照る日曇る日 第2004回
身支度を終え通勤電車に乗る
北五泉駅七時四十五分
いつもの顔ぶれ
似合っているよそのコート*
東京の世田谷区に生まれた女性が、たぶん「青い引力」に惹かれたのだろう、新潟県の五泉という街に住むようになって、ひとつ、またひとつと、心に深く沁み入るような詩を書いている。
無人駅には
夏の終わりに紫陽花がゆっくり花終える
まったく夏が終わると冬が急ぎ足で来る*
なぜか彼女がそれらを書いている姿が、私の目には見えないけれど、心のどこかで見えているような気がする。
一時間二十分 通勤電車に乗る
長岡駅に着くと
アイスミルク色の雪景色
雑音さえ吸い込まれる*
その光景に胸を躍らせたのは
嫁いだ最初の一年だけ
雪の重さが心にも身体にものしかかる*
まるで仏蘭西映画みたいだ。
そしてそれは、既にしてひとつの静かなドラマである、
と私は思う。
*引用は詩集の最後に置かれた「プロローグ」より。
金曜に帰宅することだけを楽しみに月曜朝に施設行く耕 蝶人