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クリスマス・イブに感じる新幹線のベネフィット

2020-12-24 12:00:00 | 講師小野田からのメッセージ

メリー・クリスマス! 20期生のながいち!です。

私にとって、いま一番のクリスマスソングは山下達郎の『クリスマス・イブ』です。
(♪雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう……)
そして『クリスマス・イブ』で思い起こされるのは、JR東海による新幹線のCM『クリスマス・エクスプレス』です。
1989年のCMなので、このブログを読んで多少なりとも共感していただけるのは、40歳以上の方に限られるかもしれません。
申し訳ありません。

『クリスマス・エクスプレス』のCMのストーリーを再現すると、こんな感じです。*1
バックには『クリスマス・イブ』が流れています。

①プレゼントを抱えて夜の駅構内を走る若い女性(牧瀬里穂)。
②途中で男性と接触してプレゼントが落ち、被っていた帽子が脱げるが、それを拾って改札口へ急ぐ。
③人込みの中、バンダナを巻きバッグを肩にかついだ彼氏が、改札内の階段を降りてくるのを見つけて笑顔に。
④彼氏を驚かそうと柱の陰に隠れ、肩で息をしながら目を閉じ、幸せそうな表情で彼氏が近づくのを待つ。
⑤「ジングルベルを鳴らすのは、帰ってくるあなたです。クリスマス・エクスプレス」のナレーション
⑥遠ざかる新幹線の後ろ姿。「JR東海」のサウンド・ロゴ。

1989年、国鉄がJR各社に分割されて2年目に作られたCM。
その年の広告業界のCMアワードでグランプリを受賞。
当時新人で17歳だった牧瀬里穂は、このCMでブレイクしたそうです。

特別な日の夜、遠距離恋愛中の二人が、新幹線の改札前で久しぶりに会うまでのわずかな時間を切り取ったドラマ。
このCMの魅力は、何といっても牧瀬里穂の笑顔です。
彼女は確かにカワイイのですが、それ以上のものが、彼女の笑顔から伝わります。
遠く離れて生活し、久しく会えなかった彼氏。特別な日に、彼氏が会いに来てくれた。
「待ち焦がれていた人と出会えたとき、人はこんなすてきな笑顔になるのか」という感動が、『クリスマス・エクスプレス』を視た後に残るのです。

JR東海の担当者は、制作にあたってCMディレクターに次のように話したそうです。

(同時期に民営化されたNTTのCMを意識して)
「電話も新幹線も線(電話線とレール)で大切なものを運ぶという点では同じ。NTTは声を届けることしかできないが、うちは人間そのものを運び、結び付けられる。それをCMで表現してほしい」*2

CMを作るにあたり、JRの担当者は、新幹線が都市と都市をつなぐだけでなく、人と人をつなぐサービスであるという発想を持っていました。
ディレクターはこれに共感し、新幹線によって人と人がつながる具体的なストーリーに落し込み、そのとき人に起こる心の変化をみごとに映像化しました。
この過程で、彼らは新幹線サービスの本質を見つけ出す作業をしたと、私は思います。

稼プロ!の第6回の講義では、「製品の三層モデル」の復習をし、診断士の仕事のひとつは、事業者が提供する商品やサービスの核を見つけ出すことだと学びました。
『クリスマス・エクスプレス』の制作者たちはCM作りを通して、新幹線サービスの核にあるベネフィット(便益)を見える形にしたのです。
具体的には複数の層になった、次のようなベネフィットです。

<1層目のベネフィット>  人を速く時間通りに、都市から都市へ運ぶ。
<2層目のベネフィット>  人と人をつなぎ、人と人の出会いを創り出す。
<3層目のベネフィット>  人の笑顔を引き出し、幸せな時間を生み出す。

笑顔になったのが新幹線に乗車した人ではなく、待っていた人だというのも、このCMの表現の巧みさでしょう。
ドラマ上は脇役ながら、二人の再会を演出した新幹線の遠ざかる姿に、私は暖かいものを感じました。
すっかり、CMの仕掛けにはまった(魅せられた)ということです。

診断士が、商品やサービスの核を見つけ出す作業をするのは、例えばプロモーションを考えるときです。
中小事業者の場合、費用面からテレビCMを使うことは稀でしょう。
しかし、『クリスマス・エクスプレス』の制作者たちのように考えることは重要であると思います。
つまり、商品やサービスが、消費者の人生や生活のストーリーの中でどういう役割を果たし、どのような心の経験をもたらすかをリアルにイメージする、ということです。
私は、そうした想像力を働かすことのできる診断士でありたいと考えます。


*1 三浦武彦、早川知良著『クリスマス・エクスプレスの頃』(日経BP企画)の付録DVDから採録した。
*2 出典「CM『クリスマス・エクスプレス』が令和になっても色褪せない理由」
      現代ビジネス情報部  https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69391

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (宮村芳孝)
2020-12-25 09:00:50
大変勉強になりました。
当時、名古屋におり、月に一度くらい横浜に新幹線で往復していました。牧瀬里穂さんの映像には往時の名古屋駅が映ることもあり、たまに観ています。
ありがとうございました。
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Unknown (大井 秀人)
2020-12-24 22:12:00
あの牧瀬里穂には本当にドキドキしましたね。これを語るのはオッサンの証拠です(笑)。それにしても、国鉄時代のストライキや値上げなど暗いイメージを払拭する、すばらしいイメージ戦略だったと思います。あのときはJR東海に就職したいと思いました。
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