遅ればせながら、先週の土曜日に公益社団法人日本都市計画学会の北海道支部総会がありました。
議事そのものは淡々と進み、昨年度の事業報告承認と令和6年度の事業計画、予算計画を承認して終了です。
当支部の総会は大体が簡単に終了するので、夜の懇親会の前の時間を利用して、様々な講師をお招きして特別講演を行うのが恒例になっています。
今回は、日本都市計画学会の会長で、早稲田大学 創造理工学部 社会環境工学科 教授の森本章倫先生にお越しいただき、「次世代交通とこれからの都市計画」というテーマでお話をいただきました。
次世代交通と言うとどこか大都市での交通手段のように思われがちですが、実際は地方都市でもこれを活用して住民の暮らしを支えることを考えているところが多いのです。
その代表的取り組みが宇都宮市のライトレールです。
これは宇都宮市をはじめ関係の企業・団体が出資をして宇都宮市にLRT(=Light Rail Transit)という何もないところに全く新しい路面電車を走らせた事業です。
森本先生はこの結果、鉄道の沿線の地価が上がり建物が建設されて経済効果が発揮されていると高い評価を与えています。
一部市民団体からは「赤字になるから反対だ」という反対論もあったようですが、森本先生も先頭に立って「そもそも赤字にはならないし、もしも赤字になったとしても宇都宮市ではそれをカバーできる」という説明してきたのだそう。
まあ市の財政がある程度豊かな宇都宮市だからこそできたという側面もあるでしょうけれど、新しい都市のあり方にも良い影響を与える公共事業なのでしょう。
最後に北大の高野先生からコメントがあって、「宇都宮のLRTの先進性は、軌道や車体などは公共が提供をする一方で運営会社は運営だけを行うという『上下分離方式』でやっているところです。多くのところでは鉄道軌道をやろうとすると、『鉄道の維持管理までを料金などの収入で賄え』という実際には無理な理屈で運営をして赤字になってしまっている。その固定観念を突破したところが宇都宮のLRTなので、そこをぜひ強調して、次に続く事例のさきがけとして活躍していただきたいと思います」というお話がありました。
単に都市内に路面電車を走らせたというインフラ建設だけではなく、上下分離と言う形で経営が成り立つ仕組みそのものを試みている宇都宮市のLRT、興味深いお話でした。
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また興味深かったのは、人口減少下の我が国において我々はどのような都市像を目指すべきか、ということでした。
それは今社会では相矛盾する施策が同時進行で進められているのではないか、ということです。
ひとつはスマートシティ。
これは情報通信技術や新技術を駆使して都市をマネジメントして効率化を果たし、どんな環境の住民をも支えようという思想です。
様々なデータを収集と活用して、上記のような新交通もあればエネルギー管理をすることで環境にやさしく効率性を向上させて住民の悩み苦しみを解決しようという都市像です。
もうひとつがコンパクトシティ。
もう日本全体では人口が減少局面に入り、特に地方都市ではどんどん高齢化と人口減少が進んでいるのにまだ市街地面積は増えたりもしています。
だだっ広く広がった既存の都市の形をいつまでも温存するのではなく、拠点を中心に集約化を進めて都市を小さくしてゆかねばならない。
それができると、管理費が安くなり効率的な住まいと暮らしが実現するという都市像です。
どちらかというと都市を小さくしないともう減ってゆく住民の負担では都市を維持管理できなくなるだろうという予測の下、コンパクトシティの方が急がれる感じですが、その一方でスマートシティで不便なところも支えようというのでは、都市は小さくなるべきかそれともならなくてもいいのか、目指す都市像が混乱してしまいます。
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さて、都市の形を変えてゆく気持ちのエンジンにはなにがあるか。
一つには「そうなった方が便利だ」という魅力で動く場合、そしてもう一つには「今のままではどんどん不便になるぞ」という恐怖で動く場合の二つがあるでしょう。
都市計画もそれらを巧みに使いながら将来の都市の形を誘導してゆきたいのですが、困ったことに一定以上の歳を取った高齢者は魅力でも恐怖でも動きません。
「なんでもかんでも、とにかく今を変えたくないからこのまま死なせてくれ」
そういう人にはアメもムチも効果はありません。
日本の地域社会が高齢化してゆくと、ゆくゆくは変えようにも変えられない地域社会ばかりになりそうです。
それでも都市計画とは、将来を見越してあるべき姿を唱えて、そこをめがけて動かそうという取り組みです。
皆さんの住んでいるまちの将来あるべき姿はどのようなものでしょうか。
便利になりますか?
不便になりますか?
それは自ら変えられることですか?
自分と言う個人と社会とどちらが大切になるでしょうか?
都市計画って案外面白い学びの場でもありますね。
けるモビリティ(=移動できるということ)と都市計画の関係でした。