永井愛さんの劇は最近割合見ているんだけど、2年ぶりの新作「こんばんは、父さん」が世田谷パブリックシアターで始まっている。(11月7日まで)

男だけ、それもたった三人しか出てこないという、永井愛としても珍しい劇。特に前作の「シングルマザーズ」が、女性の苦闘を描く劇と言う感じだったから、意外性が強い。時間も1時間45分で、短い(家が遠いので嬉しい)。父親が平幹三郎、息子に佐々木蔵之介、青年に溝端淳平。平幹三郎は洋の東西を問わず時代劇の印象が強いが、これはまさに今を映す現代劇。三人は老壮青を代表する役柄である。僕は一番若い「ヤミ金取り立て青年」が面白かったけど、感情移入はしなかった。でも帰るときの客の会話では、「私は一番年が近いから、青年に一番共感した」と言ってる若い女性の声が聞こえた。多分、様々な年齢で劇の感想を交わすと面白いのではないか。
場所はあるつぶれた鉄工所。もはや廃墟のような感じ。そこへ1人の年寄りの男(平)が入ってくる。窓からしのびこんで。町工場には首つり用かとも思える縄が下がっていて、男は首を通してみる。そこへ彼を追ってきた若い男(溝端)が…。この二人の関係は何なのか。どうも男が借りている金を返さず、借金取りに来たのが青年らしい。どうしても返せぬというなら、男の息子に連絡すると言う。アパートの隣の部屋で、もしもの時はここに連絡してという息子のケータイ番号を聞いてきたのだ。それだけはやめてくれ、いやもう家族に返済を求めるしかない…。ついにかけてしまうと、息子(佐々木)が思わぬところから登場し…。この息子も何やら「訳あり」のようである。
というみな「訳あり」の三人の男たちのドラマが始まる。ヤミ金業界で生きるしかないと思い込んでいる高校中退の青年。カネ返せぬ方が言うことでもないはずが、父も息子も一緒になって、ブラック企業をやめる方がいいんじゃないかと説得したり…。女性は誰も出てこないが、それは女優が壇上に出てこないだけで、親子の会話に出てくる「母さん」の印象は深い。父親よりも、もっと大きいかもしれない。そういう形で女性像も描いている。そして、町工場の発展と没落、バブルとその破産というこの四半世紀のドラマがこの家族を翻弄してきた様子が明らかになっていく。「人間の幸福」はどこにあるのか。
3人の演技のアンサンブルが面白いし、廃墟風町工場の舞台装置が素晴らしいけれど、中で語られる各人の設定が多少図式的で、「ありがち」なものになっている感じもした。一人芝居、二人芝居はあるけれど、三人で作る劇と言うのは、多少無理があるのではないか。ただ、各世代を描き分けるセリフの妙が楽しめるので、やはり永井愛さんの芝居は面白い。

男だけ、それもたった三人しか出てこないという、永井愛としても珍しい劇。特に前作の「シングルマザーズ」が、女性の苦闘を描く劇と言う感じだったから、意外性が強い。時間も1時間45分で、短い(家が遠いので嬉しい)。父親が平幹三郎、息子に佐々木蔵之介、青年に溝端淳平。平幹三郎は洋の東西を問わず時代劇の印象が強いが、これはまさに今を映す現代劇。三人は老壮青を代表する役柄である。僕は一番若い「ヤミ金取り立て青年」が面白かったけど、感情移入はしなかった。でも帰るときの客の会話では、「私は一番年が近いから、青年に一番共感した」と言ってる若い女性の声が聞こえた。多分、様々な年齢で劇の感想を交わすと面白いのではないか。
場所はあるつぶれた鉄工所。もはや廃墟のような感じ。そこへ1人の年寄りの男(平)が入ってくる。窓からしのびこんで。町工場には首つり用かとも思える縄が下がっていて、男は首を通してみる。そこへ彼を追ってきた若い男(溝端)が…。この二人の関係は何なのか。どうも男が借りている金を返さず、借金取りに来たのが青年らしい。どうしても返せぬというなら、男の息子に連絡すると言う。アパートの隣の部屋で、もしもの時はここに連絡してという息子のケータイ番号を聞いてきたのだ。それだけはやめてくれ、いやもう家族に返済を求めるしかない…。ついにかけてしまうと、息子(佐々木)が思わぬところから登場し…。この息子も何やら「訳あり」のようである。
というみな「訳あり」の三人の男たちのドラマが始まる。ヤミ金業界で生きるしかないと思い込んでいる高校中退の青年。カネ返せぬ方が言うことでもないはずが、父も息子も一緒になって、ブラック企業をやめる方がいいんじゃないかと説得したり…。女性は誰も出てこないが、それは女優が壇上に出てこないだけで、親子の会話に出てくる「母さん」の印象は深い。父親よりも、もっと大きいかもしれない。そういう形で女性像も描いている。そして、町工場の発展と没落、バブルとその破産というこの四半世紀のドラマがこの家族を翻弄してきた様子が明らかになっていく。「人間の幸福」はどこにあるのか。
3人の演技のアンサンブルが面白いし、廃墟風町工場の舞台装置が素晴らしいけれど、中で語られる各人の設定が多少図式的で、「ありがち」なものになっている感じもした。一人芝居、二人芝居はあるけれど、三人で作る劇と言うのは、多少無理があるのではないか。ただ、各世代を描き分けるセリフの妙が楽しめるので、やはり永井愛さんの芝居は面白い。