北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道の学力向上

2009-09-26 23:04:55 | Weblog


 この度、北海道通信社から北海道教育開発研究会編の「知的フロンティアスピリットの再生~元気を出そう北海道の教育」という本が刊行されました。

 北海道教育開発研究会とは、道内の問題意識を持った教育者の集まりで小中学校の校長先生を主体として教育活動を行っているグループです。

 道内の教育関係者にとって、昨年国が行った学力テストの結果、小中学校とも全国でほぼ最低のレベルだったという結果は衝撃的なものでした。

 しかしそれ以上に憂慮すべきことは、その結果に対して道内から「なんとかしなくてはいけない!」という動きが弱いことでした。

 この本の巻頭で同研究会会長の村瀬さんは、「私たちは北海道教育現状を率直に見つめ直し、新生北海道を創る新しい教育のあり方について真剣に考え、率直な議論の場を創り出したいと願い、本書の発行を企画しました」と熱い思いを語っています。

 この中ではまず第一部として道内各界の方達5人から北海道内の教育に関する意見を聞き、第二部では道内の教育をデータから分析しています。

 第三部では道内でもユニークな実践活動で成果を上げている学校の取り組みを紹介し、第四部では全国の中でも成績上位にランキングされている秋田県での取り組みを視察したレポートという構成になっています。
 
 教育関係者でなくても問題意識のある方には面白く読めるのではないでしょうか。

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 第一部のオピニオンリーダーでは、札幌商工会議所の高向巌会頭から、「北海道は新幹線誘致を繰り広げてもなかなかそれが浸透しない」と苦言を呈せられながらも、「発想は豊かだと評価される面もあるのだから、小さくまとまらずにボーイズ・アンド・ガールズ・ビー・アンビシャス」とエールを送られています。

 また札幌国際大学の村山学長からは、「授業での楽しさには『楽しいから分かる』という側面と『分かって楽しい』の両面があるけれど、『分かって楽しい』を果たすのがなかなか難しいようです。教師には『分かるから楽しい』という気持ちが子供達に伝わるように強い意志を持って欲しい」というエールも送られています。

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 (社)日本教育界北海道支部長の昌子さんからは、「教育の問題というとやはり学力と言うことになるのですが、今回の調査には豊かな心と学力との関係を比較している部分がある」という指摘がありました。

 そのなかでは「人の気持ちが分かる、人の役に立つ人間になりたいと思う児童の方が成績が良い」という結果が出ていて、徳性の面での成長がうかがえる子供は学力も高いということがわかるのだそう。

 その一方で、学力で下位に甘んじた道内の子供達は、体力面でも道外の子供達よりポイントが低いことも明らかになっているのだそう。

 より良い教育に向けては、学力と徳育、体育とのバランスも必要といわれることが改めて明らかになりました。

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 私も少し意見を求められていて、道内に危機感が不足しているのはなぜかという問いに対して、道外には他県というライバルがいるからだろう、と感想を述べました。

 北海道は相手が本州全域であったりして対象が茫漠としていますし、これまではハンデを与えられてやや特別扱いされていました。

 今までのそうした気分は、道内ではごく当たり前に感じられているけれど、道外の空気を吸った者にとっては随分のんびりに写ります。道外で他県の人たちが地域間競争に切磋琢磨する意識を感じた人たちはそれを道内に危機感を持って伝える必要があると思うのです。

 また学校というのは一団の職能の単位で、その職能集団が地域と子供達にどのようなマインドで立ち向かうか、ということは非常に大きな意味を持ってくると思います。

 そうした意味では、一人一人の担任の先生だけではなく、学校自体が知識の注入だけではなく、どのように地域の子供達の問題を総合的に対処して行く基地になれるかも問われる時代になったように思います。

 軍隊にたとえると○○方面司令官である学校長の責任もより重くなっているようです。

 しかし地域の人たちも学校に対して「あれも、これもやってほしい」と注文をつけるばかりではなく、では自分たちは地域の子供基地である学校に何ができるかを考え行動を起こすべき段階にも来ているのです。

 
 全国の子供達の学力問題の泥沼は、「これは地域での総力戦なのだ」と早く気づいたところから抜け出すことになりそうです。

 教育関係者だけではなく、一般の道民の関心を引くことこそが最も大切なアクションと言えるでしょう。 
 
コメント
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