北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

歳を取っても働けるうちは働く ~ それは日本人の美学なのか

2021-09-28 21:52:52 | Weblog

 

 朝早くにビルの5階にあるわが社のオフィスの前に立つと、ドアが開いていません。

 普段なら7時には誰かが来てドアを開けてくれているはずなのですが、実は今日は枢要なメンバーが地方出張で早出をする人がいなかったのです。

 普段なら7時前からビルメンテ業務委託先のオバちゃんが二人で執務室に入って、フロアの掃除をしてくれているのですが、その二人もドアの前で手持無沙汰に「まだ空いていないんです~」と戸惑った様子。

 15分ほど待っていて、ようやく早め出勤の一人がやってきて鍵を開けてくれたのですが、その間の待ち時間にオバちゃんたちとの思わぬ雑談タイムになりました。

 (自分よりはだいぶ年齢が上だよな)と思った一人の方に身の上を聞くと、その方は、「今年72歳になりましたが、まだまだ体が動くうちは働こうと思って」と動きがきびきびしています。

「朝は何時に起きて、ここでは何時から何時まで働いているんですか?」と訊くと、「朝は4時に起きて、朝ご飯の用意をして5時半に家を出ます。10分ほど歩くと地下鉄駅なので、始発の地下鉄に乗ってここまで来ます。朝は6時半くらいから11時まで働いているんです」とのこと。

「それが毎日ですか?」
「ここ以外には週に2回ほど、午後に掃除に行くところがあって、それもこなしています」

 なかなかに立派なもので、自分は72歳でこのような肉体労働でやれるかどうか、ちょっと自信がありません。

 自分はいつまで働けるのだろう、働くのだろう、と考えてしまいました。

 
     ◆

【以下統計資料は統計局ホームページより】

 日本の人口が高齢化社会になって、「15歳~65歳の【生産年齢人口】が減ると年金を支える人が相対的に減る」と心配されていますが、高齢者の中には年金だけで暮らすのではなく、働けるだけ働きたい、という意識を持って実際に働いている人たちが多くいます。

 「生産年齢人口」というのは単に人口統計において、15~65歳という年齢だけで区分した人口ですが、これは少子高齢化が進めば確実にこの年齢区分の人たちは今後減ってきます。

 これに対して「労働力人口」という単語があります。

 こちらの方は、「15歳以上で『就業者』と『完全失業者』を合わせたもの」という定義がされています。

 ここでいう「就業者」とは、給料や賃金などの収入を得られる仕事に就いている者、あるいは、仕事を持ってはいるが、一時的に仕事を休んでいたか、又はしていなかった人のこと。

 また「完全失業者」とは、仕事がなく全く仕事をしていないけれども、仕事を探していた、または仕事の準備をしていて、仕事があればすぐに就けるという人のこと。

 つまり『労働力人口』とは、「15歳以上で、労働する能力と意思を持つ人口」のことを指しているので、高齢者であっても何らかの労働をして対価を得ているという人は、65歳以上で生産年齢人口でなくなっても、こちらの労働力人口には含まれます。 

 高齢者の就業率(65歳以上人口に占める高齢者の就業率)は年々上昇して、2018年の調査では、男性で33.2%、女性で17.4%といずれも7年連続で上昇中。【一番上の図参照』

 また、15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は、2018年度で12.9%と過去最高になっています。

 高齢者も、ただ年金に頼るだけではなく自助の精神で稼ぎを得つつ、労働によって社会の一隅を照らすような役割をまだまだ果たそうとしているということです。

 こういう社会の動きを国際間で比較すると、日本は高齢者が働く割合が他国に比べても高い傾向にあります。

 労働を「働かされているのは悪で、止められるものなら止めたい」というのは西洋的な考え方で、日本人としては、「できるだけ社会に参加して貢献していたい」と言う美学があるような気がします。

 高齢化社会を嘆く前に、高齢になってもなお力の限り社会を支えようとする人たちを受け入れやすい社会にしてゆくことは大切です。

 そしてそれでもやはり日本社会は、人口減少とともに就業者人口は減って行かざるを得ません。

 そうして社会の担い手が減ることに対しては、「女性の社会進出を支えること」「賃金の安定した正規雇用者を増やす」「雇用のミスマッチを少なくする対策」そして、「イノベーションへの期待」などが必要と言われます。

 介護人材の不足も予想されていますが、高齢者予備軍はより高齢者の介護をするスキルを身に着けておくくらいの備えは必要かもしれません。

 さてさて、改めて自分は何歳まで働くことになるのでしょう。

 いや、働くという対価を求めることとは別に、いつまでも社会参加はしていたいものですが。

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