北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

水土里のシンポジウム

2005-09-21 23:27:14 | Weblog
 週の半ばで、今日はやたらに人に会う一日でした。こういう日もあるものです。

 さて今日は、
■人に会う一日
■100万人都市水土里(みどり)のシンポジウム の2本です。

【人に会う一日】
 今日はやたら人に会う一日だった。何気なく毎日を過ごしていると、やたら人に会う日があるかと思うと、まったく誰にも会わない日があったり、お金が入る日やお金が出て行く日があったりするものだ。

 こういうのが星占いや高島暦などで法則化されているのだろうか、とはときどき思うのだが、いまだにその法則は分からない。

 まあ一寸先が分からないからこそ、今を一生懸命生きよ、ということなのだろうけれど。

    *   *   *   * 
 
 まず手始めは、JR北海道の本部をお訪ねして某幹部とお話をする。この方は以前ある会合で、「北海道観光も九州や東北のように地域が一体となった取り組みが必要なのでは」という趣旨の発言をされていたので、その具体的な情報をお持ちではないかとお訪ねをしたのである。

 この某幹部、「具体的にどうこう言うよりも、やはり道観連のようにそれをやるべき組織がしっかりと勤めを果たすことだとは思いますがね」と苦笑い。

 私からも「そろそろ開発局も、地方自治体行政の延長としての観光行政と平行して、六期北海道総合計画の実現という観点からの観光行政に関わって行かなくてはならない時代になりつつあるのではないか、と思っています」と伝えると、

「私は傍目から見ていて、開発局さんも道観連と一緒になってプレイヤーとしてご活躍出来ないものか、とは思います。組織が違うといろいろと難しいのでしょうが、各自がばらばらにやっていると、やはり力が分散してしまうように思います」とのこと。

 プレイヤーという言葉は重い。観客でいる限りお気楽で、同時に所詮いくら怒ったりわめいたりしても力にはならないものだ。

 しかしプレイヤーになれる資格を持っている者は案外限られているのであって、その限られたメンバーがプレイヤーであることを自覚し、能力の限りを尽くさなくては思いは実現しないのだ。

 「意志」と「能力」と「資格」の三点セットを備えるのが難しいのである。
 
    *   *   *   * 

 そんな話をして次にお訪ねをしたのが(財)北海道報徳社。

 掛川の助役時代も何度かお訪ねをしたのだが、こちらへ帰ってきてからは初めてで随分ご無沙汰をしてしまったものだ。

 先日のNHKでの二宮金次郎の番組が当然話題になり、「NHKが尊徳を取り上げてくれて良かったですねえ」と言うと、「いや、ここまで持ってくるのに、つてをたどってお願いしてきましてねえ。二年かかりましたよ」という裏話。

「そうですか、やはり陰ではいろいろと努力していらっしゃったんですねえ」
「本当は大河ドラマにしたかったのですが、『女性の姿があまり話題にならないのでだめだろう』と自分たちで笑っていましたよ。6月に放映の知らせが来ましてね。楽しみにしてました」

「ところで、先日美瑛へ行った際に、一括集荷のシステムがきつくて地産地消と言うけれど地場の産物が地元でなかなか食べられないという話を聞きました」と言うと、
「それがまたいろいろあるんですよ。農協なども先に販路に載せて納める数量を約束するわけですから、安定的に集まらないと困ってしまうわけです。一方で『自分で販路を拡大する』という農家の方も、いざ豊作で値崩れしたりするとどこも買ってくれなくなってやはり農協に頼らざるを得ない、という図式になってしまうのです」

「なるほど、意欲のある農家の側からだけ見ても間違いになりそうですね」
「実際、自分で数多くの販路を開拓しても、代金回収が出来なくて農協に泣きついてくる例だとか、ひどいのは詐欺まがいで破産しかねないようなことだってあるのですよ。農協組合員資格だって退会することは出来ますから、本当に独立独歩の覚悟を決めたのなら、そういう道はあるのです。でも良い農産物を作るのに力を使ってしまって、自分で販路を拡大したり代金回収をするというのはなかなか難しいようですね」

 自立した農家と、地産地消、新たな販路拡大など、リスクと安定と収益とのバランスが難しいところだ。
 
 こういうことをさらに支えるようなシステムが何かあると良いのだが。


【100万人都市水土里(みどり)のシンポジウム】
 今日は共催ホールでこのシンポジウムがあるというので楽しみにしてきたのである。

 開発局や水土里ネット北海道などが主催するこのシンポジウムでは農業や農村の資源価値をもう一度考えようというお話を様々な人たちからの意見で構成しようと言うのだ。

 最初には北海道じゃらんの編集長であるヒロ中田氏と林美香子さんのお二人によるトークショー。

 ヒロさんからは「これからの地元農業を『食べ支え』て、馬文化は『馬券を買い支え』ましょうよ」という面白い切り口。

 馬券もはずれたと思うと悔しいけれど、寄付をしたと思うと気持ちがすっきりするのでは、とのこと。なるほど、赤鉛筆を加えたおじさんはみなそういう気持ちなのに違いない(笑)。

    *   *   *   * 

 続いて東大の生源寺先生からは「農業、農村の資産と言うことを考えましょう。ものを作ること、そしてそれを売る知恵を出すこと、それらを縁の下で支えているのが農業資産です。水の利用ルールなどは干ばつのときは大変なものでしたが、人々が集まってその適正な配分を調整するという力すら、農村の資産だと思うのです」とのこと。

 先生は「最近ではこういう力をソーシャルキャピタルという言い方で表現する人もいます」ともおっしゃった。

 「しかしこれらの農業資産も身内にだけ開放されているだけではやがてもたなくなるでしょう。農家以外に、そして未来に向かって開かれた資源にならなくてはならないと思います」とのこと。

 これもまた重い課題だが、農業人口がまだまだ今の半分にまで減るだろうという予想がある中で、農村人口だけでは農業資源・資産を維持することが出来なくなると思っている人が、農村に8割以上もいる時代である。

 新たな気持ちの切り替えが必要な時期が近づいている。

    *   *   *   * 

 最後は女性4人によるパネルディスカッション。 

 最初は旭川の山川さん。彼女は都市と農村の交流活動を十年以上も続けている方で、「なかなかお金にはならないけれど、農村体験の受け皿活動を続けるうちに参加者との関係が緊密になってきました。今日も本当は稲刈りが気になっているのですが、そんな人たちが『良いよ、行っておいで。俺たちがいない間手伝ってあげるから』と言って三人も手伝ってくれているのです」とのこと。

 都会の人たちに農業の肌感覚がなければ、食料の事が分からないだろうというのを持論にしてがんばっているのである。

 続いては新得町からの湯浅さん。この方は日本で最初の酪農ファームインを経営したり、地域の環境保全のグラウンドワークを実践されている方である。

 もともと長崎県生まれでありながら、北海道へお嫁に来て今の環境に飛び込まれた方だ。「ほんの三十年前までは風呂も五右衛門風呂で、水道もなく、お湯は薪で沸かす生活でした。今はそれらが近代化したものが揃っていて、それを目指してがんばってきたはずなのに、今逆にそれで良かったのかなあ、とふと思うことがあります」

 しかしこの景観が好きでパワー溢れる活動を続けられているのだ。女性の方が力強い気がするぞ。

    *   *   *   * 

 次はおなじみ林美香子さん。彼女は全国の農の風景の取材を通じて、わかりやすく問題点を表現して提示してくださるので安心して聞ける。

 ちょっとしたアイディアのおにぎりやさんが年間売り上げ5千万円にもなるようなところも紹介してくれた。要はアイディアとやる気かな。

 最後は農水省から見えた、柵木(ませぎ)課長補佐さん。これからの農水省施策についてお話ししてくれた。

 最後に感想を求められた生源寺先生も「今日は感心してメモばかり取っていました」と感慨深げ。

 女性ばかりの会合の方が元気があって良いかもね。もっとも会場は男性ばかりが目立ちましたけど。

 女性が喜んで行きたくなるような環境や魅力、社会の意味などがもっと知られなくては農村はつらいだけの場所になってしまう、いや現にそうなりつつあるから農村人口はどんどん減少し、高齢化が進んでいるのだとも言えるのだ。

 林さんからは「新規就農にはやる気と能力と資金の三拍子が必要なのですが、このどれかが欠けている例が非常に多く見受けられるのです。なんとかならないでしょうか」とも。

 もう少し社会全体が農を支えても良さそうに思う。それは単に税金を使うことを認めるというような消極的な支持ではなく、実際にその場に立つという強い支援である。

 都市住民と農村住民とのそれくらいの関わりこそがソーシャルキャピタルとしての資源性を持つに違いない。

 そういう取り組みを地道に続ける町と、それが切り離されてしまっている町との間には、なにか大きな差が発生するように思われる。
 
 脅しではなく、ね。
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4 コメント

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農業改革と女性像 (グーツ・ムーツ)
2005-09-23 21:34:52
掛川奮闘記に投稿しています。

たまには見て下さい。
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読みました (管理人)
2005-09-24 11:44:18
 すみません。 Slow web diaryの方は最近見ていませんでした。素晴らしいコメントの数々は、こちらでもぜひご紹介してください。



 今はこちらの方が読者が多いと思いますので

 

 グーツ・ムーツさんって誰だろう?



 
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わかってよ (グーツ・ムーツ)
2005-09-26 23:54:33
えー僕がわからないのかい?ショックです・・・・・・・・・・???????

身体文化論じゃといえば、でしょう。掛川と北海道を愛しているひとといえば。

返信する
やっと納得出来ました (管理人)
2005-09-28 01:00:27
 グーツ・ムーツさんの正体がほぼつかめて、納得しています。あの人ではないかなあ…と思っていたのですが、どうにも確信が持てずにおりました。



 日々のコメントをありがとうございます。ますますご感想をお寄せください。
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