岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

岡山県立大学大学院公開講座第3 講は、佐々木賀奈子講師です。

2012-09-17 07:40:19 | ボランティアとアムダ
第3講義は、佐々木賀奈子先生です。
佐々木先生は、岩手県大槌町の鍼灸師です。津波に襲われた自宅と診療所は全壊してしまいました。
現在は、AMDA大槌健康サポートセンター内鍼灸院健美館の鍼灸師をされています。
先生からは、大津波の様子、救助活動、被災者への治療活動、そして被災した方々の心のケアについてお聴きしました。



この黄色い家が診療所と自宅だった建物。
海岸から2.5km離れ、不動産業者からは津波は来ない安全な土地と言われて購入した。堤防のない時代でも津波はここまでは来なかったと。
その300坪の敷地に建坪100坪の人々が集う理想の黄色い家を建てた。
大槌町イエローハウスという宛名でも郵便物が届くほど有名だった。

そして、昨年の3月11日大津波が襲ってきた。
すべてが破壊されてしまった。

先生は、祖父母から毎年3月の節句に教えられていたことがあった。
いつもの笑顔を消した祖父母は「津波の恐ろしさ」と「いのちでんでんこ」という言葉を繰り返し伝えた。
(私たちがこの大震災で学んだ「津波でんでんこ」と同じ意味だと思われる)

3月11日、大地震が起こったとき、必ず津波が来ると考えた先生は、車に治療器具を積み込んでいた。
堤防があるから大丈夫という人もいた。
防災無線は、津波警報を一言伝えただけで沈黙した。
停電が原因だったが人々はそれがわからなかった。
海岸近くにいた人は津波に気づき半鐘に登り鐘を鳴らし続けた。
その半鐘も津波は呑み込んでいった。

津波はどのように町を襲ったのか。
先生は、黒い大きな波が、「ブルドーザーのショベル」が並んだように押し寄せてきたと表現された。
背筋が凍るような感覚が私にも襲ってきた。
高さ20m以上のショベルが押し寄せるのである。
貧弱な想像力でも恐怖を覚えた。

「いのちでんでんこ」しか助かる道はない状況に至った。
しかし、目の前におぼれる人がいて、逃げることができるか。
先生は逃げることができなかった。

どす黒く濁った水の中でおぼれる人に引き込まれながら、仏頼みのお経を唱えると不思議に浮かび上がることができた。
4人を救うことができた。



その間、飼い主の言いつけを守り生き残った愛犬がこの写真です。

つづく。


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