あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

椿美砂子詩集「青の引力」を読んで

2024-01-13 08:49:44 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第2004回

 

身支度を終え通勤電車に乗る

北五泉駅七時四十五分

いつもの顔ぶれ

似合っているよそのコート*

 

東京の世田谷区に生まれた女性が、たぶん「青い引力」に惹かれたのだろう、新潟県の五泉という街に住むようになって、ひとつ、またひとつと、心に深く沁み入るような詩を書いている。

 

無人駅には

夏の終わりに紫陽花がゆっくり花終える

まったく夏が終わると冬が急ぎ足で来る*

 

なぜか彼女がそれらを書いている姿が、私の目には見えないけれど、心のどこかで見えているような気がする。

 

一時間二十分 通勤電車に乗る

長岡駅に着くと

アイスミルク色の雪景色

雑音さえ吸い込まれる*

 

その光景に胸を躍らせたのは

嫁いだ最初の一年だけ

雪の重さが心にも身体にものしかかる*

 

まるで仏蘭西映画みたいだ。

そしてそれは、既にしてひとつの静かなドラマである、

と私は思う。

 

               *引用は詩集の最後に置かれた「プロローグ」より。

 

金曜に帰宅することだけを楽しみに月曜朝に施設行く耕 蝶人

 

コメント
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