岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

『沈まぬ太陽』を観ました。

2010-03-14 08:05:52 | 日本の仲間
近くの映画館で、6日間のみの再ロードーショーがありました。
午後1時~4時30分、なんと3時間30分という長尺です。

航空会社の組合委員長が中近東やアフリカに左遷されても挫けず、本社に舞い戻り、
尾巣鷹山事故後に、航空会社の社内改革の挑む話です。

原作は、山崎豊子さん。
壮大な映画になっています。

もちろん、今 困難に陥っているJALがモデルです。
映画の進行は、時間的経緯が錯綜します。
1960~70年代、1980~90年代です。

山崎さんの原作に対する批判も多く、フィクションと考えて鑑賞した方がよいでしょう。
しかし、よくできた映画です。

主人公の航空会社社員は、1960年代に組合活動を行い懲罰人事で、カラチ、テヘラン、
ナイロビと異例といえる海外勤務の継続を命じられます。

家族連れから単身赴任、家族との断絶と、高度成長期の海外赴任者の悲哀が観るものの
涙を誘います。
そして、会社側の組合への圧力が組合の分裂(5つ)を生み、疑心暗鬼の集団と化します。
所轄官庁の運輸省、利権がらみの政治家の暗躍、財界と政治家の間を歩く黒幕と経済記者。
ややステレオタイプが気になりますが、観客は溜飲を下げるところです。

1985年、ジャンボ機墜落事故が起こります。
この事故で520名という尊い命が失われます。
このシーンのリアリティには圧倒されます。
かなり長い時間、遺体を安置した体育館でのシーンが続きます。
画面を観み続けることはとても負担のかかることでした。
もう次のシーンに移ってほしいと思うほどでした。

しかし、問題の大きさはこのシーン抜きでは表現できません。
主人公の恩地は、遺族の係りを命じられ、遺族に寄り添うことで、人命の尊さを
骨身にまで染み込ませます。

若き日、ともに組合活動を行った仲間を裏切らずに左遷を繰り返した失意の日々を越えた体験が、
大事故に遭遇しても真正面に見据え、人間としての課題から逃げない強さを育てました。

この航空事故以後もJR西福知山線脱線転覆事故など、大事故は絶えません。

人命の尊さ(人権といってもいいでしょう)も、黙っていては忘れられやすいし軽視されやすいものです。

この点も肝に銘じたいと思います。

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