毎回書いている比例区票の点検作業。2005年衆院選から2019年参院選までは「比例区票の時系列的検討ー2019参院選②」(2019.7.23)に書いたので、今回は時系列点検は止める。面倒な上に、要するに17年衆院選、19年参院選との変化を中心に見れば良いだろうと思うからだ。それ以前は折に触れて数字を振り返る。
その前に今回の投票率を見てみたい。今回の投票率は55.93%で戦後で3番目に低い。しかし、一番低い2014年、2番目に低い2017年に比べて見れば上がっている。昔を振り返ると、大平内閣の1979年衆院選では台風と重なって68.01%と、その前の75年より5%も下がって自民党が激減した。その後で大平・福田の有名な「40日抗争」が起こり自民党が真っ二つに割れた。しかし、今になってみると昔はずいぶん高かったんだなと思う。最近60%後半になったのは、2005年、2009年だけ。しばらく、あるいは二度とないのではないか。
今回は自分はあまり盛り上がりを感じなかったのだが、それも道理で自分の選挙区(東京13区)は50.88%で、東京で一番低かった。東京で一番高いのは東京8区の61.03%。ここは立民の吉田晴美が石原伸晃を破ったところで、その他にも東京5区、東京6区、東京19区など、立民・共産の選挙協力が行われて自民を破った選挙区はいずれも60%に達した。立憲民主と共産の協力は(全国的な評価は別にして)、東京では選挙の盛り上がりをもたらし、野党の勝利に結びついたと言えるのではないか。
今回の比例区の総得票数は5746万5978票だった。全国の有権者総数は約1億500万人なので、1%違うと100万人ほど違ってくる。17年衆院選は5575万票で、19年参院選は5007万票ほどだった。つまり、前回衆院選より2.2%ほど投票率が高かったので、その分200万票近くが増えている。
では各党を順番に見てみる。まずは与党から。自民党は今回比例区で1991万票を得た。約2千万票で、全体の34.66%になる。16年参院選からの票数は、2011万→1856万→1711万となっている。2005年の小泉郵政選挙の2500万票越えには及ばないが、今回は非常に支持が厚かったのである。菅内閣時には確かに内閣支持率が下がったが、政党支持率はずっと堅調だった。比例区の投票先を聞く調査でも、圧倒的に野党を引き離していた。それは何故なのかこそ、野党は厳しく問う必要がある。
(開票中の岸田首相)
公明党は711万4千票ほど。16年参院選から振り返ると、753万→698万→654万と減り続けていた。かつては800万票を越えていた時もあるが、次第に落ちていたのは創価学会や協力する自民党支持団体などが高齢化して、昔ほどの集票力がなくなったなどと言われる。今回は1年半続くコロナ禍の中で、きめ細かな集会などが開けない中、票の出方が注目されたが、結果的には5年ぶりに700万票を回復した。今回自公が勝利したのは、今までの世論調査を素直に見れば納得の結果である。選挙制度やマスコミのあり方には問題があるが、それはともかく全国で自民党、公明党と書いた有権者が多かったという事実の上に選挙結果がある。
次は野党を見る。立憲民主党は1149万2千票ほどなので、およそ1150万票である。17年衆院選は1108万、19年参院選は792万だった。17年は希望の党が968万票ほどあった。その時に当選した議員は国民民主を中心に、自民、維新などに分かれている。だから全部は来ないわけだが、それにしても4年間に前回無所属や希望、前回衆院選は小沢一郎らは「生活の党と山本太郎と仲間たち」という党だったのだが、まとまって大きくなったはずが42万票しか増えていない。結果的にそれが議席を減らす最大要因になったと言える。前回の比例当選が37名、今回が39名なので、前職議員が増加した分に見合わなかった。「比例は共産」「比例はれいわ」などと言ってた激戦区もあったらしいからそういう影響もあったかも。
(辞意を表明する立民の枝野代表)
国民民主党を先に見ると、259万票ほど。今回善戦したイメージもあるが、19年参院選は348万票だったから、減らしている。参院選より投票率が高く票数が700万も多くなったのに、300万票も行ってない。前回の参院選では3人しか当選出来ず、労組の擁立議員も落選した。このままでは2人当選も危なく、連合も立民を批判するだけではなく、国民民主党もこのままでいいのか、しっかりと検証するべきだろう。
共産党は今回416万6千票ほどで、9議席だった。16年参院選から見ると、602万→440万→448万となっていて、600万票から大分減っている。前回は比例区で11議席だから、32万票減らして2議席減らした。今の法律では小選挙区に出ないと選挙運動がやりにくい。今回は相当に候補を取り下げた影響からか、比例区の票も減らしてしまった。協力先の立憲民主党も減らしたんだから、何のためにわざわざ自党の候補を取り下げて協力したのかと党内でちゃんと議論しなければおかしい。
れいわ新選組は221万票で、3議席を獲得した。東海ブロックで1議席を確保したが(小選挙区の得票が少なかったため)、当選にならなかった。事実上は4議席獲得と同じである。しかし、19年参院選では228万票だから、実は減らしている。まあ衆院選では中国、四国や北海道、北陸信越など定数が少ないブロックがある。そういうところでは小政党に入れても当選可能性がないため、小党の場合は全国1区の参院選の方が集票しやすい。それにしても、山本太郎を当選させるという目的を果たした後で、22年参院選ではどうなるのか。
社民党は101万票だったが、どのブロックでも当選者を出せなかった。だが、実は17年衆院選の94万より増えている。19年参院選は105万で1議席。2022年は福島みずほの改選なので、1議席を獲得できる可能性はある。意外なことに社民党はなくなってしまうのではないかというほど減らしていないのである。
さて、問題の「維新」だが、比例票は805万だった。25議席獲得。17年衆院選は339万、19年参院選は491万なので、倍増とまでは行かないがそれに近い。かつて「みんなの党」が2010年参院選に794万票を獲得したことがあるが、かつての公明、共産以外に全国で800万票を超えた第3党はないと思う。どこから出て来た票かよく判らないけれど、立民、共産、社民は前回衆院選と大きく違わない以上、前回1000万票近かった「希望の党」から国民民主と維新増加分が出て来たということではないか。
(激増した「維新」)
こうして見ていくと、自民、公明が支持されたという大きな傾向が見える。マスコミはいろんな政策を言うが、「憲法改正」とか「選択的夫婦別姓」などを重視する人は、もう与野党どっち側に入れるかは判断済みだろう。「共産党の協力」などを重視する有権者もいるだろうけど、実際にはそんなに多くはないと思う。僕はコロナ禍の苦難に対して「大型経済対策」「子どもに10万円」と言った与党が支持されたのではないかと思っている。参院でも多数を持ってるからすぐに実行できる。それに対し「消費是減税」を言う野党は実現可能性が疑わしい上に、実現しても小売り業には面倒。いずれ戻すときも大変だしと思われ、政策として練れていなかったと思う。路線問題より、経済政策で与党が勝ったのではないか。
その前に今回の投票率を見てみたい。今回の投票率は55.93%で戦後で3番目に低い。しかし、一番低い2014年、2番目に低い2017年に比べて見れば上がっている。昔を振り返ると、大平内閣の1979年衆院選では台風と重なって68.01%と、その前の75年より5%も下がって自民党が激減した。その後で大平・福田の有名な「40日抗争」が起こり自民党が真っ二つに割れた。しかし、今になってみると昔はずいぶん高かったんだなと思う。最近60%後半になったのは、2005年、2009年だけ。しばらく、あるいは二度とないのではないか。
今回は自分はあまり盛り上がりを感じなかったのだが、それも道理で自分の選挙区(東京13区)は50.88%で、東京で一番低かった。東京で一番高いのは東京8区の61.03%。ここは立民の吉田晴美が石原伸晃を破ったところで、その他にも東京5区、東京6区、東京19区など、立民・共産の選挙協力が行われて自民を破った選挙区はいずれも60%に達した。立憲民主と共産の協力は(全国的な評価は別にして)、東京では選挙の盛り上がりをもたらし、野党の勝利に結びついたと言えるのではないか。
今回の比例区の総得票数は5746万5978票だった。全国の有権者総数は約1億500万人なので、1%違うと100万人ほど違ってくる。17年衆院選は5575万票で、19年参院選は5007万票ほどだった。つまり、前回衆院選より2.2%ほど投票率が高かったので、その分200万票近くが増えている。
では各党を順番に見てみる。まずは与党から。自民党は今回比例区で1991万票を得た。約2千万票で、全体の34.66%になる。16年参院選からの票数は、2011万→1856万→1711万となっている。2005年の小泉郵政選挙の2500万票越えには及ばないが、今回は非常に支持が厚かったのである。菅内閣時には確かに内閣支持率が下がったが、政党支持率はずっと堅調だった。比例区の投票先を聞く調査でも、圧倒的に野党を引き離していた。それは何故なのかこそ、野党は厳しく問う必要がある。
(開票中の岸田首相)
公明党は711万4千票ほど。16年参院選から振り返ると、753万→698万→654万と減り続けていた。かつては800万票を越えていた時もあるが、次第に落ちていたのは創価学会や協力する自民党支持団体などが高齢化して、昔ほどの集票力がなくなったなどと言われる。今回は1年半続くコロナ禍の中で、きめ細かな集会などが開けない中、票の出方が注目されたが、結果的には5年ぶりに700万票を回復した。今回自公が勝利したのは、今までの世論調査を素直に見れば納得の結果である。選挙制度やマスコミのあり方には問題があるが、それはともかく全国で自民党、公明党と書いた有権者が多かったという事実の上に選挙結果がある。
次は野党を見る。立憲民主党は1149万2千票ほどなので、およそ1150万票である。17年衆院選は1108万、19年参院選は792万だった。17年は希望の党が968万票ほどあった。その時に当選した議員は国民民主を中心に、自民、維新などに分かれている。だから全部は来ないわけだが、それにしても4年間に前回無所属や希望、前回衆院選は小沢一郎らは「生活の党と山本太郎と仲間たち」という党だったのだが、まとまって大きくなったはずが42万票しか増えていない。結果的にそれが議席を減らす最大要因になったと言える。前回の比例当選が37名、今回が39名なので、前職議員が増加した分に見合わなかった。「比例は共産」「比例はれいわ」などと言ってた激戦区もあったらしいからそういう影響もあったかも。
(辞意を表明する立民の枝野代表)
国民民主党を先に見ると、259万票ほど。今回善戦したイメージもあるが、19年参院選は348万票だったから、減らしている。参院選より投票率が高く票数が700万も多くなったのに、300万票も行ってない。前回の参院選では3人しか当選出来ず、労組の擁立議員も落選した。このままでは2人当選も危なく、連合も立民を批判するだけではなく、国民民主党もこのままでいいのか、しっかりと検証するべきだろう。
共産党は今回416万6千票ほどで、9議席だった。16年参院選から見ると、602万→440万→448万となっていて、600万票から大分減っている。前回は比例区で11議席だから、32万票減らして2議席減らした。今の法律では小選挙区に出ないと選挙運動がやりにくい。今回は相当に候補を取り下げた影響からか、比例区の票も減らしてしまった。協力先の立憲民主党も減らしたんだから、何のためにわざわざ自党の候補を取り下げて協力したのかと党内でちゃんと議論しなければおかしい。
れいわ新選組は221万票で、3議席を獲得した。東海ブロックで1議席を確保したが(小選挙区の得票が少なかったため)、当選にならなかった。事実上は4議席獲得と同じである。しかし、19年参院選では228万票だから、実は減らしている。まあ衆院選では中国、四国や北海道、北陸信越など定数が少ないブロックがある。そういうところでは小政党に入れても当選可能性がないため、小党の場合は全国1区の参院選の方が集票しやすい。それにしても、山本太郎を当選させるという目的を果たした後で、22年参院選ではどうなるのか。
社民党は101万票だったが、どのブロックでも当選者を出せなかった。だが、実は17年衆院選の94万より増えている。19年参院選は105万で1議席。2022年は福島みずほの改選なので、1議席を獲得できる可能性はある。意外なことに社民党はなくなってしまうのではないかというほど減らしていないのである。
さて、問題の「維新」だが、比例票は805万だった。25議席獲得。17年衆院選は339万、19年参院選は491万なので、倍増とまでは行かないがそれに近い。かつて「みんなの党」が2010年参院選に794万票を獲得したことがあるが、かつての公明、共産以外に全国で800万票を超えた第3党はないと思う。どこから出て来た票かよく判らないけれど、立民、共産、社民は前回衆院選と大きく違わない以上、前回1000万票近かった「希望の党」から国民民主と維新増加分が出て来たということではないか。
(激増した「維新」)
こうして見ていくと、自民、公明が支持されたという大きな傾向が見える。マスコミはいろんな政策を言うが、「憲法改正」とか「選択的夫婦別姓」などを重視する人は、もう与野党どっち側に入れるかは判断済みだろう。「共産党の協力」などを重視する有権者もいるだろうけど、実際にはそんなに多くはないと思う。僕はコロナ禍の苦難に対して「大型経済対策」「子どもに10万円」と言った与党が支持されたのではないかと思っている。参院でも多数を持ってるからすぐに実行できる。それに対し「消費是減税」を言う野党は実現可能性が疑わしい上に、実現しても小売り業には面倒。いずれ戻すときも大変だしと思われ、政策として練れていなかったと思う。路線問題より、経済政策で与党が勝ったのではないか。