鎌倉ちょっと不思議な物語第452回
ふだん鎌倉駅までは、およそ15分かかる京急バスに乗っているのだが、昨日のように道路が込むと、待てども待てども、なかなか定時にやってこない時がある。
そんな時、村人たちはバス停には生憎ベンチがないので、道路脇のコンクリートの端っこに腰かけて、バスがやってくるのをのんびりと待つことになる。
今から随分と昔のことになるが、この場所に座っていた日本画家の小泉順作さんやボストン大学のロゴが入ったトレーナーを着ていた近所の若い女性、私の妻を見ると「奥さん、いい顔してるねえ」と褒めてくれた皺くちゃの御爺さんも、とっくの昔に泉下の人になってしまった。
だから、そこが不吉な場所というのではないけれど、私はどんなにバスがやってこない時も、あそこには腰を下ろさないように、それとなく気を遣っている。
ようだ。
真珠湾を騙し討ちとはお釈迦様でも知らぬ反米師走の八日 蝶人