六本木歌舞伎 「地球投五郎宇宙荒事」 (8月7日・名古屋・中日劇場)
酷暑の名古屋にて行われた歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事」を観に行く。暑い、いや熱い…。酷暑が何日も続いているし、雨も降っていない(この後夕立ちがあったけど)。地上から行ったので、中日ビルまで歩いて行くだけで、容赦ない日差しに汗がどっと噴き出す物凄い暑さ。ロビーには女性8~9割ぐらいの客がびっしり。着物を着ていらっしゃるご婦人も多いが、この暑さじゃ大変だろうなァ。でもその意気がいいね。こちらの劇場は階上まで専用エレベーターなので長蛇の列が出来ている。公演のチケットは出遅れて滑り込みで購入したので、2階席の一番後ろ。当代きっての人気者2人だから仕方ない。
この舞台が故・勘三郎との会話から生まれたといういきさつは聞いた事があったが、それ以外はあえて情報をシャットアウトしての観劇。脚本が宮藤官九郎、演出が三池崇史というんだもの、期待は高まる。歌舞伎役者の楽屋から始まる「つかみ」は新鮮。普段見る事が出来ない姿をそのまま舞台で見せるのは意表をついた演出で楽しい。狂言回しを加藤清史郎君(大きくなったなァ)にやらせたのも面白い。楽屋落ちの話が多いので、笑いには事欠かない。その後の物語としては荒唐無稽ゆえ、台詞に出てくるような現代の流行りもの(ブログとかITとかSNSとかスターウォーズとか)に興味や知識が無い人には笑えないところも多いだろうが、そのあたりに気を使わずにあえて演ったのは良かった。「キラーコンテンツ」なんて台詞、知らない人には何の事だが分からないよね(試しに母に尋ねてみたら、やっぱり知らなかった・笑)。通常の歌舞伎では見えない存在(見えているが)の「床」の竹本連中を芝居の中に巻き込むのも面白い。2階なので顔が見えなかったが、この日の三味線も素晴しかった。東京では上妻宏光だったらしいが…。ぜひクレジットを!。
獅童の声は、通りこそ良くないがでかいし、亀三郎なんて物凄く通りも良く、声もデカいのでまさに「大音声」という感じになる。以前にも思ったのだが、海老蔵の声はかっこいいのだが、終始抑え気味に聞こえ、大音声での決め台詞での迫力がやや足りない気がする。特に今回は生音だけじゃなく、PAを使った音響効果などがあるので余計にそう聞こえたのかもしれないが、成田屋の荒事ではああいうものなのだろうか(先代は観た事がないので知らない)。
幕間を挟んでの後半には、宮藤官九郎がドラマ「タイガー&ドラゴン」で見せたような古典(この場合落語の)と現代のストーリーがピタッとリンクするような快感を味わえるのかと思ったが、意外にそれ以上に話は膨らまず、元ネタのスターウォーズのストーリーから連想される想定の範囲内で落ち着いてしまったのには、やや物足りなさを感じた。まぁ、にらみだの、荒事の衣装だのは大盤振る舞いだし、CMネタや名古屋いじりもあるので充分楽しめたのだが。将来これが古典になることはないと思うが(笑)、傾奇者(かぶきもの)にはもっといろんな事やって欲しいなァ。
地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)
脚本 宮藤 官九郎
演出 三池 崇史
監修/振付 藤間 勘十郎
美術 金井 勇一郎
照明 高山 晴彦
地球投五郎 市川 海老蔵
駄足米太夫 中村 獅 童
絵師の竜二 坂東 亀三郎
高窓太夫 中村 壱太郎
火消しの彦兵衛 大谷 廣 松
左坊 市川 福太郎
市川鯛蔵/与駄 加藤 清史郎
右坊 市村 竹 松
大工の源 市川 九團次
法漢和尚 片岡 市 蔵
徳川綱吉 市村 萬次郎
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