あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

町田康著「口訳古事記」を読んで

2024-01-24 15:17:49 | Weblog

照る日曇る日 第2010回

 

参考文献は小学館の「新編日本古典文学全集1古事記」のみ。この校注と訳を踏まえて、町田選手が、さながら大阪弁の寅さんのように、一気呵成に語り下したのが、本書である。

 

例えば「日本統一」の「唄殺し三番勝負」で、神倭伊波礼金毘古命(後の神武天皇)が強敵兄師木、弟師木兄弟と戦う個所では、こんな感じ。

 

「どないしましょう」

「こんなときこそ唄でしょう。唄の力で生きましょう。すべての武器を楽器に!」

「なに眠たいこと吐かしとんけ。けどまあ唄の呪力ちゅのがエグいことは、これまでの戦いによって証明されてとる。やってみましょう」

 

 というので阿呆声を張り上げて、

 

♪盾を並べて伊那佐のお山

 林の中で戦争したら

 腹も減るわれ、島の鳥

 鵜飼の皆さん、助けてチョーダイ

 

といった塩梅で、口語訳ならぬこの口訳が、最初から最後まで続く。

古事記に出てくる八百万の神様が、これほど面白く身近に感じられる現代語訳は初めてだ。

 

洗剤をどれくらい入れたらよいのかとか悩むくらいの悩みがいくつか 蝶人

 

コメント
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