尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

大阪にカジノ反対運動はないのかー「日本維新の会」考②

2021年12月03日 22時46分19秒 | 政治
 最近の立憲民主党批判に「何でも反対」というのがある。テレビで見ていたら、本当にそんなことを言ってる人がいて驚いてしまった。実際の法案反対率は近年の通常国会の内閣提出法案の場合、15%ぐらいだという。国会(衆議院)のホームページを見てみると、全会一致が一番多い感じがしたが、共産党だけ反対という法案もかなり多い。とにかく、野党の仕事は「政府与党の提出法案を厳正に審議すること」に尽きるだろう。問題法案に反対するのは、野党の義務であり存在理由である。

 最近新聞で若い人の選挙に関する投書を読んだが、記憶にあるのは安倍首相時代だけだと書いてあった。選挙権を得たばかりの18歳の高校生にとって、8歳だった10年前の大震災はうっすらと記憶にあるかもしれないが、確かに民主党政権は覚えていないだろう。その頃の自民党は民主党閣僚の揚げ足取りのような質問を繰り返していた。民主党政権は期待外れのことが多かったが、その時期の自民党の対応も建設的だったとは言えない。今の高校生は「高校授業料無償化」が民主党政権で実現したのを知っているのだろうか。その法案に公明党は賛成したが、自民党は反対した。そして政権復帰後に「所得制限」を設けた。

 もう皆が忘れてしまったのかもしれないが、覚えておいた方が良いことだ。反対するには反対するだけの理由があるのであって、野党がしっかりと反対しているのを批判するなんて、有権者のレベルも落ちているのかもしれない。しかし、それを後押しするような政党もあったわけで、「日本維新の会」は選挙期間中に「立憲共産党」などと口を極めて非難を繰り返した。前には馬場幹事長(当時、現共同代表)が「立憲民主党は日本に必要ない政党」とまで述べた。

 僕に言わせれば実におかしな話で、「閣外協力」とは「維新が安倍政権にやってきたこと」じゃないかと思ってしまう。もちろん、政治の普通の意味では、閣外協力とは「首相指名選挙で与党党首に投票するが、内閣には閣僚を送らないこと」である。しかし、自民党は衆参で過半数を得ていて、数で言えば公明党の支持も要らない。選挙運動中から協力しているので、公明党は閣僚一人を送って「連立政権」を構成するけれど。その意味では「日本維新の会」は野党に間違いないが、これぞと言う与野党対決法案では、内閣提出法案に賛成することが多い。例えば「共謀罪」もそうだったし、「カジノ(IR)設置法」もそうだった。
(カジノ法は自公維の賛成で成立)
 IR法案はむしろ「維新」のための法案というべきだったかもしれない。橋下徹大阪府知事(後に大阪市長)は、ずいぶん前からカジノを夢洲に設置したいという意向を表明してきた。そこは2025年に大阪万博を開くという埋め立て地である。東京で五輪をやるなら、大阪は万博だというような発想で、今さら万博に人が集まるのか。と思っていたら、そこに新型コロナが襲ってきた。2025年には「密」を心配しなくてもいいのだろうか。そうなっていたとしても、このような大型集客イヴェントが成功するのか。それはともかく、維新はそこにカジノを建設することを考えている。
(カジノ推進の橋下元府知事)
 しかし、僕が不思議なのは、大阪にはカジノ反対運動がないのだろうか横浜では住民投票を求める直接請求や市長のリコール運動(不成立)まで起こった。そして市長選では当時の菅内閣の閣僚だった小此木八郎氏が、閣僚を辞任してまで立候補して、その際に「カジノ反対」に舵を切った。しかし、立憲民主党などが支持した山中竹春氏が当選し、カジノ推進政策は覆された。近畿圏で同じくカジノ誘致を目指している和歌山でも反対運動が報道されている。それに対して大阪の動きは報道されない。検索してみたら、「カジノに反対する大阪連絡会」というホームページが見つかった。「明るい民主府政をつくる会」が中心らしいから、共産党系の運動だろう。そして、2019年以来、更新されてないようだ。
(大阪のカジノ反対のチラシ)
 コロナ禍でカジノ誘致も進んでないのだろうが、反対運動も大きな盛り上がりにはなっていないのではないか。横浜の場合、林文子前市長はカジノ誘致は「白紙」と述べて当選した経緯があり、「公約違反」という批判が付きまとった。維新の場合、当初からカジノ賛成を表明しているから、公約違反という批判は出来ないんだろう。東京でも過去の都知事選では「五輪招致反対」を正面から主張した候補はいなかった。それを考えると、大阪でも「万博そのものに反対」は言いにくいのかもしれない。万博に向けて、維新への批判が難しい状況なのか。しかし、権力への反骨は大阪の文化の根本に存在してきた。このままカジノ誘致まで反対なく進むとは考えられない。そういうところから「維新」時代の次の時代が始まるのではないか。
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