尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

東京で「失職者」!-教員免許更新制の不条理

2012年05月25日 00時48分36秒 |  〃 (教員免許更新制)
 帰る時間が遅かったのだが、また書こうかと思っていた事柄もあるのだが、教員免許更新制度について重大な事実を知ったので緊急に報告しておきたい。

 教員免許更新制度の年度末の実情については、全体的な統計はまだ文部科学省から発表されていない。昨年度は更新制初年度ということで、4月当初に発表があった。今年も発表があれば早速報告しようと思い、時々文科省のサイトを見ているのだが、昨日現在まだ発表はない。昨年は、当初発表の数字がよくわからない点もあった。今年度は時間をかけてまとめているのかもしれない。僕としては実施2年目であり、大きな混乱は起きていないのだろうと推察していた。

 ところが、僕も気づいたのがつい先ほどなのだが、なんと東京都で「失職者」が「続出」している。都教委の「服務事故」のサイトに掲載されているのだが、年度当初ではないので、僕も気づくのが遅れてしまった。発表があっても、マスコミ報道はなかったのではないか。東京の地方版は、最近スカイツリーの記事ばっかりである。

 「失職」事例は、今のところ3件報告されている。
4.25付 小学校 時間講師(病休代替) 55歳
 病休教員の代替として、4月9日から5月2日まで任用発令。引き続き産休代替として勤務する予定で、次の学校で確認したところ、講習は済んでいたものの更新手続きを行っていなかった。「昨年度も同区内の別の学校で非常勤の教員として任用されており、その当時、教員免許状更新講習を修了したことを管理職に報告しており、当該時間講師は、免許状の更新手続が完了したものと思い込んでいた。」

5.7付 中学校主任教諭 56歳
 事情に関しては、都教委のサイトから引用する。(太字=尾形)
ア 当該主任教諭は、教員免許更新の年度に該当していることを認識しており、平成23年8月、教員免許状更新講習を受講し、修了した。
イ その後、教員免許有効期間の2か月前まで(平成24年1月31日)に、教員免許状更新手続をしなければならなかったが行わなかった
ウ 平成24年5月2日、当該主任教諭が免許更新の手続きのため、東京都教育委員会へ手続をした際、教員免許状が失効していることが判明した。

5.7付 小学校臨時任用教員(育休代替) 55歳
 同じく、都教委のサイトから。
ア 当該校は今年度の臨時的任用教員を任用するに当たり、昨年度から当該校で勤務している当該臨時的任用教員を選定し、区教育委員会へ具申を行った。その際、当該臨時的任用教員は、当該校の管理職に対し、大学が発行した教員免許更新講習修了書の写しを渡した。本人はそれで更新が済んだものと判断していた
イ 区教育委員会は当該校の具申を受け、当該臨時的任用教員の免許更新について口頭で確認を行い、その後、都教育委員会へ内申を行い、都教育委員会は平成24年4月1日から平成25年3月25日まで発令した。
ウ 当該臨時的任用教員は、平成24年7月1日から平成26年6月30日までの2年間有効となる東京都公立学校臨時的任用教職員採用候補者名簿への登載更新書類を郵送により提出したが、更新手続修了者に都教育委員会が発行する更新講習修了確認証明書がないため、本人に確認したところ、免許状が失効していることが判明した。

 ①の方は元々臨時の講師なので、問題がわかった時点で「失職」とされている。②③のケースは深刻で、本来は今年度いっぱいは勤務することが予定されていた(が、3月末で免許が失効していることになる)ので、「平成24年5月7日付けで平成24年3月31日に遡って失職」という「通知」を交付されている。これでは、4月の勤務がなかったことになってしまうので、「4月分給与の返納」が求められるのではないかと心配である。

 ところで、以上を見てみればわかるように、3人とも「更新講習は済んでいる」が、「更新手続きをしていなかった」ということである。「更新講習」が意味のあるものとは思えないが、それにしても更新講習は終わっているのだから、「実質的には教員免許があるのと同じ」である。②の方など「勤務時間中に休暇を取って申請に行っていなかった」というだけのことである。単なる事務的ミスである。「単なる事務的ミス」で、職が失われてしまっていいのか。常識で考えてくれればわかるだろう。教員に問題があるならば、懲戒処分を行えばいいし、教員に勉強をさせたいという趣旨なら大学で研修することを義務付ければいい。ちゃんと大学へ行って免許更新の講習は受けているのに、単に手続きをミスしているというだけで、「失職」してしまう。この制度は一体何のためにあるのか?

 僕が元々何度も書いているように、「教育をよくする」とか「教員の資質を向上させる」ということが目的なんだったら、こんな馬鹿げたことは起こりえないはずである。これは「教師に対し、職を維持するためには、学校の仕事より、事務手続きの方が大事なんだ」と思わせる仕組みである。すなわち「学校教育の質の低下」と「教師に対する嫌がらせ」が目的だとしか、僕には思えない。

 今後のことだが、都教委のことだから、「失職者」に何の対応も取らず、退職金も出さないまま放置することが考えられる。しかし、昨年の熊本県のように、夏の採用試験で特例選考を実施するなどの措置を講じることが必要である。

 また教員組合も是非支援しなければならないし、マスコミにも訴えていかなければならない。こういう馬鹿げた制度は一刻も早くやめさせなければならない。
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