尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

野党の選挙協力をどう考えるべきかー立憲民主党考⑤

2021年11月22日 23時18分52秒 | 政治
 立憲民主党の話も長くなってきたが、もう少し続けたい。今回の選挙の大きな論点が「立憲民主党と共産党の協力」だったことは間違いない。でも僕からすれば、それはどこの話ですかという感じである。自分の選挙区(東京13区)では、立憲民主党と共産党がともに出馬して、二人を合せても自民の新人土田慎に及ばなかった。長いこと自民党の鴨下一郎元環境相が当選してきて(2回は比例で当選)、そのうち4回は得票率が過半数を超えていた。今回は無所属が2人出ていて、僅かに土田は5割に達しなかったが、よくも短い期間で名前を浸透させたものだ。東京には結構そんな地区が多い。

 東京では立民・共産の協力がうまくいったイメージがあるかもしれないが、細かく見ればいろんな選挙区がある。東京3区では立憲民主党の松原仁が自民石原宏高に勝利したが、ここでは共産党が出て3万票を得ている。松原は民主党時代から保守系で知られ、前回は希望の党の創設メンバーの一人だった。希望の党解党後も無所属を続けていたが、結局立憲民主党に参加したのである。ここでは共産党が出たことが、むしろ松原に有利になったと思われる。しかし、松原以外の小選挙区当選5人、比例当選4人の選挙区では、いずれも共産党は出ていなかった

 今回は東京でも維新が沢山出ていたが(17人)、当選は比例区で2人だけだった。順位を見てみると、「自立維」が7選挙区、「立自維」が5選挙区である。まあ維新はともかくとして、立憲民主党と共産党が共に出ているところが4区あった。他に立民、れいわが1区あった。立民が出ていない選挙区は5つあるが、そこでは共産党が出ている。もっとも共産党以外に、国民民主党や社民党が出ていることが多い。萩生田経産相の東京24区では、国民民主党、共産党、社民党合せても10万4千票ほどで、萩生田の約15万票には遠く及ばない。こういう風に見てくると、どこに選挙協力があったのかという思いを否めない。
(立民、共産、国民の「協力」)
 上記画像にあるように、今回は立憲民主党が214選挙区共産党が105選挙区国民民主党が21選挙区に候補者を立てた。小選挙区は全部で289なんだから、被っている選挙区がかなりある。立憲民主党と国民民主党は、今までの経緯から現職のいる選挙区にはお互いに新人候補をぶつけない配慮をしたが、現職以外の場合は同時に立てていた選挙区もあった。こうしてみれば、今回は「合せれば勝てそうな幾つかの選挙区で共産党が候補者を下ろした」というだけのことである。それを「協力」と言えばそうも言えるだろうが、自民党と公明党のように、すべての選挙区でどちらかの党に絞って交互に推薦するというのが、「本当の選挙協力」だろう。
(立憲民主党と共産党の考え方)
 今後も小選挙区を続けていくならば、前に書いたように「決選投票」(あるいは「順位付け投票」)にするべきだというのが自分の考えである。それは選挙協力の問題ではなく、本質的に「小選挙区での当選には投票者の過半数が望ましい」という原理論からだ。それが実現すれば、協力のあり方も大きく変わるだろう。(現実に決選投票制度を実行すると、今回は「維新」がキャスティングボートを握る選挙区が多く、自民党に有利になったかもそれないけれど。)しかし、当面そういう変更は実現しないだろう。となると、「選挙協力」を模索しないわけにはいかない。

 だがいくら考えても、これが名案、解決策だという方策は僕には見つからない。一部には「立憲民主党は共産党とはっきり訣別する方が良い」、あるいはその反対に「立憲民主党は連合と袂を分かつべきだ」「連合は国民民主党支持に絞るべきだ」などと言う人がいる。いろんなことを言えるし、党派的な発想も見られる。でも現実にはどれも不可能だと思う。「立憲民主党」が左寄りだと言っても、それは右寄りグループが先に抜けたからだ。民進党の保守系議員が脱党して「希望の党」立ち上げに加わり、その後前原代表が民進党全体で希望の党と合流するという決断を下した。しかし、その時に一部議員の「排除」が行われたわけである。

 その時に希望の党立ち上げに加わった14人のうち、今回も当選したのは7人である。笠浩史、後藤祐一、松原仁、野間健が立憲民主党、鈴木義弘が国民民主党で、後の長島昭久細野豪志は自民党に加わった。要するに、「立憲民主党か、国民民主党か」という連合内の労働組合の対立関係だけではなく、「自民党の方が近い」というのがホンネだという議員がいるわけである。それではまとまらないはずだが、「立憲」をあえて名乗った立憲民主党は、安保法制や臨時国会を開かない自民政権を認めることは出来ない。その点を取りあげれば、「共産党と組んでも、自民党と対抗できる大きな党になって欲しい」と望む支持者は相当数いるだろう。

 だけど、今までの戦後労働運動史を少しでも知っていれば、「連合と共産党系組合の対立」「旧総評系(社会党支持)と旧同盟系(民社党支持)の対立」の長い経緯が判っているはずだ。どっちが良いとか悪いとか、僕にも考えがないわけじゃないが、今になってはすぐには解決しない。連合が出来るときは露骨に共産党系を排除したため、「全労連」が出来た。様々な労働組合で連合系と全労連系が分かれてしまった。その歴史を思えば、いまさら一緒に出来るかという人はいるだろう。旧同盟系労組から見れば、共産党と協力する立民には違和感を持つんだろうが、その時に共産党と自民党とどっちへの違和感が強いのか。ホンネを言えば自民党の方が近しいという人が連合内には結構いるのではないか。

 じゃあ、自民党と対抗するために立憲民主党と共産党が完全に協力体制を組むことが良いのか。社民党やれいわ新選組を入れて「4党」と呼んでも、政党の規模からすれば立共が中心になるのは間違いない。今回は「共産党が閣外協力」と言ったが、確かにこれは問題だったと思う。今までの日本の政治にないことだから、有権者に判りにくい。僕は社会科教員だったから、言ってる中身が判る。かつて自民党が社会党の村山内閣に参加して政権復帰したことを思えば、大した問題とは思えない。その時は社会党も日米安保を認めていなかったんだから。でも、今回は閣外協力の意味合いが十分に伝わったとは思えない。

 民主党政権が誕生した2009年選挙では、民主党社会民主党(途中で離脱)、国民新党が選挙区を完全に棲み分けていた。それだけでなく、北海道の地域政党「新党大地」も加わっていた。(鈴木宗男代表の娘である鈴木貴子は今は自民党比例区で出ているが、2014年には民主党から出ていた。)共産党と協力する方針の政党にはいられないとして、ずいぶん多くの議員が自民党に移ってしまった。しかし、民主党政権は保守系議員も多く抱えていたことから、政策的に独自色を打ち出せなかった。例えば夫婦別姓に強硬に反対する国民新党の亀井静香が与党だった。自民党や国民民主党に多くの議員が去ったため、立憲民主党がリベラル色の強い政党になり、政策的には一貫性が見られるようになった

 何事も善し悪しがあるもので、今さら保守的政策に舵を切っても、今度は政策が党内でまとまらないことになる。基本的には小選挙区や参院選の1人区では「ガラス細工の共闘」を模索するしかない。もしやるんだったら、野党党首がそろい踏みで街頭演説をするぐらいのことしなければ、国民にアピールしない。ガラス細工共闘では政権を取れないだろうが、選挙だけではない「政策共闘」こそ進めるべきではないか。「脱原発」に関しては、維新や公明党の方が国民民主党より立憲民主党に近い。「選択的夫婦別姓」では自民党以外の全党で議員立法を目指し、自民の党議拘束を外すように要求するべきだろう。そして選挙制度の変更を目指すべきだ。
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