映像制作集団「空族」の冨田克也監督(1972~)の新作「バンコクナイツ」。182分もある大作で、どうもよく判らない点が多い。前作「サウダーヂ」(2011)は、地元山梨を舞台に「地方都市のリアル」を描き、高い評価を受けた。ナント三大陸映画祭グランプリ、毎日映画コンクール監督賞、キネ旬ベストテン6位だから立派なものである。でも、僕は理解できないところが多く、記事には書かなかった。
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今度の映画もよく判らないんだけど、とても面白かったし、3時間超の映画を見たという経験を残したい気もするから簡単に書いておきたい。(なお、僕が「判らない」という時は、映像のつなぎが理解できないということより、「耳」の聞き取りが付いていけない場合が多い。聴覚に弱さがあって、「静かな演劇」系が聞き取れないことがある。映画でも同時録音でリアルさを追求するセリフが(日本映画の場合)聞き取れないことがある。セリフが早すぎる場合も同様。)
「バンコクナイツ」の場合の「判らなさ」は、筋道のあるような、ないような構成が大きい。だけど、それは魅力でもある。バンコクから、ノンカイへ、そしてラオスへと移りゆく映像。話主人公の女性ラックを狂言回しにするように、画面には様々の日本人やタイ人などが映りゆくように描かれる。かっちりした論理で構成された演劇的な映画ではなく、自由自在、融通無碍な映画な作りが面白い。
基本的には、この映画はバンコクの日本人専門の歓楽街「タニヤ」を舞台にしている。そこにある店のナンバーワン「ラック」には、なじみの客がたくさんいるけど、それと別にビンというヒモがいる。でも、ある晩昔の恋人オザワ(冨田克也)と5年ぶりに再会する。ここら辺の人間関係が初めはよく判らないんだけど、バンコクにこういうところがあるのか。タイに限らず風俗街はあるし、それを目的に外国へ行く人はいるだろう。対応するセックスワーカーも当然いるだろうけど、この映画のように外国で女衒(ぜげん)のように暮らしたり、金もなくなり「沈没」するような情けない日本人が多数いるのか。
オザワは元自衛官で、PKOでカンボジアに行った。その経験をいまだに引きずっているような人間だけど、当時の上官富岡にラオスの不動産調査を頼まれる。ラックの故郷はラオスの首都ビエンチャンの対岸(メコン川の向かい)ノンカイなので、ラックもオザワと一緒に故郷に戻って家族にあう。故郷では仲の悪い母と腹違いの弟妹がいる。ここで友だちとあったり、家族と食事をしたり…。オザワは道を歩いていると、昔のゲリラのような人と出会うが、どうも現実の人間ではないような…。
「イサーン」(東北タイ)出身のアピチャッポン・ウィーラセータクンじゃないけど、どうもイサーンに行くと日本人監督でも現実を超越してしまうらしい。ラオスに行くと、オザワは連絡もなくなってしまう。タイ人の抱える現実は厳しいんだけど、日本人はタイ(や東南アジア諸国)に「桃源郷」を見て居ついてしまうものもいる。貨幣価値の圧倒的な差を背景に、「性の搾取」も可能だから、本国で浮かばれない日本人でも幻想に浸れる。そういう中で生きるラックたち貧しい女性、そして周辺の日本人の生態がリアル。
いわゆる社会派ではなく、セックスシーンもほぼないと言っていい。音楽が魅力的で、特にノンカイの酒場で演奏される曲は魅力的だった。何かの結論を差し出してくる映画というよりは、これも「観察」するような映画だと思う。なかなか面白いけど、何しろ長いから、そうそう見るわけにもいかない。僕はやはりタイの文化や社会が好きで関心がある人向きかなと思う。それにしても、こうやって異国で「沈没」すると、今後どうなっちゃうんだろうと心配にもなるが、ある意味それも一つの人生か。
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今度の映画もよく判らないんだけど、とても面白かったし、3時間超の映画を見たという経験を残したい気もするから簡単に書いておきたい。(なお、僕が「判らない」という時は、映像のつなぎが理解できないということより、「耳」の聞き取りが付いていけない場合が多い。聴覚に弱さがあって、「静かな演劇」系が聞き取れないことがある。映画でも同時録音でリアルさを追求するセリフが(日本映画の場合)聞き取れないことがある。セリフが早すぎる場合も同様。)
「バンコクナイツ」の場合の「判らなさ」は、筋道のあるような、ないような構成が大きい。だけど、それは魅力でもある。バンコクから、ノンカイへ、そしてラオスへと移りゆく映像。話主人公の女性ラックを狂言回しにするように、画面には様々の日本人やタイ人などが映りゆくように描かれる。かっちりした論理で構成された演劇的な映画ではなく、自由自在、融通無碍な映画な作りが面白い。
基本的には、この映画はバンコクの日本人専門の歓楽街「タニヤ」を舞台にしている。そこにある店のナンバーワン「ラック」には、なじみの客がたくさんいるけど、それと別にビンというヒモがいる。でも、ある晩昔の恋人オザワ(冨田克也)と5年ぶりに再会する。ここら辺の人間関係が初めはよく判らないんだけど、バンコクにこういうところがあるのか。タイに限らず風俗街はあるし、それを目的に外国へ行く人はいるだろう。対応するセックスワーカーも当然いるだろうけど、この映画のように外国で女衒(ぜげん)のように暮らしたり、金もなくなり「沈没」するような情けない日本人が多数いるのか。
オザワは元自衛官で、PKOでカンボジアに行った。その経験をいまだに引きずっているような人間だけど、当時の上官富岡にラオスの不動産調査を頼まれる。ラックの故郷はラオスの首都ビエンチャンの対岸(メコン川の向かい)ノンカイなので、ラックもオザワと一緒に故郷に戻って家族にあう。故郷では仲の悪い母と腹違いの弟妹がいる。ここで友だちとあったり、家族と食事をしたり…。オザワは道を歩いていると、昔のゲリラのような人と出会うが、どうも現実の人間ではないような…。
「イサーン」(東北タイ)出身のアピチャッポン・ウィーラセータクンじゃないけど、どうもイサーンに行くと日本人監督でも現実を超越してしまうらしい。ラオスに行くと、オザワは連絡もなくなってしまう。タイ人の抱える現実は厳しいんだけど、日本人はタイ(や東南アジア諸国)に「桃源郷」を見て居ついてしまうものもいる。貨幣価値の圧倒的な差を背景に、「性の搾取」も可能だから、本国で浮かばれない日本人でも幻想に浸れる。そういう中で生きるラックたち貧しい女性、そして周辺の日本人の生態がリアル。
いわゆる社会派ではなく、セックスシーンもほぼないと言っていい。音楽が魅力的で、特にノンカイの酒場で演奏される曲は魅力的だった。何かの結論を差し出してくる映画というよりは、これも「観察」するような映画だと思う。なかなか面白いけど、何しろ長いから、そうそう見るわけにもいかない。僕はやはりタイの文化や社会が好きで関心がある人向きかなと思う。それにしても、こうやって異国で「沈没」すると、今後どうなっちゃうんだろうと心配にもなるが、ある意味それも一つの人生か。