2021年衆議院選挙に関して、結果と比例票の推移を書いたままになっている。間が開いたが、次に各党の結果と置かれた状況を自分なりに考えてみたい。まずは立憲民主党から。立憲民主党は議席を13も減らして、100議席を割り込んで96議席となった。自民党も15議席減らしているのだが、元々の議席数が多く過半数を大きく超えているから、減らした感じがしない。菅内閣の支持率が低迷していたから、岸田内閣に代わって「よくこの程度の減で済んだ」と思われている。一方の立憲民主党は悪くても「多少は増える」と予想されていたので、大敗イメージになった。その結果、枝野代表が辞意を表明して、今後特別国会後に代表選が行われる。
(「変えよう」と訴えていた立憲民主党)
議席を大きく減らしたんだから、立憲民主党は「敗北」には違いない。開票直後の記事でもそう書いた。もう政権交代も近いようなことを言ってたんだから、話が大分違ってしまった。しかし、今さらにはなるけれど、立憲民主党は果たしてどの程度負けたのだろうか。それをきちんと検証しなければいけない。
衆議院選挙は小選挙区と比例代表区だから、それぞれ検討してみたい。
前回の2017年衆院選は、なかなか開かれなかった臨時国会を開いたと思ったら、安倍元首相によって何の審議もないままに冒頭で解散されてしまった。何だかんだ言っても野党の不意を打ったということだろう。さらに小池都知事を中心にした「希望の党」が国政に参入し、「民進党」がそれに合流するという展開になった。しかし、希望の党は民進党全員ではなく、「選別公認」の方針を打ち出したため、公認を得られない議員を中心に「立憲民主党」が結成された。そういう経緯があったため、小選挙区では自民党が圧勝したのである。
【2017年衆院選の小選挙区=総計289】
自由民主党=218 公明党=8 与党226
立憲民主党=18、希望の党=18、維新=3、共産=1、社民=1、無所属=22 野党・無所属計63
無所属や希望の党で当選した議員の中には、その後立憲民主党に移籍した議員が多い。
希望 階猛、大島敦、笠浩史、下条みつ、渡辺周、大西健介、泉健太、佐藤公治、白石洋一、大串博志 以上10名
無所属 小沢一郎、安住淳、金子恵美、玄葉光一郎、中村喜四郎、福田昭夫、野田佳彦、江田憲司、中島克仁、黒岩宇洋、菊田真紀子、篠原孝、重徳和彦、中川正春、岡田克也、平野博文、広田一、原口一博、玉木デニー(屋良朝博) 以上19名。
玉木デニーが知事選に出た後の後継を含めて、総計29名が立憲民主党に加わった。先の18議席に加えると、37議席を持っていた。ところで今回立憲民主党は小選挙区でいくつ勝ったのだろうか。それは57議席である。希望や無所属から加わった議員も、上で下線を付けた議員は小選挙区で勝った。僕も小沢一郎や中村喜四郎が小選挙区で落選する(比例で当選)するとは思っていなかった。中村喜四郎は立民とは共同会派に止めて無所属で臨んでいたなら勝てたのではないだろうか。
立憲民主党は前回よりメンバーが増えて衆院選に臨み、前回より大幅に増えた57議席を小選挙区で得た。その大部分は野党間の選挙協力があった選挙区である。もちろん、300近い小選挙区の中で57程度では政権獲得にはほど遠い。でも僅差の敗北も多かった。いわゆる惜敗率が90%以上を「接戦」と考えるならば、全国では32選挙区が接戦だった。何かちょっとしたことが違っていたら(例えば菅内閣のままで選挙が行われたとか、選挙中に大きな失言が相次愚とか)、自民党を30議席減らせた潜在的可能性はあったのである。ただ、それは自民党が単独過半数を割るというだけのことで、公明党を加えれば与党で過半数になる。それを覆すためには、現在のように西日本の小選挙区でほとんど勝てない現状のままでは政権獲得は難しいだろう。(近畿以西では12議席だけ。全部で113小選挙区。)
以下に示す世論調査に見るように、国民の半数近くが「与野党伯仲が望ましい」と答えていた。しかし、比例区の投票先を聞くと、圧倒的に自民党が多い。与野党逆転を望む人よりも、与党が野党を上回ることを望む人の方が3倍ほど多い。伯仲を望む人が挙って野党に投票しない限り、与党は圧勝するはずである。野党間の選挙協力を評価しない人が評価する人より多いことも注目点である。このように、小選挙区はまずまず健闘したものの、比例票で圧倒されたのが今回の衆院選で野党が負けた原因だった。
(共同通信の世論調査)
では、比例区票を確認してみよう。今回と同じく「国民民主党」や「れいわ新選組」が存在したのは、2019年の参院選だけである。だから2回の選挙の比例票を比較してみる。参院選は全国集計だし、個人名も書ける。衆院選はブロック別に行われ、政党名しか書けない。また参院選の方が投票率が低くなるのが普通である。だから、両者を簡単に比べてはおかしいのだが、他に材料がない。
(2019年参院選) 2021年衆院選
投票率 (48.79%) 55.93%
自由民主党 17,712,373 19,914,883
公明党 6,536,336 7,114,282
立憲民主党 7,917,720 11,492,115
日本維新の会 4,907,844 8,050,830
日本共産党 4,483,411 4,166,076
国民民主党 3,481,078 2,593,375
れいわ新選組 2,280,252 2,215,648
社会民主党 1,046,011 1,018,588
面倒くさいと思うだろうが、この数字をよく見てみると、5割も行かなかった2019年参院選と比べて増えてない政党が多い。実は立憲民主党以外の共闘した野党は皆票を減らしている。今回参院選よりも増えたのは、自民、維新、公明、立民なのである。立憲民主党は参院選よりも350万票以上増やした。それに伴って、前回は37議席だった比例区で39議席を得た。増えているのである。しかし、自民党や維新の会の票の増え方が大きかったので、「比例」であるから増え方が限定的だった。
小選挙区では20議席増やし、比例区では350万票以上増やした。「立憲民主党は果たして本当に負けたのか」とタイトルに掲げたのも、なるほどと思ったのではないだろうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/19/b0/965dc046668b11531eac4c87d7f4bc1b_s.jpg)
議席を大きく減らしたんだから、立憲民主党は「敗北」には違いない。開票直後の記事でもそう書いた。もう政権交代も近いようなことを言ってたんだから、話が大分違ってしまった。しかし、今さらにはなるけれど、立憲民主党は果たしてどの程度負けたのだろうか。それをきちんと検証しなければいけない。
衆議院選挙は小選挙区と比例代表区だから、それぞれ検討してみたい。
前回の2017年衆院選は、なかなか開かれなかった臨時国会を開いたと思ったら、安倍元首相によって何の審議もないままに冒頭で解散されてしまった。何だかんだ言っても野党の不意を打ったということだろう。さらに小池都知事を中心にした「希望の党」が国政に参入し、「民進党」がそれに合流するという展開になった。しかし、希望の党は民進党全員ではなく、「選別公認」の方針を打ち出したため、公認を得られない議員を中心に「立憲民主党」が結成された。そういう経緯があったため、小選挙区では自民党が圧勝したのである。
【2017年衆院選の小選挙区=総計289】
自由民主党=218 公明党=8 与党226
立憲民主党=18、希望の党=18、維新=3、共産=1、社民=1、無所属=22 野党・無所属計63
無所属や希望の党で当選した議員の中には、その後立憲民主党に移籍した議員が多い。
希望 階猛、大島敦、笠浩史、下条みつ、渡辺周、大西健介、泉健太、佐藤公治、白石洋一、大串博志 以上10名
無所属 小沢一郎、安住淳、金子恵美、玄葉光一郎、中村喜四郎、福田昭夫、野田佳彦、江田憲司、中島克仁、黒岩宇洋、菊田真紀子、篠原孝、重徳和彦、中川正春、岡田克也、平野博文、広田一、原口一博、玉木デニー(屋良朝博) 以上19名。
玉木デニーが知事選に出た後の後継を含めて、総計29名が立憲民主党に加わった。先の18議席に加えると、37議席を持っていた。ところで今回立憲民主党は小選挙区でいくつ勝ったのだろうか。それは57議席である。希望や無所属から加わった議員も、上で下線を付けた議員は小選挙区で勝った。僕も小沢一郎や中村喜四郎が小選挙区で落選する(比例で当選)するとは思っていなかった。中村喜四郎は立民とは共同会派に止めて無所属で臨んでいたなら勝てたのではないだろうか。
立憲民主党は前回よりメンバーが増えて衆院選に臨み、前回より大幅に増えた57議席を小選挙区で得た。その大部分は野党間の選挙協力があった選挙区である。もちろん、300近い小選挙区の中で57程度では政権獲得にはほど遠い。でも僅差の敗北も多かった。いわゆる惜敗率が90%以上を「接戦」と考えるならば、全国では32選挙区が接戦だった。何かちょっとしたことが違っていたら(例えば菅内閣のままで選挙が行われたとか、選挙中に大きな失言が相次愚とか)、自民党を30議席減らせた潜在的可能性はあったのである。ただ、それは自民党が単独過半数を割るというだけのことで、公明党を加えれば与党で過半数になる。それを覆すためには、現在のように西日本の小選挙区でほとんど勝てない現状のままでは政権獲得は難しいだろう。(近畿以西では12議席だけ。全部で113小選挙区。)
以下に示す世論調査に見るように、国民の半数近くが「与野党伯仲が望ましい」と答えていた。しかし、比例区の投票先を聞くと、圧倒的に自民党が多い。与野党逆転を望む人よりも、与党が野党を上回ることを望む人の方が3倍ほど多い。伯仲を望む人が挙って野党に投票しない限り、与党は圧勝するはずである。野党間の選挙協力を評価しない人が評価する人より多いことも注目点である。このように、小選挙区はまずまず健闘したものの、比例票で圧倒されたのが今回の衆院選で野党が負けた原因だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/7a/58/79bf007cd50d3d659580b5fb610a1745_s.jpg)
では、比例区票を確認してみよう。今回と同じく「国民民主党」や「れいわ新選組」が存在したのは、2019年の参院選だけである。だから2回の選挙の比例票を比較してみる。参院選は全国集計だし、個人名も書ける。衆院選はブロック別に行われ、政党名しか書けない。また参院選の方が投票率が低くなるのが普通である。だから、両者を簡単に比べてはおかしいのだが、他に材料がない。
(2019年参院選) 2021年衆院選
投票率 (48.79%) 55.93%
自由民主党 17,712,373 19,914,883
公明党 6,536,336 7,114,282
立憲民主党 7,917,720 11,492,115
日本維新の会 4,907,844 8,050,830
日本共産党 4,483,411 4,166,076
国民民主党 3,481,078 2,593,375
れいわ新選組 2,280,252 2,215,648
社会民主党 1,046,011 1,018,588
面倒くさいと思うだろうが、この数字をよく見てみると、5割も行かなかった2019年参院選と比べて増えてない政党が多い。実は立憲民主党以外の共闘した野党は皆票を減らしている。今回参院選よりも増えたのは、自民、維新、公明、立民なのである。立憲民主党は参院選よりも350万票以上増やした。それに伴って、前回は37議席だった比例区で39議席を得た。増えているのである。しかし、自民党や維新の会の票の増え方が大きかったので、「比例」であるから増え方が限定的だった。
小選挙区では20議席増やし、比例区では350万票以上増やした。「立憲民主党は果たして本当に負けたのか」とタイトルに掲げたのも、なるほどと思ったのではないだろうか。