尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

八甲田山-日本の山⑫

2019年12月25日 22時43分34秒 |  〃 (日本の山・日本の温泉)
 毎月書いていても、あまり読まれてない「日本の山」シリーズだが、自分じゃ珍しく書いてて楽しい気分になる。思い出を書いてるだけだからかもしれない。まだまだ2年ぐらいは続けられそうだ。前回が北海道の幌尻岳だったので、少し南へ行って、今回は東北北部の八甲田山。ここは80年代半ばに初めて行ったが、山や温泉の初歩としては最高の山域だと思う。標高がそんなに高くないのに、緯度が高いから本州中部なら3千m級の植生を見られるのである。そして八甲田ロープウェーがあるから、登山しない人でも山岳ムードを楽しめる。広い山域のどこを歩いても素晴らしい温泉が待っている。
(八甲田山の最高峰、大岳)
 この地域には2回行ってる。どっちも夏休みの旅行。一度目は電車とバスで行った。まだ東北新幹線が盛岡までしか通じてない頃だった。盛岡から青森へ、そして国鉄バスで八甲田へ。「国鉄バス」は「JRバス東北」と名を変えて、今も同じ路線を走っている。一日目は酸ヶ湯温泉(すかゆ)泊。こういう本格的な「秘湯」の宿に泊まるのも初めて。有名な「千人風呂」にはビックリだ。何しろ完全な「混浴」だったから。泉質も強力な酸性で、白濁した湯も素晴らしい。源泉をなめるとものすごく酸っぱい。
(酸ヶ湯温泉千人風呂)
 翌朝にバスでロープウェー乗り場まで行って、一気に標高を上げる。酸ヶ湯が標高890m、ロープウェー山麓駅が標高670m、山頂公園駅が1300mである。最高峰の大岳山頂が1584mだから、300メートルも登らない。ハイキング気分では登れないルートだが、そんなにきつくないのである。登山初歩者には最適だ。まず赤倉岳に登り、大岳ヒュッテまで緩やかに進む。きついところをロープウェーで登っちゃうので、気分の良い道を歩くことが出来る。そして大岳頂上まで直登。最後は大変だが、気持ちのいい展望が期待を裏切らない。これで東北の登山&温泉にはまった。
(八甲田大岳山頂)
 山頂から大岳ヒュッテに戻って、そこからひたすら毛無岱(けなしたい)を下りてゆく。広大な湿原である。下りれば酸ヶ湯温泉に戻る。しかし、なかなか長くて下りでも2時間ほどかかる。登りより大変かも。毛無岱というのは不思議な名前だが、この地域の湿原などによく「岱」の字が付いている。毛無岱にも上中下があって、ずっともう草原に近いような広々とした湿原に木道が通っている。もっとも30年前は木道がずいぶん古くなっていて、このルートは大丈夫かという感じだった。今は整備されてるんだろうが。次第に酸ヶ湯が見えてきて、しかし「見えてからが遠い」の格言通り。
(毛無岱)
 酸ヶ湯で一服、多分遅いお昼を食べて、バスで蔦温泉へ。ここがまた素晴らしい温泉で、風呂の下から湧き出る温泉が忘れられない。人生でまた行きたい温泉ベスト5に入るところ。裏に広がるブナの森と沼めぐりも楽しい。次の日は奥入瀬から十和田湖へと、北東北のメイン観光をして帰った。八甲田は良かったねと夫婦でも思い出で、20年ぐらいして八甲田を再訪した。この時は車で行って、もう登山はしなかった。でも残った温泉、猿倉温泉八甲田温泉などを回って立ち寄りで入った。酸ヶ湯温泉が作った、ちょっと離れたところにある八甲田ホテルに泊まった。ここはまた泉質が違う。高級な洋風ホテルで、もう泊まれない。そこで酸ヶ湯まで送ってくれて、立ち寄りでまた入ることができた。
(八甲田山テレカ)
 富士山や利尻岳、鳥海山、大山など独立峰は見て楽しいが、登って同じところに下りてくることが多い。同じ青森の岩木山もそうだ。一方、大雪山や八ヶ岳、霧島、行ってないけど九重山などは広大な山域で、いろんな登山ルートがある。周りには多くの温泉があって、それが楽しい。そんな山域が日本にはあちこちにあるが、八甲田山は一番簡単で楽しいところだと思う。まあちょっと遠いけれど。新田次郎の小説、そしてその映画化「八甲田山」の影響で、八甲田山をなんだか怖い山に思い込んでる人がいる。真冬に地図もなく豪雪地帯を歩き回れば、今だってみんな死んでしまう。でも実際は夏にルート通り登るなら、すごく楽な山になる。
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