あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

クガタチ*

2023-12-17 11:36:02 | Weblog

 

これでも詩かよ 第304回

 

西暦20××年、とうとう日本国憲法が改訂された。

詩文が死文と化した第9条の代わりに、なんとなんと、「クガタチ条法」が制定されたのである。

 

イスラム教の「目には目、歯には歯」に似ているが、もっとラジカルな内容だ。

犯罪の容疑者は最高裁にいくと、最後、クガタチによって有罪か無罪かが決まるのだ。

 

沸騰した湯の中に手をつこんだらどうなるかは、泉下の愛犬ムクでも、近所のジョージ君でも知っている。

 

「日本書紀」には3か所でこのクガタチが出てくるが、こいつが出てきたら最後、いくら天祐があっても、無事に無罪放免されるやつなんて、古今東西ただの一人もいない。

みな有罪となり、つまりは死刑に処せられて、「ジ・エンド」になるのだ。

 

早速、最高裁に送られたジミントウ・アベノミクソ派の「5人組」が、クガタチの刑に処せられた。

 

5つの洗面器の中でギンギンに沸騰した湯に突き入れられた、5つの拳固と25本の左指は、たちまち茹でた伊勢海老のように真っ赤っかあになって、5種類の苦悶の叫びが、法廷狭しと響き渡った。

 

「さあ、お前たち、いくら裏金をもらったのか、ありていに白状せよ!」

閻魔様ならぬ裁判長の厳命が下るや否や、

 

キャイーン、キャイーン、ギャイーン、ギャイーン!

「イッセンマン、ニセンマン、サンゼンマン!」

「ヨンセンマン、ゴセンマン、ロクセンマン!」

「ジュウネン、ナナオクドル、イッセンジュウヨンオクエーン!!!」

青白い自白が、悲鳴といっしょに半蔵門の夕空に発せられていく。

 

お次はまるで節操なき異次元男、もとい「令和の火の玉男」の番だ。

 

そもそもお前さんは、確固たる主義主張もなく、ただオメイを総理にしてくれた男のことだけを大切に思って、天下国家、もとい、諸国民のさいわいのことなぞ、これっぽっちも眼中になく、ショもないことを世界中でペラペラぺらぺらしゃべり倒して、それが政治家の仕事と心得違いして、いままで生きてきたのよ。

 

どうじゃ、相違ないか。

なぬ、小生意気に異議があると?

では、早速このクガタチの試練を受けてみよ! 

本当のことを言うものは爛れない。嘘を言うものはきっと爛れる!

 

キャイーン、キャイーン、ギャイーン、ギャイーン!

青白い自白が、悲鳴といっしょに半蔵門の夕空に発せられていく……

 

 

さはさりながら、何千何万位の無辜の民を圧殺してきた最悪の凶器クガタチも、コウ君のようなノンサンス自閉症児にだけは歯が立たなかった。

 

「人殺しをやったろう」と強弁されたら、「人殺しをやりましたあ」。

「お前、おらっちが大事にしまっておったアイスを食べたろう」と迫られたら「食べましたあ」とあらぬ告白。

 

「お前、おらっちが隠していた千円札を盗んだろう」と詰め寄られれば、にっこり笑って「あい、あい、あい」

 

なんでもかんでも、「やりました、食べました、盗みました」と平然と答えていたコウ君を、なんかい伝家の宝刀クガタチにかけても、両手はまったく火傷することなく、天神地祇のまん前で、見事にその無罪を証明してみせたのである。

 

 

*クガタチ(盟神探湯)は古代日本で採用された真実追及の手段。神に誓願してから手を熱湯などに入れ、焼け爛れた者を邪とする一種の神判である。「日本書紀」の応神天皇9年4月条、允恭天皇4年9月条、継体天皇24年9月条にその具体例が記載されている。

 

      香港に戻らぬという周庭を生涯追うと行政長官 蝶人

 

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