照る日曇る日 第2000回
ハンチバックって、何? 聞いたことないなあ、と思って和英で変換してみたらhunchback.すなわちせむし、だというので、誰が?と思ったら、作者自身がせむしのごとき形状の背中を持つ重度の身体障碍者なのだった。
自分の惨めな病態を、あえて自虐的に自分が書く小説の題目に据えるとは、いい度胸だ。
いわゆる障碍者文学というのは、ハンセン氏病をはじめ本邦の文学史を病者の光学とでもいうべき、特別に病的な色合いで染めてきたが、いずれもどこか憂鬱で物悲しく、孤絶と悲愴の陰影で、読む者の心を暗くさせてきた。
ところがこの小説の主人公は、自分の重篤な障害に四六時中死ぬほど苦しめられながら、終始意気軒高として精一杯背筋を伸ばし、傲岸不遜な健常者どもに対して、爽やかに啖呵を切って喧嘩まで売る始末だ。
身体的に大いなるハンディキャップがあるにもかかわらず、その弱みを逆手にとって、対等どころか、さらにその上に立とうとすらしている彼女の雄姿に、おらっち思わず涙がこぼれる。
ではなかった、この逆だちした構図こそ、我が国の身体障碍者文学が、史上初めて獲得した一世一代の晴れ姿ではないか、と思うのである。
あっ晴れ、石川沙央嬢! されど身体ならざる精神的の文芸界の暗闇は、いつの日にか晴れるのだろうか?
言葉には絡みとられずぬるぬると逃げ出していく様々な夢 蝶人