many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ボートの三人男

2014-10-10 20:45:01 | 読んだ本
ジェローム・K・ジェローム/丸谷才一訳 1976年・2010年改版 中公文庫版
最近読んだ本。
タイトルは聞いたことあったんだけど、読んだことなくて。
古本屋で、文庫の棚を見てたら、ふと目にとまったんで、買ってみた。
訳者が丸谷才一ってのが、またいいやね、なんて思って。
古典です、発表は1889年だって。原題は「Three Men in a Boat」。
三人の紳士、休息と気分転換が必要だなって感じたイギリス紳士が、テムズ河で船旅をしようと思い立った。
筆者のKと、友人のジョージとハリスである。
それぞれ船の旅には自信があるんだけど、いざ出かけようとすると、そう順調にはいかない。
漕いだり、帆を張ったりって船に関することもそうだけど、荷造りをしたり料理をしたりとかってことも、いちいち難儀する。
お湯を沸かそうと思ったら、湯沸しに我々がお茶を飲もうということを悟られてはダメだ、気づかれると絶対にお湯は沸かない、みたいな表現(いわゆるマーフィーの法則?)があちこちにあって、おもしろい。
三人が仲がいいのか悪いのかも、よくわかんない。
>いったい、こっちが働いているときに何もしないで他人が傍につっ立っているのを見ることほど、気持をイライラさせるものはない。
なんてフレーズにあるように、それぞれが口ではいっぱしの理屈と自慢を並べるんだけど、自分は働きたくない、あるいは自分がいちばん働いてるんだから、次はおまえらの番だ、みたいな主張をやりあう。
人間観察の妙があちこちにあって、
>かつて、一人の男がスイスの山に登って、ビール一杯と引換えなら世界を手渡してもいいと言った。しかしその男が、ビールを売っている小屋へやって来たとき、ものすごい喧嘩をはじめたそうである。ビール一瓶が五フランもするのはとんでもないと言って怒ったのだ。
みたいなこと、シレッと書かれてんの、おもしろい。
主人公たちだって、自分らが小さなボートに乗ってるときは、大きな船が来ても気づかないふりして行く手をわざとゆっくり航行して、相手を怒らすんだけど、自分たちがそういう大きくて速い船の側にまわると、小さなボートがジャマだと罵倒する。
まあ、舟の大小にかかわらず、河を舟でいくと、邪魔だと感じたものには悪口を浴びせるものらしい。
そのことは、
>河の空気には人間の品性を下落せしめる作用がある。あの船頭たちが不断だったらきっとそんな言葉を使ったことを後悔するような言葉を平気でやりとりしているのは、まったくこのためであろう、とぼくは考える。
と喝破している。
私も、いわゆる、クルマに乗ると性格変わる、タイプなので、分からんでもない。
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豚は太るか死ぬしかない

2014-10-08 21:45:48 | 読んだ本
ウォーレン・マーフィン/田村義進訳 昭和62年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
ひさしぶりに読み返してる「トレース・シリーズ」の第四弾。
原題は、「PIGS GET FAT」、そのまんまだね。
生命保険会社の調査員トレースに与えられた任務は、本拠地を離れたサンフランシスコでの調査。
多額の生命保険をかけて失踪した不動産屋にまつわる事件。
夫がいなくなったのに警察沙汰になるのを避けたがる妻なんだけど、やがて夫の死体は意外な場所で見つかる。
死体を発見しときながら当局への報告をしないで伏せちゃった、我らが主人公の対応がめずらしくて面白い。
ストーリーは、最後に「お、あー、そうか」と一瞬思わせる場所があって、推理小説らしいっていえばらしい。
どうでもいいけど、主人公のトレースが、パートナーのチコと意見交換してるときに、トレースがたまらず、
>スペンサー・シリーズの読みすぎじゃないの。スーザン・シルヴァマンみたいなしゃべり方をして
って言うところがある。
やっぱ、そうじゃん、スペンサーを意識してたんだなって、私なんかは思う。
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勝つための条件

2014-10-06 19:44:34 | 読んだ本
岡部幸雄 1994年 ブックマン社
今朝がた、台風が関東地方にやってきてしまったせいで、きょう予定していた乗馬練習は中止になってしまった。
しかたない。私はやる気だったんだけど、常識的にはムリでしょう。
二年前か三年前か忘れたけど、乗馬の厩舎って、意外と無造作に、手入れの道具とか以外にも、アシアテとかいろんなもの、ふだんは外に出してるんだけど、翌朝きてみたら全部フッ飛んでたって経験を思い出した(笑) 乗るとき使う台まで飛んでたからなあ。
さあ、それはいいとして、ぢゃあ、ウチのなかで本でも読むかと思って、せっかくだから(?)と、馬関係のものを今日は探してみたんだけど。
意外と持ってないんだよね、馬関係。
ということで、きょうのところは、これ。
これの元ネタは、スポーツ新聞だったか、専門誌だったか、なんか連載してたコラムがあって、それをまとめたものだったような気がするけど、記録も記憶もないや。
いろんなこと書いてあるけど、巻頭のカラー写真が、みんな海外での騎乗に関するものだってのが象徴的だ。
本書が出たのは、1994年、だから内容的にもビワハヤヒデで菊花賞勝ったときくらいまでのことなんだけど、でも当時から国際派だった岡部さんらしく、一章が海外チャレンジについて割かれてたりする。(単行本化にあたって、テーマにそって再編集したもの、のはず。)
競馬におけるジョッキーのすべきことみたいなことについてもおもしろいけど、いまは、凱旋門賞で日本馬が負けたばっかりだということもあって、改めて読んだ「あとがき」部分が興味深かった。
>日本産馬の海外遠征も、積極的に提唱していきたいもののひとつだ。僕の体験からいうと、その第一歩には牝馬が適しているようだ。牝馬は牡馬よりも、環境にたいする順応性がはるかにすぐれているからだ。牡馬であれば二、三か月かかるところを、牝馬であれば数週間で慣れる。
岡部さんのいってる牝馬はレベルが高いだろうけどなあ。(シンコウラブリイのレベル?)
Part-I 海外チャレンジから学ぶ
Part-II サラブレッドのデリカシー
Part-III ジョッキーの微妙
Part-IV 仕掛けどころ勝負どころ
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夜は終わらない

2014-10-02 21:48:53 | 読んだ本
星野智幸 2014年5月 講談社
最近読んだ本、最近でた小説。
これはおもしろい。
著者のほかのもの読んだことないけど。あまり予備知識なしで読んだんだけど。
おはなしのなかみは、まあ、アラビアンナイトです。
アラビアンナイトについては、児童書の抜粋版を少々読んだだけで、全容を知らずに大人になってしまった私。
小林恭二の「小説伝」を読んだときに、おお、すごい、こんなおもしろいこと考える人いるんだ、なんて思ってしまったんだけど、まあ、それはアラビアンナイト的手法であったわけで。
後年、岩波文庫でとおしで読みましたけどね。
要は物語の入れ子構造というか。
ひとつのおはなしが終わりそうになると、その登場人物が語り手となって、べつの物語を始めるという。
んで、本家の千夜一夜物語は、王様が聴き手でシェヘラザード姫が語り手で、次の日も続きがききたくなる物語を何日も続けてくんだけど。
本作は、聴き手が女性で、語り手が男性。おもしろい話をしないと殺しちゃうぞ、生きてる役割終わりだからな、って脅して話をすること強要する。
なんか異常な設定なんだけど、それがおもしろい。
で、ある男が、「これは、聞いてしまったら二度と帰れない物語なんだよ。」と断って、話を始めるあたりから、俄然おもしろくなってくる。
新しい本なんで、詳細はこれ以上書かないけど。
っていうか、正直いうと、あまりにむずかしいので、時間おいてもう一回くらい読まないと、正確な感想は言えないかもしれない。
ひとつ細かいことで興味深いのは、女主人公が料理をする場面があちこちあるんだけど、料理の詳細を書いてる小説なんかはいっぱいあるんで、それは驚かない、だけど、女性が肌のケアしてく様子をワンパラグラフまるまる描いていくのは珍しいんぢゃないかな、と思った。
>目もとにはラ・プレリーのセルラー ラディアンス アイスクリームを薬指で軽くたたき込み、仕上げに、顔全体にクレーム ドゥ・ラ・メールをたっぷり塗り込む。(p.111から)
なんてえの、なんかふつうぢゃない取材をしないと男の作者には書けないような気がするんだけど。
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将棋ボーイズ

2014-10-01 20:20:31 | 読んだ本
小山田桐子 平成26年4月 幻冬舎文庫
最近読んだ本。
例によって、出張先で、帰り道に読む本がなくなっちゃったんで、書店で文庫を買った。
こういうことしてるからカバンが不要に重くなる。それほどの重量でもないと思うが、そういうとき一冊ではとどまらなかったりする。帰りの時間で読めるのは、せいぜい一冊なのにね。
ま、それはいいとして。
えーと、タイトルのとおりの小説です。岩手高等学校(私は知らないけど)がモデルらしい、高校の将棋部が舞台で、主人公たちは当然高校生。
主人公は、最初に出てきた、初心者だけどなんとなく将棋部に入っちゃった男子かと思ったけど、実際の主役は彼と同い年だけど、すでに全国レベルの天才くんのほうですね。彼の孤高ぶりが目立ちます。
んで、わるいんだけど、あんまりおもしろいとは思わなかった。
だから、どーなのよ、みたいな感想しかもてなくて。
うーん、九章からなってて、まあそこそこ長いんだけど、そこに流れていくうねりのようなリズムが感じられなくて。
ブツ、ブツ、ブツ、って感じの切りようが、どうにも気持ちよくなれなかった。
どうでもいいけど、ひとつ、駒の動かし方から始めた子が、3年生になるまでの実質二年間で、三段くらいまでなれちゃうのってのはすごい、若いからだよね。ゲームは若いときにおぼえるにかぎる。
あー、あと、最近話題になってたようだけど、「ディスってる」なんて日本語、私は知りませんでした。本書には、あたりまえのように、使われています。そういうの分かんないやつが、現代の“青春小説”(?)読むなってことだよね。
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