って周りを振りまわしてたり、しょーらいのユメは外人になることとかバカ言ったり、っていうバカ女キャラの記号が「サカエ」なんだと思います。落語で八五郎とか与太郎ってのが、毎度どの噺にも出てくるけど、それは同一人物ぢゃなくて、ひとつのわかりやすいキャラ設定ってのと一緒で。

で、ヲカザキの本の「あとがき」は、いつも面白いんですが、この下巻の巻末は、なんと浅田彰との電話対談です。油断ならない奥の深さがあるなー。

どーでもいーんだけど、ひさしぶりに読み返してたら、「キグーだね」とか「ゲンソーがある」とか「カンドーとコーフン」とか、私自身もときどき書いちゃう単語のつづり(私は現代における言文一致体だと思ってるが)は、このへんの影響かな、と思った。(基本は江口寿史なんだけどね。)
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ハッピィ・ハウス

2010-10-13 20:36:47 | 岡崎京子
岡崎京子 平成4年 主婦と生活社 GIGA COMICS DX(上・下巻)
(いつものことだけど、岡崎京子に関しては、なんの脈絡もなく、採りあげるんだな。)
だいぶ前のことだけど、当時上下2巻同時に出た岡崎京子のマンガ。
「コミック・ギガ」ってのは読んだことないんで、私は単行本手にとって初めて読んだ。
テレビディレクターと女優の夫婦の家庭なんだけど、ある日お父さんが「しばらくの間 父さんは 家族をやめたいんだ」と宣言して、解散状態になっちゃう。
主人公は、13歳の娘・るみ子で、親の勝手さ加減に腹を立てて、自立するべく家族を閉め出したり、家出を試みたりする。
岡崎のあとがきは、いつも面白いけど、この本のあとがきには、
「家族」という言葉の強制する、強引な“ぬくぬくとあたたかいしあわせ”のイメエジ。そのイメエジが、サイズの合わない靴のように、私にはきゅうくつでした。
なんて、書いてあります。
そんな家族ってもんに向かって、勢いのまま、バッカヤローって叫んで書いたみたいな感じ。明るくていいですけどね。

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カトゥーンズ☆CARTOONS☆

2010-09-22 20:30:19 | 岡崎京子
岡崎京子 平成4年 角川書店
帯に「24の終わらない物語」とありますが、1話6ページの全部で24話のマンガです。
前の物語の最後のコマが、つぎの物語の最初のコマとして引き継がれていきます。
前の物語の登場人物が、つぎの物語の登場人物と、そこですれ違ってるってのが基本的なつくり。
で、最後の話が、最初の話に戻ってきて、大団円。
最初の話ってのが、縦笛のテストがいやで、神様に現実逃避のお願いをしたら、本のなかに入り込んでしまった女の子の話。
っていうと、なんのこっちゃ?とわからないだろうけど、話があっち飛び・こっち飛びしつつも、楽しく読める一冊ではあります。
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