高島俊男 2005年 文春文庫版
「お言葉ですが…(6)」なんで、前に読んだ『キライなことば勢揃い』につづくもの、ことし6月ころに古本買い求めた。
初出は「週刊文春」の2000年から2001年ころだという、べつに読んでて古い感じはしないけどねえ、最後のほうに小泉総理大臣が靖国神社へ行くとか行かないとかって話題があって、そんな時代のことかあとか思ったが。
しかし、シリーズも6作目ということになると、やっぱちっと飽きてくるな私は、たぶん週刊誌で週にいちど数ページだけって形で読むなら毎回おもしろく読んで楽しみにするとは思うが。
タイトルの「イチレツランパン破裂して」っていうのは、数え歌だという、著者の幼少期に、近所の年上の女の子がお手玉とかまりつきするとき歌ってたんで、おぼえたという。
>イチレツランパン破裂して
>日露戦争はじまった
>さっさと逃げるはロシヤの兵
>死んでもつくすは日本の兵
>五万の兵をひきつれて
>六人のこしてみなごろし
>七月十日の戦いに
>ハルピンまでも攻めよせて
>クロバタキンの首をとり
>東郷元帥万々歳(略)(p.101)
って調子で1から10まで数えてくっていうんだけど、私は知らない、まあ昭和12年生まれのひとの子どものときの話ですからねえ、それにしても歌詞に時代を感じるなあ。
その歌詞の、ランパンは談判だろうが、イチレツってなんだろねって話なんだけど。
本シリーズには、各章のうしろに「あとからひとこと」ってのがつくことあって、雑誌で掲載されたあとに寄せられた意見なんかを単行本にするときに補足として載せたり、さらには単行本出たあとわかったことなんかを文庫化するときに注釈として載せたりするのがお決まりになってんだけど、この章については本文よりも「あとから~」のほうが分量が多い、っつーのが、なんかおもしろい。
歌に関するはなしでおもしろいのは、「背くらべ」の歌をどう歌うかって話題があって、「小生の大好きな、楽しい問題である」としている。
「はかってくれた背のたけ」のとこを、「せえのたけ」と歌うのはいかがなものか、歌詞集をみたら「せいのたけ」と書いてあったから、正しい発音で歌ってほしい、という新聞読者の投書について、
>(略)歌詞集に「せい」とあるから「せい」が正しい、と言うのは基本的まちがいである。この誤解は、表記は発音をあらわす、と思いこんでいることによる。(p.115)
と断ずる。「ぞうさん」だって発音するときゃ「ゾオサン」でしょうがとか。
これ、表記と発音とは別、っていう国語にとっての基本的ではあるが大問題を論じてんだけど、わかってないひとが多いって嘆くことになる。
>かな表記を発音表記と思うのは基本的まちがい、と上に言ったが、実際にはそう思っている人が多い。特に戦後、発音にちかづけた新かなづかいがおこなわれて以来、多くなったようだ。そうすると、口頭語が文字表記にひっぱられる、という現象がおこるのである。(略)毎度申すとおり、赤信号みんなでわたれば青になる、ことばの世界ではたいがい無知なほうが勝つ。(p.117-118)
ということになる、「計」とか「藝」とか「税」とか「礼」とか、「イ」ってカナ書いても、通常の発音はケエ、ゲエ、ゼエ、レエなんだけどねと。
ちなみに、べつのとこでも
>ことばは算数とちがって、みんながまちがえるとそれが正しくなる、という困った性格がある。(p.270)
って言ってたりする。
旧かなではハ行で活用してたり「ゑ」をつかうワ行で活用してたりしてわかりやすかったのが、みんなア行のウとかエとかで書いちゃうからかえってわかんなくなっちゃってるけど、もともとを知らないひとが多いからどーしよーもない、ということのようです。
井上ひさしさんなら、ことばのゆれってのは認めるしかないでしょと言うのかもしれないけど。
コンテンツは以下のとおり。和製英語として名高い「ナイター」をつくったのは誰だったのかなんて話もおもしろい。
数学のできない大学生
昔大学怠慢教授
数学のできない大学生
野口英世
この魚変だ
杏仁豆腐
踊り字の話
「ナイター」誕生
オリンピックの思い出
イチレツランパン破裂して
柿山伏
おーい、ねえちゃん
わが祖父
ゆーたやんけ
駆逐水雷
イチレツランパン破裂して
はかってくれた背のたけ
木くずと木屑
平手造酒の墓
木くずと木屑
白髪三千丈
船坂山や杉坂と
桜の幹の十字の詩
女はあおむけ男はうつぶせ?
勉強べやの名前
「全集」は全集か
天が落ちて来やしないか
お送りいただきますよう
奇怪な朝日文字
表外字の字体
手書き字と印刷字
李陵搏戦
「××一揆」
「あがり」と「くずれ」
「べきどめ」再説
天が落ちて来やしないか
赤鷲の謎
赤鷲の謎
「赤鷲」判明
ヨクにかがやく
ロード・オブ・ブレナム
ブレナム後話
植うる剣
「植うる剣」再論
ぼろぼろ
むめの大罪
ぼろぼろ
任侠ものがたり
不戦と恒久平和を誓った
ケッタクソの問題
正しい歴史認識
鳶魚の『夜明け前』批判
「お言葉ですが…(6)」なんで、前に読んだ『キライなことば勢揃い』につづくもの、ことし6月ころに古本買い求めた。
初出は「週刊文春」の2000年から2001年ころだという、べつに読んでて古い感じはしないけどねえ、最後のほうに小泉総理大臣が靖国神社へ行くとか行かないとかって話題があって、そんな時代のことかあとか思ったが。
しかし、シリーズも6作目ということになると、やっぱちっと飽きてくるな私は、たぶん週刊誌で週にいちど数ページだけって形で読むなら毎回おもしろく読んで楽しみにするとは思うが。
タイトルの「イチレツランパン破裂して」っていうのは、数え歌だという、著者の幼少期に、近所の年上の女の子がお手玉とかまりつきするとき歌ってたんで、おぼえたという。
>イチレツランパン破裂して
>日露戦争はじまった
>さっさと逃げるはロシヤの兵
>死んでもつくすは日本の兵
>五万の兵をひきつれて
>六人のこしてみなごろし
>七月十日の戦いに
>ハルピンまでも攻めよせて
>クロバタキンの首をとり
>東郷元帥万々歳(略)(p.101)
って調子で1から10まで数えてくっていうんだけど、私は知らない、まあ昭和12年生まれのひとの子どものときの話ですからねえ、それにしても歌詞に時代を感じるなあ。
その歌詞の、ランパンは談判だろうが、イチレツってなんだろねって話なんだけど。
本シリーズには、各章のうしろに「あとからひとこと」ってのがつくことあって、雑誌で掲載されたあとに寄せられた意見なんかを単行本にするときに補足として載せたり、さらには単行本出たあとわかったことなんかを文庫化するときに注釈として載せたりするのがお決まりになってんだけど、この章については本文よりも「あとから~」のほうが分量が多い、っつーのが、なんかおもしろい。
歌に関するはなしでおもしろいのは、「背くらべ」の歌をどう歌うかって話題があって、「小生の大好きな、楽しい問題である」としている。
「はかってくれた背のたけ」のとこを、「せえのたけ」と歌うのはいかがなものか、歌詞集をみたら「せいのたけ」と書いてあったから、正しい発音で歌ってほしい、という新聞読者の投書について、
>(略)歌詞集に「せい」とあるから「せい」が正しい、と言うのは基本的まちがいである。この誤解は、表記は発音をあらわす、と思いこんでいることによる。(p.115)
と断ずる。「ぞうさん」だって発音するときゃ「ゾオサン」でしょうがとか。
これ、表記と発音とは別、っていう国語にとっての基本的ではあるが大問題を論じてんだけど、わかってないひとが多いって嘆くことになる。
>かな表記を発音表記と思うのは基本的まちがい、と上に言ったが、実際にはそう思っている人が多い。特に戦後、発音にちかづけた新かなづかいがおこなわれて以来、多くなったようだ。そうすると、口頭語が文字表記にひっぱられる、という現象がおこるのである。(略)毎度申すとおり、赤信号みんなでわたれば青になる、ことばの世界ではたいがい無知なほうが勝つ。(p.117-118)
ということになる、「計」とか「藝」とか「税」とか「礼」とか、「イ」ってカナ書いても、通常の発音はケエ、ゲエ、ゼエ、レエなんだけどねと。
ちなみに、べつのとこでも
>ことばは算数とちがって、みんながまちがえるとそれが正しくなる、という困った性格がある。(p.270)
って言ってたりする。
旧かなではハ行で活用してたり「ゑ」をつかうワ行で活用してたりしてわかりやすかったのが、みんなア行のウとかエとかで書いちゃうからかえってわかんなくなっちゃってるけど、もともとを知らないひとが多いからどーしよーもない、ということのようです。
井上ひさしさんなら、ことばのゆれってのは認めるしかないでしょと言うのかもしれないけど。
コンテンツは以下のとおり。和製英語として名高い「ナイター」をつくったのは誰だったのかなんて話もおもしろい。
数学のできない大学生
昔大学怠慢教授
数学のできない大学生
野口英世
この魚変だ
杏仁豆腐
踊り字の話
「ナイター」誕生
オリンピックの思い出
イチレツランパン破裂して
柿山伏
おーい、ねえちゃん
わが祖父
ゆーたやんけ
駆逐水雷
イチレツランパン破裂して
はかってくれた背のたけ
木くずと木屑
平手造酒の墓
木くずと木屑
白髪三千丈
船坂山や杉坂と
桜の幹の十字の詩
女はあおむけ男はうつぶせ?
勉強べやの名前
「全集」は全集か
天が落ちて来やしないか
お送りいただきますよう
奇怪な朝日文字
表外字の字体
手書き字と印刷字
李陵搏戦
「××一揆」
「あがり」と「くずれ」
「べきどめ」再説
天が落ちて来やしないか
赤鷲の謎
赤鷲の謎
「赤鷲」判明
ヨクにかがやく
ロード・オブ・ブレナム
ブレナム後話
植うる剣
「植うる剣」再論
ぼろぼろ
むめの大罪
ぼろぼろ
任侠ものがたり
不戦と恒久平和を誓った
ケッタクソの問題
正しい歴史認識
鳶魚の『夜明け前』批判
