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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集

2016-01-28 22:00:36 | 村上春樹
村上春樹 2015年 文藝春秋
村上さんの最新の紀行文集。
買ったのは去年11月ころだったかな。ぐずぐずしてて読み終わったのは年が明けてからになったが。
発表時期も媒体もばらばらなのを集めたもの、意外と短いものもある。
日本航空の機内誌に連載してたってのは、知らなかった。全日空派ってのもあるけど、ファーストクラスには乗らんからね、私は。
タイトルは、ラオスに行くのに乗り継ぎでハノイを経由したとき、ヴェトナム人に問われた言葉だという。
それに対して、村上さんは本文のなかで、
>でもそんなことを訊かれても、僕には答えようがない。だって、その何かを探すために、これからラオスまで行こうとしているわけなのだから。それがそもそも、旅行というものではないか。
と答えている。
ガイドブックや事前に観たことのある映像なんかを追体験するために出かけてく人間が多いご時世に偉いものだ、旅行に対するそのスタンス。
しかし、なんでラオス行こうなんて思い立つかね、ふしぎだ。
村上春樹さんというひとは、なんか内に籠っているようなイメージが勝手に私にはあるんだが、本書なんか読むと、けっこうあちこち出かけてくのは好きらしい。
それも予定をビッチシ組んで、プランどおりめぐってくってタイプぢゃないらしい。
>「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」というのが僕の哲学(みたいなもの)である。
と言ってるくらいだし、それくらい悟りの境地にあれば、どんなトラブルにあっても、そのこと自体を楽しめるんぢゃないかと。
(仮にその場では困っても、あとからだったら楽しい思い出にできるんだろう。)
行き当たりばったりというほどのことぢゃないんだろうけど、そうやって偶然の出会いを楽しむことのできるスタンスだから、本書のあちこちに見られる、いい体験をしたときの感想は、たとえば次のようにとても好ましい響きがある。
>いったんカメラのレンズで切り取られてしまえば、(略)それは今目の前にあるものとはぜんぜん別のものになってしまうだろう。そこにある心持ちのようなものは、ほとんど消えてしまうことになるだろう。だから我々はそれをできるだけ長い時間をかけて自分の目で眺め、脳裏に刻み込むしかないのだ。そして記憶のはかない引き出しにしまい込んで、自分の力でどこかに持ち運ぶしかないのだ。
コンテンツは以下のとおり。
「チャールズ河畔の小径」 ボストン1(1995年)
「緑の苔と温泉のあるところ」 アイスランド(2004年)
「おいしいものが食べたい」 オレゴン州ポートランド・メイン州ポートランド(2008年)
「懐かしいふたつの島で」 ミコノス島・スペッツェス島(2011年)
「もしタイムマシーンがあったなら」 ニューヨークのジャズ・クラブ(2009年)
「シベリウスとカウリスマキを訪ねて」 フィンランド(2013年)
「大いなるメコン川の畔で」 ルアンプラバン(ラオス)(2014年)
「野球と鯨とドーナッツ」 ボストン2(2012年)
「白い道と赤いワイン」 トスカナ(イタリア)(2015年)
「漱石からくまモンまで」 熊本県(日本)(2015年)

コメント (1)
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