尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

数字で見る米大統領選挙①投票率と第3党

2016年11月12日 23時49分59秒 |  〃  (国際問題)
 アメリカ大統領選挙に関して、得票数などの数字を調べてみたい。論を立てる前に、データを確認しておかないといけないから。「投票率」「得票数」を調べてみたいと思うけど、なかなか思ったようなデータが見つからない。特に、全国的な投票率はまだ出てないのではないかと思う。

 というか、大統領選挙も上院選も下院選もまだ最終的には決着していない。上院選は今回改選のルイジアナ州が決まってない。調べてみると、ここは「決選投票」を行うのである。大政党は2つしかないんだから、決選するまでもないはずだが、なんと上院選に共和党から二人出ている。共和党の一人が脱落して、12月に共和、民主で決選投票をする。(だけど、共和党が勝つんだろうから、上院は共和52、民主48になるだろう。)下院も同様にルイジアナで2議席が未定。一方は共和党同士で決選投票。

 大統領選に関しては、選挙人数がトランプ=290、クリントン=228で、ミシガン(選挙人16)とニュー・ハンプシャー(選挙人4)が決まっていない。いや、開票は済んでいるので、多分僅差の場合は確認するという決まりなんだろう。アメリカでは、大統領選挙時に、連邦上下両院だけでなく、州の知事、上下両院、たくさんの住民投票なども一挙に投票している。当然、「機械開票」をしているはずだ。州ごとに投票方法が違うようだが、機械でやらないとこんなに早く開票できない。そこで、僅差の場合は人間による確認作業を行うと決めてある州があるんだと思う。

 そもそも、アメリカには中央選挙管理委員会にあたる国家組織がないようだ。聞いたことないし。よく世界の選挙では「選挙管理委員会の発表によれば…」なんてニュースがある。でも、今回はよく見てみると「大統領選挙でトランプ氏の当選が決定した」とかニュースに出ている。アメリカの国家的な仕組みとしては、誰が当選するかは「大統領選挙人が投票するまで決まってない」ということなんだろう。今はあくまでも各州が大統領選挙人を決めたという段階である。だから、各マスコミが各州の発表を独自集計して、「当選者が決まった」と報じることになる。その大統領選挙人の投票は、ウィキペディアによれば「12月の第2水曜日の次の月曜日」と決まっているそうだ。

 さて、今回の大統領選は、事前にどちらの候補も「好感度が低い」と言われていた。トランプは共和党主流派が支持せず、クリントンは(サンダースを支持した)若者票を獲得できない。だから、棄権したり、他の候補に入れる人が多くなるかもという話が事前にあった。それを確かめてみたいと思う。

 過去の大統領選投票率はウィキペディアに出ている。それによると、前回2012年は、54.87%。その前の2008年は56.8%だった。オバマが当選したこのときは、90年代以後では最高の投票率である。過去を見ると、60%に行っていた時もあるが、現在は大体50%半ば程度である。(1996年のビル・クリントン再選時は、49%と5割を割っている。)

 2012年を見ると、有権者数は2億3500万ほどになっている。総人口は3億1694万人程度(2013年)である。人口比で75%ほど。日本は人口比で8割ぐらいになるので、やはりアメリカの方が若い国なのである。2012年の有効投票数は、1億2900万ほどだった。この4年の間に、劇的に人口変動は起こってないだろう。今回の両候補及びリバタリアン党のジョンソン候補を足してみると、1億2500万票ぐらいになりそうだ。そうすると、誤差を見込んで、53~54%程度の投票率ではないかと思う。過去3回より多少低いけれど、案外棄権者は増えていないということか。

 では、第3党の得票は増えただろうか。第3党というのは、リバタリアン党である。今は全米で立候補できる少数党はリバタリアン党だけだという。アメリカ緑の党は、大多数で立候補するけど、少し抜けているらしい。多くの州では、立候補に際して一定の有権者の署名が必要で、二大政党以外は立候補しにくい。それでも、アメリカ立憲党とかアメリカ党、アメリカ連帯党なんていうのもある。社会主義政党もある。無所属でも出ることはできる。だから、31人も候補者がいたというが、全員が各州で立候補できたわけではないということである。

 1992年には、無所属で出馬した実業家、ロス・ペローが1974万票も取ったことがある。(得票率18.9%)これはブッシュ(父)が落選し、ビル・クリントが当選する決め手となった。ペローは96年にも「アメリカ改革党」から出て、800万票を得た。この改革党は、2000年にはコラムニストのパット・ブキャナンを立て、45万票だった。むしろ、この時は緑の党のラルフ・ネーダーが288万票(2.74%)も取って、アル・ゴア落選をもたらしたと言われた。この時の、ブッシュ(子)とゴアの得票率合計は、96.3%。つまり、第3党以下は合わせても3.7%だった。

 ネーダーは2004年も立候補したが、45万票しか取ってない。これはブッシュ政権を打倒するために、前回のネーダー支持者もケリーに投票したということだろう。2004年の両党得票率は99%に達している。2008年も98.6%、2012年は98.4%。つまり、ブッシュ、オバマ政権時代を通して、アメリカの政治的分断が進み、とにかく反ブッシュ、とにかく反オバマということで、当選可能性のある二大政党に得票が集中するようになったのである。そこで、2000年選挙時にもあったけど、第5党だったリバタリアン党というのだけが、第3党に昇格してきたわけである。

 リバタリアン党は、2012年に元ニューメキシコ州知事、元共和党のゲーリー・ジョンソンという一定の知名度がある候補を立て127万票と得票を倍増させた。このジョンソンは今回も立候補している。全体の得票数が判らないので、今個人的に集計して見たところ、約420万票以上は取っている。今回のクリントン、トランプの合計得票率は、95.1%である。そうすると、第3党以下の得票は4.9%。これは前回の3倍を超えている。つまり、クリントンもトランプも忌避した有権者はかなり多かった。ペロー以来の二大政党以外の得票数である。ということで、次に二大政党の得票を検討する番だけど、けっこう長くなってしまったので、ここで切って2回に分けることにする。
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