ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

ぎふ水琴亭 @岐阜県岐阜市

2020年06月22日 | 岐阜県(岐阜・老舗)

岐阜市を代表する料亭のひとつ、元治元年(1864)創業の「水琴亭」。元々は伊奈波神社境内で営業し、昭和4年に明治を代表する芸術家、岐阜市出身の「原三渓(富太郎)」によって現在の場所に移築されたのだとか。横浜にある「三渓園」で有名な原三渓(当時の新進芸術家のパトロンでもあった)が岐阜市出身だとは知らなかった。昨年先代女将が亡くなった後に運営が市内の会社に引き継がれ、「ぎふ水琴亭」として料理店として生まれ変わったとは何かの記事で知ったのだが、慶事が無くとも昼食がいただけると知って嫁を誘って行ってみることに。前日に電話で予約を入れておいた。

当日は生憎の雨模様。表の黒塀の中にも車が停められるみたいだが、玄関先の砂利の上に車を乗り入れるのも無粋なので裏の駐車場に車を停め、傘をさして歩いて表に回った。予定の時間に玄関先で待っていると奥から洋服の仲居が案内してくれた。靴を脱いで上がり、長い廊下を通って庭に面した部屋へ。個室という訳ではなかったがその部屋には自分達だけだったので個室同然。数寄屋造りの建物は選りすぐりの材料と大工の腕を駆使して造られたものだそう。昔のままの歪んだガラスの先に見える庭は、新緑が雨で濡れとても綺麗だった。沙羅双樹 (さらそうじゅ)や無花果(いちじく)、紅葉などが植えてある。秋もいいだろうなァ。

 

席に腰かけ「おまかせミニ懐石コース」が始まる。簡易な昼食なので盆の上に様々な品が全て揃っている。ご飯だけは鯛めしをその場で炊くようで、後ろの卓の上の小さな土釜に火が点けられた。よもぎ豆腐、アスパラ肉巻きサラダ、幽庵焼(サーモン)、夏野菜の冷製茶碗蒸し、真薯(稚鮎)、天麩羅(海老、白魚、南瓜)などが洒落た器に盛られて並ぶ。給仕は案内をしてくれた女性とお運びの若い女性の2人のみ。最初に飲み物を訊いてくれなかったのでこちらから酒を所望。「長良川」(純米)をぬるめに燗してもらう。酒が届くまで料理に箸をつけるのはお預け(何しろ廊下が長くて届くまでに時間が・笑)。酒は1本だけにしておいて、それぞれの料理をゆっくりといただいた。蓋を揺らすなかなか豪快な音が消え、鯛めしが炊き上がったようだ。茶碗によそってそのまま、あるいは出汁をかけて茶漬けにしていただいた。最後は桃のシャーベットで了。

食後に仲居に尋ねると、そこかしこに反映された原三渓による意匠などを説明してくれた。欄間の透かしは彼が題材としてよく取り上げたという”雪・月・花”(写真下1枚目)、襖の引手は”琴柱(ことじ)”(写真下2枚目・※琴の弦を支えているところ)がモチーフなのだとか。残念ながら奥の間2階にあるという原三渓の手によって書かれた襖絵は客が居るという事で見ることは叶わなかったが、これも運が良ければ見せてもらえそうだ。こういう場所に来た時は少しでも建物を愛でられるように用が無くても手洗いを借りる事にしているのだが、手洗いのタイル装飾も凝っていてなかなか素敵だった。

 

静かな場所で(隣の間の話し声はもちろん聞こえてきたが)、庭の緑を眺めながらゆっくりと食事が出来、自分にとっては歴史ある建物を直に感じることが出来るというとても贅沢な昼食時間だった(部屋にはちょっとベタな琴の音楽が流されていたが、あれは要らないナ)。季節が変わったら料理も変わるだろうから、また機をみて訪ねてみよう。(勘定は¥7,000程)

 

 

 

 

 

 

ぎふ水琴亭

岐阜県岐阜市米屋町27−2

 

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コメント (4)
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