岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

NHKの矜持を思う。

2015-09-13 14:29:31 | 日本の仲間
NHKのニュースや報道が時の政権に搦めとられているという。
確かに、そのように思う。
現実に起こっている政治的な動きについて、奇妙にバランスをとっている。
社会を映す鏡であるが、その鏡がゆがんでいるように思える。

8月、多くの人が番組に登場し意見や提言をおこなっていたが、現在進んでいる政治状況に触れることはなかった。
言葉を濁していた。
政治に対して思っていることを言える状況にはないと感じた。

日本の8月は戦争に向き合う月である。特に今年は戦後70年。
戦争を知る人は減り続けている。
今、言っておかないなければという高齢者の発言や行動が目立った。

その人々の声は、戦争は悲惨で二度と起こしてはならないということに見事に収斂される。
戦争をしてはならないという思いを発した人々が、今の政治状況を危惧していても不思議はない。
だが、彼らの口からは時の政権批判の発言はない。

不思議なことだ。みんなが現実の政治に無関心であるはずがないと思う。
間違いなく、その声は放送できないのだろう。

NHKにも矜持というものがあるはずだ。
その矜持は番組に表現されていないのか。
いや、そんなことはないと思っている。

かつて魯迅が限られた自由の中で小説を書くときに、政治を書かず、食に思いを託して書いた話を聞いた。
正面的な抵抗をなくし、矢面に立つことなく、戦争の悲劇を語るという、時の政権にも批判できないやり方で、意志を示す。
矜持を保つ。

そのようなことを感じる番組が数多くあった。
もちろん、間接的であり、見る人の想像力に頼るだけにわかりにくい。

しかし、私は、NHK人の矜持を見ている。
幻覚ではないと思う。

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