こんにちは。
19期生の野江です。
本日は下記の本の感想と感じたことについて共有したいと思います。
野本響子 『日本人は「やめる練習」がたりていない』集英社新書
まず初めに、人間というのは組織的な生き物なので、考え方の起点もその環境に大きく依存すると実感させられるないようです。
私は日本人であり、男性であり、30代であり、自営業の家族に育ち、地方出身であり、私立の理系学部の大学卒業であり、中小建設会社のサラリーマンでした。
考え方もそうした環境を起点としてそれが「普通」という認識からスタートしています。
私自身、地方から東京の大学に進学し、東京圏出身の高校からの内部進学者、外国からの留学生などのとの交流により、日本でも様々なバックグラウンドの人がいるということを少しずつ実感できるようになりました。
さらに、中小建設会社に就職してからは、現場で工事に携わる自営業者や日雇いの作業員等との交流により、さらに世界は広がりました。
また、大田区の居酒屋やランニングサークルで出会った様々な年代や職業の人は、私に新たな視点を与えてくれました。
診断士の資格を取得してからは、大企業の管理職や様々な士業の方等との交流により、自分の生きてきた世界の狭さに改めて気づきます。
最近では、一時支援金の事前確認で飲食店以外のコロナ禍で苦しんでいる多くのフリーランスの方々の実情にも触れ、診断士の在り方を改めて気づかされています。
午堂登紀雄氏によると
「人間の幅を広げるものは三つある。
人と会うこと、本を読むこと、旅をすることだ。」
人と会うこと、本を読むこと、旅をすることだ。」
といいます。
読書も様々な気づきを与えてくれます。
私は本が好きで書店に行けば一日中過ごすことが出来ます。
雑誌、小説、ビジネス書、マンガ、専門である建築図書、趣味であるランニングや登山、語学に関する本、料理や収納術などの実用書はもちろん、異分野である法律や医学、プログラミングの専門書や学習参考書、絵本、洋書まで様々な書籍に触れるのが楽しみであります。
もっとも残念なことに購入する書籍のうち、ちゃんと読むのは2割程で「積ん読」として死蔵していることです。
そんな中、私が購入してほぼ読破するのが海外の文化についてに日本人が描いているエッセイやルポです。
異文化について生活感を元に綴られた文章は新たな世界への扉を開いてくれる最高のツールではないかと思います。
そんな中、今回紹介したいのが上記の書籍です。
新書であり短時間で読めるのですが、自分が常識としている世界に対する違和感を改めて認識させられました。
本書では、マレー人、華人、インド人をはじめとした様々なバックボーンを持つ人々が暮らすマレーシアに移住した日本人の経験が語られています。
特に、本書のタイトルにもある「やめる」ことについて文化の違いを生活感を持って理解できます。
主眼としては、日本人が美徳として持つ「一つのことを長く続けること、石の上にも三年」といった価値観と、マレーシアの「合わなければすぐにやめる」という対比が語られています。
全体として、熱帯気候的な陽気さが流れており、読んでいて快適な気分となります。
一方で、現代日本での社会的な問題に対するメッセージも強く訴えられています。
タイトルにもあるように、日本では「やめる」ことがネガティブに捉えられることが多いかと思います。
制度的にも途中でやめる人間についてフォローする仕組みは多くないと気づきます。
例えば、日本では公立の小中学校などでは学区に応じた学校に行くことが決まっており、いじめや勉強についていけないなどの理由があっても、基本的にそれ以外の選択肢は多くないと思います。
フリースクール等もあると思いますが、社会的に逸脱しているとみられがちではないでしょうか。
日本の学校では、生徒の理解度に関わらず基本的に毎年決まったペースで進学することが前提となっています。
そのため、そこから外れると異端として見られることもあります。
本書によると、マレーシアではそもそも様々な言語や宗教により様々はコースがあり、方針が合わなければ別の学校に移動することも当たり前で、留年や飛び級も当たり前と言います。
多様な選択肢があるため、合わなければ学校を変えるのも「普通」とのことなのです。
こうした環境で育ってきた子供たちは、大人になっても合わなければすぐに仕事を辞めると言います。
一方で、日本では嫌なことがあっても我慢して続けることが大切という価値観があると思います。
どちらが良いということではないかとは思います。
ただし、学校から逃げられない子供の自殺や、会社から逃げられない過労死や自殺は、マレーシアの文化では考えられないのではないでしょうか。
逃げるは役に立つどころか、恥ですらないのですから。
もっとも本書では経営者視点はあまり語られていないので、すぐにやめることの多い従業員を使って経営する大変さやそれによる経済損失という点はあるかと思います。
本書を読むと理想郷のようにも感じますが、現実的には著者の見えていない社会問題はあるのではないかと愚案します。
日本の現在の終身雇用制度は、太平洋戦争遂行のために確立されたとも言います。
工業製品の大量生産による生産増強を目的とする場合には非常に効率的なシステムだったのでしょう。
しかし、現在では戦争においても経済活動においても集団的な組織行動だけでは勝利は難しいのではないでしょうか。
やや脱線しましたが、大切なのは「やめること」と「続けること」をニュートラルに比較し判断することではないでしょうか。
「続けること」が前提の思考では、「やめること」には大変な負荷がかかります。
これは個人に限らず企業経営でも言えることではないでしょうか。
不採算でも既存事業をギリギリまで続ける、割に合わなくても既存顧客との取引を継続する。
そんなことはないでしょうか。
もちろん、個人でも企業でもそこから花が開くことはあるでしょう。
しかし、大事なことは「続ける」リスクを適正に評価し、「やめる」ことと比較してニュートラルに判断することだと思います。
私自身、盲目的に続けてしまっていることがあり反省させられます。
常に「続ける」「やめる」をゼロベースで判断することが大切だと感じさせられました。
本は手軽に新たな価値観に触れる手段なので、今後も新たな出会いを楽しみに書店に通いたいと思います。
稼プロ!21期生を募集しております。説明会開催のご案内です。