こんにちは。20期生の安納です。
先日、稼プロ!カリキュラム第8回の「経営相談ロールプレイ」を受講いたしました。経営者役のOB皆様による迫真の演技に対面し、指導員とチームメンバーからのフィードバックをいただくことで、個別相談スキルについて理解を深めることができました。なかでも、質問に応じて話が広まるのを目の当たりにして、「問い」自体の重要さを改めて認識いたしました。以来、「問い」について考える機会も増えまして、今回はそのあたりを述べたいと思います。
「HMW」という問い方
『Q思考-シンプルな問いで本質をつかむ思考法』(ダイヤモンド社)を読み返しています。この中で紹介されている「問い」の手法にHMW(How Might We~)があります。「どのようにすれば~できそうだろう?」と問いを繰り返していくもので、様々な視点(POV:Point Of View)を洗い出すことができ、グループディスカッションでは発想を膨らますのに役立ちます。「デザイン思考」にも取り入れられています。
この「How Might We」が意味するところを、もう少し詳しくみてみますと、
How ・・・ 方法があることを確信する
Might ・・・ 実現性を問わない(should can ではない)
We ・・・ 参加者の知恵を絞る
と、問いはじめる前提、スタートラインを示しています。特に、Mightには注意が必要です。上記の表現では「できそうだろう?」と紋切り型の表現をしてしまったものの、ご承知のとおりMayの過去形であり、"かもしれない May"より対象の実現性が低いことを示しています(MayとMightについては、https://writingexplained.org/may-vs-might-difference の説明が役立ちます)。できるかできないか、は括弧に入れて、参加者全員で「問い」の形で発想を広げようとする試み、より対象の本質に迫ろうとする手法であるといえます。
判断を停止する
括弧に入れることは、判断を停止(エポケー)ともいわれます。エポケーは哲学の一分野である現象学を担ったE.フッサールにおいて、思索生活における反省的方法概念でした。この括弧入れを突き詰めていくと、「純粋意識」あるいは「超越論的意識」が残り、ここから世界の存在と意味を捉えなおす現象学的還元に至ります(『現象学事典』(弘文堂))。
自分なりに噛み砕きますと、方法論としての判断停止を意識し、偏見を排除して対象を捉えなおそうとする姿勢が大切である、と理解します。対話の場面においては、今まで見てきたような世界から離れ、対話者とともに新たに捉えなおそうとする意思を持つことにつながるものです。
個別相談に生かす
以上の「問い」についての確認から、個別相談に生かせそうな点を二つ整理してみました。
一つに、相談する側・相談される側が肩を並べ、対話の価値を確信し、「We」となって立場を共有しようとすることです。それぞれに性格があり、善悪の価値観、好悪があるなかで、これらの価値判断を停止しようとします。チームとして考え方を交換することにより、全く同じ立場にはならないまでも近い場所までたどりつき、より純粋に事象を捉えることを試みます。
もう一つに、「今、何を聞いてはいけないか」に留意し、質問を精選することです。講義の中でも、判断は一度置いておき、視座を高めるための質問を続けることが大切である、と指導いただきました。今回のカリキュラムで想定したような、初回・20分の面談においては、実現性を問うこと(「それ、できますか?」「できるかなぁ」)は思考の流れを停止させて発想あるいは本質への到達を遮り、実のある会話ができなくなる可能性があります。聞きたいことを何でも聞いてみる、では良い"相談"にはならないことがあると、心得なければならないと思います。
このように「何を聞いてはいけないか」への留意が重要、との結論に至ったなかで、記憶の海をのぞいてみますと、「今それ聞く?」「なんでそんなこと聞くの?」と、非難の眼差しとともに聞き返される場面の数々が、ホタルイカのように浮かび上がってきますね。皆さん、至らないことばかりですみませんでした。
またこの度、久しぶりに学生時代の参考書だった哲学分野の書籍を紐解きました。砕氷船で進むがごとく、読解には多くの困難が伴いますけれども、折を見て学び直し、思索を深めたいと思いました。
以上、お読みいただきありがとうございました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます