照る日曇る日 第1989回
帯の惹句に「血と乳と涙をうたう!」とあったが、私としてはこれに「怒りを以て」という一節を付け加えたい。
けんぽうきゅうじょうに、ゆびいっぽん
おとこが、ふれるな。やかましい!
平和のことは、女に聞け。(「女に聞け」より最終節を引用)
むかし「女性は太陽であった!」とのたもうた偉大な女性があり、近くは「なにものにも安易に寄りかかるな!」と警告された凛呼たる女性があったが、現代を生きる詩人宮尾節子もまた、それらの偉大な系譜を引き継ぎ、暗黒世界にあって母なる太陽のように輝きわたる警世の預言者である。
しかしそれはのほんの一面であって、迷えるへなちょこ男子の私としては、ある日怒れるアマゾネスが、母と子のつながりを、激しいソプラノではなく、柔らかなアルトでそおっと口ずさんだ「愛が残る」のような繊細なつぶやきのほうが、長く深く心に響くのである。
苦労して
子を育てるとき
苦労して
愛も育てた
(中略)
子が離れても
愛は残る
花のあとに
土が残るように(「愛が残る」より)
「お父さんアホ笑いしたら」と聞かれたら「ハシモトカンナに怒られるよ」 蝶人